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LA学群遠山准教授 植物学に関する2編の論文出版および書籍への寄稿が受理されました

2023/11/13(月)

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リベラルアーツ学群の遠山弘法准教授は2023年4月に本学に着任されました。専門は、生態学、集団遺伝学、植物分類学をベースとした多様性生物学であり、非常に活発に研究活動に取り組んでおられます。着任後に出版された論文(和文及び英文)についてご紹介します。

論文1は、2021年に世界自然遺産として登録された西表島における希少植物の分布を報告した論文で、今後のモニタリングのための基盤データを提供しています。遠山准教授は2017年度より世界自然遺産登録に向けた植物多様性評価に関わっており、現在も、世界自然遺産の普遍的価値を評価するためのモニタリング調査を続けています。

論文2は、植物の花成に関わる遺伝子を異なる地域で季節的に網羅的に調べた研究です。遠山准教授は西表島における移植実験を担当し、亜熱帯では開花しない事、そして、それはFLC遺伝子の発現によって抑制されていることを明らかにしました(RNA実験は一部のみ担当)。この結果は、温暖化により咲かなくなる、つまり繁殖できなくなる植物が存在し、それは比較的少数の遺伝子によって支配されていることを示唆します。

これらの論文に加え、DNAバーコーディングにおけるインプットとしての博物館標本の利用可能性、及びアウトプットとしての種同定や新種発見における有効性に関する章を執筆し、2025年出版予定の書籍に受理されました。桜美林大学にも約9,000点の標本が保管されています。これらの標本の利活用にむけて、遠山准教授によりプロジェクトが進められています。

野外調査を基にした植物多様性評価、トランスクリプトーム解析による気候変動影響評価、収蔵されている標本を用いたDNAバーコーディングなど多岐にわたる研究ですが、いずれも持続可能な社会の実現に向けて重要な知見を与えてくれます。 遠山先生の研究室のホームページは以下になります。遠山先生の研究活動に興味のある方は、こちらも参照してください。

論文1「沖縄県西表島産希少植物の島内分布調査と記録の確認」

著者山本武能、米倉浩司、阿部篤志、天野正晴、遠山弘法、設樂拓人、田金秀一郎、長谷川 文、加島幹男、梶田 忠、副島顕子、内貴章世
出版植物研究雑誌 98(4): 203-216 (2023).
doi:https://doi.org/10.51033/jjapbot.jjapbot.ID0151
概要沖縄県西表島における全島網羅的な維管束植物相調査の過程で、これまで文献上では知られていたものの、分布の根拠となる証拠標本の引用がなされていなかった7種の植物が実際に島内に生育していることが確認された。また、これまで島内では限られた生育地のみが知られていた絶滅危惧種10種について島内新産地が発見された。これら17種について証拠標本を引用してその分布と生育状況を報告した。

ホソバムラサキ:台湾固有種と考えられていたが、西表島で証拠標本を採集。すでに枯死してしまい、現在のところ西表島において野生個体は確認されていない。

調査の様子:15mの鎌付きポールをのばし、植物を採集している様子。

論文2 “The transcriptional changes underlying the flowering phenology shift of Arabidopsis halleri in response to climate warming”

著者Hideyuki Komoto, Ai Nagahama, Atsuko Miyawaki-Kuwakado, Yuki Hata, Junko Kyozuka, Yui Kajita, Hironori Toyama, Akiko Satake
出版Plant, Cell & Environment.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pce.14716
概要多年性草本のハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)を用いて、花成に関連する293遺伝子の季節的な発現パターンを緯度勾配に沿ってモニタリングし、気温上昇に伴う開花フェノロジーの変化に寄与する遺伝子を網羅的に調査した。日本の北部、南部、亜熱帯の調査地での移植実験を通して、緯度が低くなるにつれて開花期間が短くなり、最終的に亜熱帯気候では開花の機会が失われることを明らかにした。開花期間の短縮と開花機会の喪失の基盤となる主要な転写変化は、花成経路統合遺伝子とジベレリン合成および老化経路の遺伝子の発現低下であり、これらはすべて、開花の中心的抑制因子であるFLOWERING LOCUS Cの発現増加によって制御されていた。これらの結果は、植物が繁殖できなくなる上限温度が存在し、それは比較的少数の遺伝子によって支配されていることを示唆する。

移植実験の様子:西表島より北のサイトでは開花している時期でも西表島では栄養成長を続けている。

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