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郷に入っては郷に従え
異文化理解を楽しんでほしい
長年にわたって学生の留学をサポート
ビジネスマネジメント学群の根津明広教授は、桜美林大学で10年以上にわたり留学サポートを担当し、多くの学生を海外へ送り出してきた。「異文化理解」などの授業では、留学先での学習法や生活の工夫に加え、自身の留学経験も交えながら指導している。
「私は桜美林大学を卒業後、アメリカのコロラド州にあるノーザン・コロラド大学大学院(University of Northern Colorado, graduate school)への留学を経験しました。当時の私は暗い文学青年といった感じでしたが、2年間の留学を経て、日本に帰国したときには随分と性格が明るくなりました。留学中は現地の先生や友人と積極的にコミュニケーションを取ることを意識していたのが功を奏したのですね。こうした経験を学生たちにも伝えています。また、同じ英語圏でもアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドでは文化や雰囲気が異なります。まずは現地に適応することを大切にし、その過程を楽しむことが重要です。“郷に入っては郷に従え”ですね」
アメリカ留学で培った英語力と文学研究
根津教授は高校時代に英語教員を志し、桜美林大学文学部英語英米文学科へ進学。しかし、卒業が近づくにつれ、「より流暢な英語を身に付けてから教壇に立ちたい」と考えるようになり、アメリカへの留学を決意した。
「1980年代当時、英語教員であっても十分に英語を話せない人は多くいました。私も流暢とは言えず、英語力をしっかり磨くために留学を決めたのです。ノーザン・コロラド大学大学院では英語教育のプログラムもありましたが、私はあえて英米文学を専門に選びました。教員だけでなく研究の道も視野に入れたかったからです。結果として、この選択は正解でしたね」
大学院では英米文学を専攻し、特にロマン派の詩人に注目。ジョン・キーツ(『ギリシャの壺についてのオード』)やウィリアム・ブレイク(『一人の失われた少年』『聖木曜日』『日の老いたる者』)を研究した。そして、帰国後は、英語教員としての道を歩み始める。
研究分野は「英米文学批評」
特にノースロップ・フライが専門
英語教員を経て、文学研究者の道へ
アメリカから帰国し中学・高校の英語教員として働き始めた根津教授は、日本の教育現場に戸惑うこともあったという。校則の厳しさや自由な意見交換の難しさに窮屈さを感じる場面もあった。しかし、日本の教育の良さも実感しながら、生徒が英語を学び成長する姿には大きな喜びを見出していた。そんななか、根津教授は再び研究の道を志し、桜美林大学の大学院へ進学する決断を下す。
「ノーザン・コロラド大学大学院で取り組んだ文学研究を本格的に続けたいと思い、40歳を過ぎてから桜美林大学大学院に進学しました。専門は英米文学批評で、カナダの文芸批評家ノースロップ・フライを研究対象としました。彼はウィリアム・ブレイクの専門家でもあり、ロマン派を研究する上で避けて通れない存在でした」

ノースロップ・フライを通して読み解く英米文学
ノースロップ・フライ(1912-1991)は、神話批評を発展させたことで知られるカナダの文芸批評家である。神話批評とは、文学作品を神話や原型(アーキタイプ)の観点から分析する手法であり、フライの理論は精神分析学者カール・グスタフ・ユングの「集合的無意識」の概念からも影響を受けた要素がある。
「フライは、文学作品に内在するパターンや構造を分析し、物語を四季になぞらえて分類しました。たとえば、春は英雄の誕生や成長の物語(例:『オデュッセイア』)、夏は社会的調和や結婚で終わる物語(例:シェイクスピアの喜劇)、秋は英雄の没落や破滅の物語(例:『マクベス』)、冬は無秩序や絶望を描く物語といったように分類されます。彼の批評は、文学そのものの構造やパターンに注目し、原型を重視することが特徴なのです」
文学批評は、作品の魅力を解き明かし、新たな読み方を提示するツールである。王道の解釈を楽しむのもよし、新たな視点を発見するのもよし。そうした文学批評の面白さに惹かれながらも、根津教授は桜美林大学で再び教員としての道を歩み始める。
留学×スポーツ産業
海外に出てさまざまな価値観に触れてほしい
海外のスポーツ産業を視察するプログラムを開設
根津教授は、桜美林大学において、授業や演習科目、留学支援など、英語教育に関する多彩なプログラムを展開してきた。そのなかでも特に注目すべきなのが、ビジネスマネジメント学群で開設した「海外ビジネス研修(スポーツ産業)」だ。このプログラムは、夏休み期間の約2週間、アメリカのアトランタでスポーツ産業の現場を視察する短期研修となっている。
「スポーツは学生にとって身近な分野であり、海外や留学への関心を高めるきっかけにもなるはずだと考えて開設しました。このプログラムではアメリカのスポーツ産業がどのようなビジネスモデルを持ち、どんな課題や実務上の苦労があるのかを学ぶとともに、、日本のスポーツ産業との違いについても考察してもらいます。また、野球、フットボール、バスケットボール、アイスホッケーなど、可能な限り試合を観戦し、現地のスタッフから直接話を聞く機会も設けています。アトランタでは、『海外ビジネス研修(アメリカ)』としてコカ・コーラ(飲料)、デルタ航空(航空)、UPS(運輸)などの本社訪問プログラムも実施されており、学びの場として最適な都市だと考えています。多くの学生に留学を身近に感じてもらえればいいなと思っています」
このプログラムを開始して約5年が経過すると、根津教授自身もスポーツ産業に精通し、ゼミも本格的に開設した。ゼミでは、日本のスポーツ産業の現場を訪れ、関係者の話を聞く機会も設けている。
ビジネスマネジメント学群がペスカドーラ町田と協働プロジェクトを発足|桜美林大学
「最近では、プロフットサルクラブ・ペスカドーラ町田の試合観戦に行きました。学生たちには、観客の動員数やハーフタイムショーの内容、スポンサーの分析などを課題として与えています。また、ビジネスモデルとして今後どのように発展できるかについても考察してもらいます。スポーツクラブとの関係が深まることで、大学に招いて講義をお願いする機会も増えていて、近年では、プロサッカークラブの町田ゼルビアの方々にもご登壇いただきましたね」

人生は学びの連続——留学で成長する学生の姿を見るのが喜び
根津教授にとって、学生の成長を見守ることは教員としての最大の喜びだ。特に、留学を経て大きく成長し、桜美林大学に戻ってきた学生の姿には、深い感動を覚えるという。
「留学を経験した学生は、驚くほど成長します。英語のリスニングやスピーキングの向上はもちろんですが、それ以上に人間的な成長を感じることが多いですね。他者との積極的なコミュニケーションが身についていたり、学ぶ意欲が飛躍的に高まっていたりします。おそらく、現地での経験を通じて、何かしらの『きっかけ』をつかんだのでしょう。ほんの些細な出来事でも、人はこれほど成長できるのだと、彼らの姿を見るたびに実感します」
根津教授は、英語学習や留学の本質的な魅力は、異なる価値観を持つ人々と出会い、自分自身の考えを揺さぶられることにあると語る。人生は学びの連続。それは決して学問に限った話ではないという。
「私自身、留学から戻ってきた学生たちの成長した姿から、多くのことを学んでいます。また、桜美林大学では海外からの留学生の受け入れにも積極的に取り組んでおり、私もその窓口を担当しています。中国やアメリカをはじめ、さまざまな国からの留学生と接することで、私自身も異なる価値観に触れ、多くの刺激を受けています。桜美林大学の学生たちにも、この環境を最大限に活かし、国内にいながら異文化理解を深め、さらなる成長につなげてほしいですね」
教員紹介
Profile

根津 明広教授
Akihiro Nezu
1956年、北海道生まれ。桜美林大学大学院 国際学研究科 博士課程 (後期博士課程) 比較文化研究専攻 国際学研究科 環太平洋地域文化専攻 博士課程中退。東海大学 教養課程 非常勤講師、清泉女学院中学・高等校 非常勤講師、松蔭女子短期大学 教養課程 非常勤講師、清泉女学院中学・高等校 専任教諭、青葉学園短期大学 非常勤講師、東京理科大学 非常勤講師、明治大学短期大学 非常勤講師、桜美林大学 外国語教育センター 非常勤講師、桜美林大学 外国語教育センター 専任講師、明治大学 情報コミュニケーション学部 非常勤講師、近畿大学九州大学 大学通信教育部 非常勤講師、桜美林大学 基盤教育院 専任講師を経て、2004年より桜美林大学に入職し、ビジネスマネジメント学群は2012年より現職。多くの学生たちの留学をサポートしてきた。
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