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第88回新制作展にビジュアル・アーツ専修の学生7人の作品8点が入選

2025/09/24(水)

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佐善圭准教授の作品を中心に、佐善准教授と入選した学生たち

9月17日〜29日、国立新美術館で第88回新制作展が開催され、芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修の学生7人の8作品が入選しました。

新制作展は新制作協会による公募展で、全国から公募された優秀な作品が展示される、国内有数の規模を誇る美術展です。佐善圭准教授の卒業研究I(ビジュアル・アーツ)では、4年間の学びの集大成として新制作展の彫刻部「35³—サンゴーキューブ—」部門(35cm立方の空間内で彫刻表現を展開)への挑戦を目標に作品を制作し、7点もの作品が入選。また、別に一般公募部門に応募した1作品が入選しました。

学生たちを指導した佐善准教授は、「立体造形のゼミ生は、一昨年から国立美術館の公募展覧会に挑戦をはじめました。一昨年は3名、昨年は5名、今年は7名の学生の8点の作品が入選しました。今回は、2年前に卒業した学生(OG)が、就職後にアートの道を諦めきれずに再チャレンジし、再入選したことも嬉しいニュースです。彫刻の熟練者達が競い合う新制作展の入選は、素晴らしい結果であり大変優秀な成績を収めたと思います。この結果にビジュアル・アーツ専修の学生達も刺激を受け、さらに活発に作品活動が盛んになることを楽しみにしています」と話しました。

作品紹介

35³ —サンゴーキューブ—部門

藤澤歩心さん「心のインクルージョン」

題名の通り宝石・鉱石におけるインクルージョンをモチーフに人間の内面的な部分を重ねて表現した作品です。
熱水を介した鉱石達をイメージしているため、曲線的な造形で熱水の流動性を、色や粘度の違うシーリングワックスを調合して結晶化し生成される鉱石を表現しています。
同じ種類の宝石でもインクルージョンまで同じものはなく、必然や偶然の重なりによる唯一の個性として持っています。それは人間のそれぞれの道のりから育つ価値観にも似ているという考えのもと制作しました。

今回の作品は形が定まるまで時間がかかり、個人的には全力を出し切れたとは言えない完成度であったため、入選していたことに大変驚きました。そのため、卒業制作ではやりきったと思えるような作品を作りたいです。

加藤彼方さん「心鏡」

この作品は「心は人を映す鏡」という言葉に着想を得て制作されました。他人の言動は自身の内面を映すものであり、作品は観覧者に自己を見つめ直す機会を提供しています。淡い鏡のように反射するメッキ調塗装により、見る人の感情や状態によって印象が変化します。また、素材に使用した壊れやすいテラコッタは、心の強さ、繊細さ、儚さなどを象徴しています。作品全体を通して、心の状態や変化に気づかせることを目的としています。

私は今回の作品が入選した事はとても良い経験になったと考えています。大学で学んできた美術が目に見える形で評価されてとても嬉しく思います。

佐々木言都さん「寄せては返す」

私を形づけてきた人々、そして今も関わり続ける大切な存在への敬意を、波のかたちを通して表現した作品です。縁は、寄せては返す波のように、出会いと別れを繰り返しながら、私の内面を豊かにしてきました。その循環する関係性を、渦巻くように上昇する形態で造形しました。

昨年度の新制作展で、間近で入選作品を拝見し、大きな刺激を受けました。そのため今回入選の機会をいただけたこと、光栄に思います。制作過程では行き詰まることも多かったですが、佐善先生からのご助言や、ゼミの仲間たちの支えによって、作品を形にすることができました。今後は卒業制作に向けて、より表現を磨き、洗練された作品制作に励んでいきたいです。

佐伯樹さん「封膜」

今回、抽象的な作品の方が評価されやすいと聞いたのですがこれまで抽象を試みた経験がなく、案出しに苦戦しました。そこでまず素材を木とパラフィンに決め、この二つからどのような表現が可能かを探ることにしました。木の力強さとパラフィンの儚さを重ねることで、生命や記憶が覆われ曖昧になっていく姿を象徴できるのではないかと考えました。

実際の制作では、パラフィンの扱い方を試行錯誤し、さらに木彫で細部まで掘り込む作業に大きな時間と労力を要しましたが、その過程を通じて自然と人工、具象と抽象の境界を意識した作品に近づけたと感じています。

小原史也さん「角角」

この作品は「抽象と具象の対比」をテーマに制作しました。はじめは抽象彫刻にチャレンジしようと考えていましたが、「抽象彫刻とは何か」という点で大きくつまずき、試作品を10体程期間中に制作しましたが、なかなか面白い表現ができずかなり迷走しました。その結果、「具象と対比させることで、抽象が見えてくる」のではないかと考え、今回のテーマが決定しました。今でも抽象彫刻について考えることがありますが、まだ自分の中での明確な答えもハッキリとは出ていないですし、今回の制作期間や、入選した自分以外の作品を見て自分は「抽象より具象の方が好きだし得意だ!!」と改めて感じました。

今回初めての美術館展示で美術館の裏側を見れたり、新制作展の会員の方々とお話しさせていただけたり、貴重な経験をたくさん出来ました。来年もまた入選できるよう、これこらも精進します。

鈴木紗和さん「冥望」

「冥望」は、人の心の複雑さと未来への可能性を主題に制作しました。切り株を積み重ねた経験の象徴とし、そこから広がる根を感情や思考の道筋として表現。根は絡まり分岐しながらも未来へ伸び、過去に縛られるものではなく希望へとつながる存在です。その先端に施した金は、困難の中にも光を見いだす思いを込めました。深い闇の底から遠くを望むまなざしを名に託し、人間の内側を語る作品としました。

今回の入選は、自らの表現が他者に届いた喜びと、新たな挑戦への励みとなりました。

相澤周作さん「大衆性」

黒は光を吸収し、形の凹凸をはっきりと浮かび上がらせるために選びました。無数のとがった形は、一人ひとりの違いや思いを表しながらも、集まることでひとつの大きな塊になる「大衆」の姿を示しています。近くで見ると個々の違いが分かり、遠くから見ると一体化して見えるようにし、視点によって印象が変わることを意識しました。手作業の跡を残し、そこに存在した人々の痕跡を重ねるように制作しています。

一般公募部門

相澤周作さん「良質の孤独、良質の変哲、良質の孤高」

ハイエナは、敵としての印象が強く、孤独に思われがちですが実は仲間を想う温かさを持つ存在です。砂鉄や着彩による深みある黒褐色やテラコッタによる荒い造形の痕跡は、生き抜く中で刻まれる経験と変化を示します。上を向き声を放つ姿は、仲間を呼ぶ遠吠えであり、同時に孤高な決意を象徴します。素材の質感と形の力強さを通して、生命の逞しさと儚さ、そして支え合う絆の価値を観る者に伝えることを意図しました。

私のゼミ内では全員が35³部門へ応募しましたが、一般部門への応募は私だけでした。私にとってこれはものすごく可能性の低いチャレンジでしたが、先生方や仲間の応援もあり、入選をいただくことができました。去年や一昨年も私自身が足を運び、観ていた作品展だったこともあり、一般部門に関しては正直私の混ざれるレベルではないと感じていました。ですが、こうして選んでいただき、今は非常に光栄です。

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