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多文化多言語の中で生きる人々の〈声〉が伝えてくれるもの

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リベラルアーツ学群では、「課題探究・実践科目」の4年次科目として、「卒業論文」「卒業研究」に加え、2024年度より「卒業サービスラーニングプロジェクト」(通称、卒業SLP)*1 が開講され、それぞれの卒業SLPで、学生たちがさまざまな社会課題に向き合っています。

「卒業SLP」(担当教員:川田麻記)では、「多文化多言語の子どものための公正な教育・支援のあり方を考える」をテーマに、言語文化的多様性が絡む日本社会の構造的課題に焦点を当て、Critical Service-Learning *2 に取り組んでいます。その一環として、都立町田高等学校定時制と本学が取り組んできた高大連携による「マルチリンガル哲学対話」の実践は、6月22日の朝日新聞で取り上げられました*3。この活動は、普段は町田高校で行っていますが、9月12日(土)には地域社会にも開き、本学で開催しました。以下は、これらの取り組みを通して学びを深めてきた卒業SLP履修生のメッセージです。

リベラルアーツ学群4年 小汲 唯奈 (メジャー:言語教育、マイナー:心理学&多文化共生)

声にならない誰かの心の声を聞こうとしたことはありますか?本来の力が発揮できていない状態で評価をされ、悔しい思いをしたことはありますか?多文化多言語の高校生の中には日本語能力など表面的にしか得られない情報のみで評価され、「母語を使えばわかるのに」ともどかしい思いをしている生徒もいます。彼・彼女らは深い思考力や知的好奇心など強みや能力を内面に秘めており、日本における日本語母語話者の高校生と変わらない対等な存在です。大人や社会が多文化多言語の高校生にどのような視線を向けるかにより、彼・彼女らが生き生きと学ぶことができるかが大きく左右されます。さらには自分が持っている文化及び言語資源には可能性が秘められているということを認識できるかという点においても影響を与えます。そこで私たちの活動の最初のステップとして多文化多言語の高校生が自信をもって自分の言葉で思いを伝えられる居場所を確立していきたいと考えています。 
高大連携協定を結ぶ都立町田高等学校定時制「国際交流サークル」で、生徒の声に耳を傾ける 左から小汲唯奈さん、柏崎崇珠さん、舘脇路香さん

リベラルアーツ学群4年 舘脇 路香 (メジャー:言語教育、マイナー:心理学&多文化共生)

文化的言語的に多様な背景を持つ高校生と関わる中で、日本語中心の学校では、多文化多言語の高校生が日本語能力だけで評価されることがあるということを知り、衝撃を受けました。
生徒の中には、自分のもつ本来の可能性(得意なことや興味など)を内に秘めてしまうこともありますが、一度閉ざされてしまった可能性を再び引き出すには、信頼関係の構築が必要です。そしてそれにはとても長い時間がかかります。それでも私たちが時間をかけて向き合いたいと考えるのは、この取り組みが高校生のためだけでなく、関わる私たち大学生にとっても大きく影響する学びとなるからです。
お互いに価値観を共有し、刺激し合いながら新しい視点を得られるような「対等な関係性」の中で、私たちは高校生の強みを引き出す工夫を重ねています。そうした関わりを通して、最終的に高校生たちが自分の可能性に気づき、自信につなげてくれることを願っています。 

リベラルアーツ学群4年 柏崎 崇珠 (メジャー:博物館学&情報科学、マイナー:教育学&データサイエンス)

幼稚園の時、中国出身の子どもと過ごすことがありました。「あなたは中国出身の親の子どもだから」と幼稚園の先生は配慮のつもりだったのかもしれません。同じ中国につながる子ども同士。しかし、言葉が通じず、なんとか意思疎通を図ろうと奮闘したもどかしい記憶。
私自身の中国のルーツとこれまでの経験は、言葉の壁の奥にある心の声に耳を傾ける重要性を教えてくれました。 現在、私たちの身近にいる多文化多言語の高校生たちは、表面的な日本語能力だけでは測れない豊かな文化や、生活の中で培った独自の価値観、深い思考力を秘めています。 私がゼミで学んで実感するのは、国境を超えて多様な人材を繋ぐ「ハブ」としての教育の意義です。スマートフォンが普及し彼らも持っていますが、目の前には本当に多様な未来の選択肢が見え、それを自由に選べる環境があるでしょうか。 彼らが、物だけでなく、言語資源を活用し、生き生きと未来を切り拓けるのか?自身のルーツやオリジナリティを原動力とし、教育はいかにして彼らの可能性を広げるハブとなれるのか。私たちは問い続ける必要があります。

リベラルアーツ学群4年 ジョン ユミン (メジャー:言語教育、マイナー:コミュニケーション学&言語学)

「相手を知っていくことで、自分も成長できる」
これは、町田高校で行われている哲学対話に参加する中で、私が何よりも実感したことです。町田高校の哲学対話は、母語や母国の経験を活用し、自分の中にある言語レパートリー(母語も日本語も含む)をすべて活かして哲学的なテーマについて問い合う活動です。 例えば、「『普通』とは何か」というテーマの日は、「先生に敬語を使うのは普通?」「一人の意見でも『普通』と言える?」「何人で『普通』と言える?」など様々な問いが生まれました。問い合う中で、他の生徒の国の文化を聞くとともに、自分の国ではどうなのかについても共有し合うことができました。
生まれ育った国や文化が異なっていても意見が一致する驚きや、当たり前が覆される経験を通して、共通点への共感と、異なる視点からの新しい発見の両方を楽しむことができました。このように母国の文化や言語を大切にすることは、日本で暮らす中で、自分の本来持つ能力を改めて肯定的に捉え直すきっかけになるのではないかと考えています。
桜美林大学町田キャンパスで開催した多文化多言語の高校生を対象としたイベント『君の言葉で考えるマルチリンガル哲学対話』(2026年9月12日)。司会進行を務めるジョン ユミンさん(左)、小汲唯奈さん(右)

リベラルアーツ学群4年 各務 佑 (メジャー:心理学、マイナー:多文化共生)

私たちは、町田高校で哲学対話を用いた活動を行ってきました。この活動から、日本では多文化多言語生徒の声が、構造的格差によって見えなくなってしまうことがあることを知りました。普段の活動では、生徒が自身の持つ多様な文化や言語を活用して、豊かな思考ができるよう対話を通した関わりを行っております。
哲学対話では、生徒の斬新な意見に考えさせられることも多いです。例えば、「普通はいつからは始まった?」という問いに対して、「普通は、人が2人の時から始まったのでは?」という意見がありました。もし日本語を使って考えること・話すことを強制していたら、このような意見は得られなかったかもしれません。この経験から、私は文化や言語は制限されるものではなく、思考や表現を豊かにするものであると信じています。多文化多言語の子どもに限らず、全ての子どもが自分の能力を最大限に発揮できるようにこの活動を続けていけたらと思います。 
外国につながる高校生のための進路ガイダンスでの活動(2026年7月18日)。左から各務佑さん、ジョン ユミンさん、小汲唯奈さん
文化的言語的に多様な背景をもつ子どもが急増する日本社会。子どもたちのぶつかる「困りごと」は、なぜ起こっているのか。その困りごとは、一般的に、子どもの日本語習得の問題として捉えられがちですが、そう定義しているのは一体誰なのか。また、この課題の解決策として注目される日本語教育は、何を目的とし、誰にとっての解決策となっているのか。「子どもたち」にとっての言語教育(日本語教育)は、どうあるべきなのか。学生たちは、こうした問いから浮かび上がる日本社会の「当たり前」を批判的に問い直し、多文化多言語の高校生や子どもたちの声に耳を傾けながら、日々、実践のあり方を模索し、考え続けています。

*1 リベラルアーツ学群4年次課題探究・実践科目「卒業サービスラーニングプロジェクト」について

注2 Critical Service-Learning: 理論と実践の往還を通して学ぶService-Learning(SL)において、特に、社会の問題を引き起こす社会構造上の根本原因を探り、ボランティアそのもののあり方を批判的に問い、公正な社会の実現に向けて、関わる人々とより良い関係性を構築しながら取り組むSL実践のあり方。

*3 関連記事:【朝日新聞】フィリピンでの僕はおしゃべり、でも…高大連携で外国ルーツの子支援(2026年6月22日)

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学校法人桜美林学園 総合企画部 広報課