重い星の「ゆりかご」を18個とらえた — W49Aのホット分子雲コアの構造と進化 —
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宮脇亮介(桜美林大学),林 正彦(国立天文台/日本学術振興会ボン研究連絡センター),長谷川哲夫(国立天文台)の研究チームは,南米チリにある電波望遠鏡群「ALMA(アルマ)」(注1)の公開データを使って,銀河系内でも特に活発に重い星が生まれている領域W49A(注2)を詳しく調べました。
太陽の8倍以上の質量をもつ「大質量星」は,短い時間で急速に成長するため,生まれる途中の姿を詳しく観測することが難しい天体です。大質量星の赤ちゃんは,周囲のガスや塵に深く包まれた「ホット分子雲コア(ホットコア)」(注3)の中で成長します。ホットコアは100 Kを超える暖かく高密度なガスの塊で,多くの分子から電波が放射されます。本研究では,こうした分子の電波を手がかりに,大質量星が成長して周囲を電離し始めるまでの変化を調べました。
研究チームは,高温・高密度のガスをよく示すアセトニトリル(CH₃CN)(注4)という分子の分布と速度を調べ, W49Aの中に18個のホットコアを見つけました。また,1.3 mmの連続波では20個のコンパクトな天体を確認しました。
12種類の分子輝線と水素の再結合線H30αを比較したところ,ホットコアの周囲には「高温・高密度ガス」「アウトフロー」「包絡ガス」「広がったガス」「電離ガス」という,性質の異なる5つの成分が共存していることが分かりました。つまり,ホットコアは単純な一様のガスの塊ではなく,円盤やトーラス,星から噴き出すガス,外側を包むガスなどが組み合わさった複雑な構造をしていることが見えてきました。
さらに,CH₃CNの量は温度と強く関係していました。観測から,CH₃CNが特に多くなるためには,およそ200~300 K以上の高い温度が必要であることが分かりました。これは,ホットコアの化学組成が「100 Kを超えれば同じ」なのではなく,温度が高くなるにつれて連続的に変化していくことを示しています。CH₃CNはホットコアを見つける目印であるだけでなく,内部の温度や化学的な進化を知るための手がかりにもなることが分かりました。
18個のホットコアを進化段階で分けると,中心にまだHII領域(注5)が見られないものが10個,すでにHII領域が形成されているものが4個,残り4個はその中間段階または判定が難しい天体でした。統計的に確定するにはさらに多くの天体を調べる必要がありますが,この結果は,星が周囲のガスを電離し始める前のホットコア段階が,これまで考えられていたより長く,およそ10万年続く可能性を示しています。一方,中心にHII領域ができた後の段階はおよそ1万年程度と考えられます。
大質量星がどのように成長するかについては,大きなガスの塊から一つまたは少数の星が成長する「コア降着モデル」と,星団の中で複数の星がガスを取り込みながら成長する「競争的降着モデル」という代表的な考え方があります。今回得られた時間尺度だけでどちらか一方を決めることはできませんが,W49Aのような複雑な星形成領域では,環境や天体ごとの条件によって両方の仕組みが働いている可能性があります。今回の研究は,大質量星が誕生していく途中の姿を,多数のホットコアを比較することで描き出したものです。
本研究成果は,2026年7月27日に日本天文学会の欧文研究報告 Publications of the Astronomical Society of Japan(PASJ)に受理され,2026年9月14日にでオンライン公開されました。2026年10月号に掲載される予定です。
論文名:Hot molecular cores in the W49A molecular cloud complex
著者:Ryosuke Miyawaki, Masahiko Hayashi, Tetsuo Hasegawa
注1:ALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array) チリ・アタカマ砂漠に設置されたミリ波・サブミリ波干渉計。本研究は公開済みのALMAアーカイブデータを再解析したものです。
注2:W49A わし座方向にある、銀河系内でも非常に活発な大質量星形成領域。本研究ではW49Nを含む領域をALMAで観測し、距離として11.11キロパーセクを採用しています。
注3:ホット分子雲コア(Hot Molecular Core: HMC) 大質量原始星の周囲にある、典型的に0.1パーセク以下のコンパクトで高密度(n(H₂)≳10⁶ cm⁻³)、高温(≳100 K)のガス領域。複雑な有機分子を含む豊富な分子輝線を示します。
注4:CH₃CN(アセトニトリル) 高温・高密度ガスを追跡する代表的な分子。本研究ではCH₃CNの放射を用いてホットコアを同定し、複数の遷移から回転温度を求めました。
注5:HII領域 高温の若い大質量星から出る紫外線によって、水素ガスが電離した領域。非常に小さい初期段階はハイパーコンパクトHII領域(HCHII)、その後はウルトラコンパクトHII領域(UCHII)へ発達します。
この図は,大質量星が生まれる場所であるホット分子雲コア(HMC)が,時間とともにどのように変化するかを模式的に表しています。
・左から,冷たい高密度コア → ホットコア → 中心にHII領域ができた「Hollow Hot Core」→ HII領域がさらに広がった段階,という進化の流れを示しています。
・本研究で見つけた18個のホットコアは,主に「Hot Core」,「Hollow Hot Core」,およびその中間段階に分類されます。
・ホットコアの段階では,中心の若い大質量星が周囲の円盤やトーラスから物質を取り込みながら成長し,同時にアウトフローを噴き出します。
・中心星が成長して強い紫外線を出すようになると,周囲の水素ガスが電離され,HII領域が形成・拡大していきます。
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桜美林大学リベラルアーツ学群 教授 宮脇亮介(みやわきりょうすけ)
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