• 健康福祉学群

    福祉・心理領域社会福祉学専攻

友永 美帆 助教

Miho Tomonaga

友永美帆先生がインタビューに応じている様子
  • 曾祖母との思い出から生まれた対人支援への思い
  • 孤立させない社会を目指して。地域とつながる実践的研究
  • 実践と理論を循環させる。現場経験が育む「その人らしさ」への眼差し
友永美帆先生がインタビューに応じている様子

曾祖母との思い出から生まれた対人支援への思い

「105年の人生」が教えてくれたこと

対人支援とは、困難や悩みを抱える人々に対し、それぞれの問題の解決、自立支援、生活の質の向上を目的として行われる、専門的・体系的な働きかけや技術の総称だ。医療・福祉職、ソーシャルワーカー、カウンセラーなどといった対人援助職は、支援を必要としている一人ひとりと信頼関係を築きながら、適切なコミュニケーションと専門知識を駆使してサポートしていく。

健康福祉学群の友永美帆助教が対人支援の道を志したきっかけは、105歳まで生きた曾祖母との交流にあったという。

「私は、曾祖母の話を聞くのが子どもの頃から大好きだったんです。曾祖母の物事の見方や考え方から人生観や教育観に大きな影響を受けたと思います。高校生になる頃には、高齢者を支援する仕事に就きたいと考えるようになっていました」

対人支援への関心や曾祖母との思い出について語る友永美帆先生

現場で知った対人支援の本質

大学受験のタイミングで、桜美林大学に社会福祉士養成コースが設置された。その第一期生として入学した友永助教。卒業後は特別養護老人ホームで高齢者介護の現場経験を積んだ。そこで出会った一人の入居者とのやりとりが、その後の友永助教の教育実践の核となっていったという。

「就職して最初に担当になった入居者の方が、90歳の誕生日を迎えることになったんですね。その方は浅草で生まれ育った方で、日頃から当時の思い出をよく話してくださっていました。そこで誕生日プレゼントとして『浅草一日券』を企画したんです」

浅草一日券は、浅草巡りができる特別なチケット。それを楽しみにリハビリに励み、当日は思い出のお寿司屋さんで食事を楽しみ、帰ってから作ったアルバムを何度も眺めては、他の職員やご友人、ボランティアの方々にその日の話をして回っている姿があった。

「実際に利用者の方の心が動く瞬間を目の当たりにしたことで、『その人を理解する』ということの深さと、思いとつながる目標がもたらす前向きな変化の大きさを実感したんです」

この体験は教育観の根底に「その人らしさを理解すること」の重要性を決定づけた。こうした背景があり、友永助教は現在も週1回、訪問介護ヘルパーとして現場に入り続けているという。

「現場を知らないと学生に本当のことは伝えられません。介護度だけでその人を判断するのではなく、どういう歴史があって、何に心が動くのか。その人の背景を知ることで、適切な支援ができるようになりますから」

孤立させない社会を目指して。地域とつながる実践的研究

2006年、友永助教のキャリアに大きな転機が訪れた。特別養護老人ホームで働きながら、社会福祉士と介護福祉士の資格を取得。新たな環境で経験を積みたいと考え始めていた頃、健康福祉学群が開設。現場で必要な資格取得を目指し、実習を支援する「実習支援センター」も同時に開室された。現場の経験を活かして大学の役に立ちたい、学生を支援したいという思いから、実習支援センターでの役割を担うことになった。

「実習支援センターでの役割は、福祉の現場経験を活かして学生の実習を支援することでした。福祉施設などと大学の橋渡しを行い、現場の実践知を実習指導に生かしていくという仕事です」

長年、高齢者の生活環境、特に食事・配食サービスの研究を行ってきた野村教授との共同研究を通じて、友永助教の研究テーマも明確になっていった。当初は高齢者の食事・配食サービスから始まった研究は、地域活動や社会的孤立の問題を含めた対人支援へと広がっていく。

「子どもから高齢者まで、社会的に孤立する人のいない社会を目指したい。私自身、子どもを育てながら仕事をするなかで、周りの人の理解や地域の人からの支えの大切さを実感しています。近所の方に子どもを預かってもらったり、お互いに預け合ったりするなど、そういう関係性があるからこそ、仕事と育児と研究を両立することができています」

現在、友永助教は、高齢者だけでなく、地域活動や若者を対象とした研究にも取り組んでいる。共同研究では、不登校経験や学校へ行きづらかった若者が中心となって行う活動や子どもの権利実現について取り組んでいるという。

「私の研究活動の根本にあるのは『その人を理解する』という考えです。高齢者でも若者でも、一人ひとりがかけがえのない存在として大切にされる社会をつくりたいと思っています」

キャンパス内で佇む友永美帆先生

実践と理論を循環させる。現場経験が育む「その人らしさ」への眼差し

桜美林ガーデンヒルズという恵まれた環境

友永助教の教育実践を支えているのが、桜美林大学町田キャンパスに隣接する桜美林ガーデンヒルズの存在だ。この高齢者向け住宅は「多世代共生」をコンセプトとしており、学生との交流プログラムが充実している。

「本当に恵まれた環境だと思います。キャンパスに隣接しているので学生が訪問でき、継続的な交流が可能です。入居者の方々も学生との交流をとても楽しみにしてくださっています」

この環境を活かし、友永助教は理論と実践を循環させる教育を実現している。座学で学んだ知識が実習で体験となり、それがまた新たな理論的理解を深める。

「私自身が体験型の学習で成長してきたので、学生にもそういう機会を提供したいのです。今は核家族化が進み、曾祖父母、祖父母としっかり接したことがない学生も少なくありません。実習で初めて高齢者とコミュニケーションを取るという学生もいます。だからこそ、まずは『人として』向き合う経験を大切にしています」

世代を超えた交流が生む学びの循環

友永助教が授業の一環として力を入れているのが、桜美林ガーデンヒルズの入居者を招いた「聞き書き」の実践だ。この教育手法のきっかけとなったのは、2014年頃に友永助教自身が祖母の自分史を作った経験だった。

「祖母が大切にしていた足踏み式のミシンがありました。戦争で空襲を受けた時、曾祖父がそのミシンだけは絶対に焼失させないと決意し、分解して長い距離を運んで疎開したというエピソードを知り、改めて祖母の歴史を知りたい。曾祖父が娘(祖母)のために命を懸けて守ったこと、そのミシンに託した想いを残したいと思ったんです」

祖母が大切にしていた足踏み式のミシン

自ら聞き書きし、自分史を作って祖母にプレゼントしたとき、本人はもちろん、両親、親戚の方々も含めて多くの人が喜んでくれた。この経験から「人の語りを残すことの価値」を実感。現在の授業では、学生たちが入居者の方々から人生の話を聞き、それを一冊の本にまとめていく。興味深いのは、同じ方の話を聞いても、学生によってタイトルも内容のまとめ方も異なる作品ができあがるところだ。

「その人らしさをどう理解し、残していくか。学生一人ひとりの生き方が反映されます。そして、他者を理解していくうちに自己理解も深まっていき、それがそれぞれの冊子のあとがきに現れてくる。学生同士、お互いの原稿を回し読む時間も大切な学びになっています。また、原稿作成の過程では何度も録音を聞き直し、高齢者の方の人生、学生に伝えたいと考えてくれたメッセージへの理解を深めていきます。その過程で傾聴力や共感する力が自然と身についていくのです」

この「聞き書き」の取り組みは、学生だけでなく、語り手となる桜美林ガーデンヒルズの入居者の方々にも大きな影響を与えている。

授業で実際に学生が作成した聞き書き作品

「学生と話すことをとても楽しみにしてくださっています。話す時は生き生きとされ、話した後も本を受け取ることを心待ちにしてくださっている。ご家族の方々も喜んでくださっています。介護や福祉の仕事は、その人の人生に寄り添う、とてもやりがいのある仕事です。技術や知識ももちろん大切ですが、まずは『その人に対する愛情』、人間として向き合う姿勢を学生時代に身につけてほしい。そのための土台作りが、私の役割だと思っています」

現場経験を続けながら、研究と教育に取り組む友永助教。その姿勢の根底にあるのは、曾祖母との思い出から始まった「その人らしさを大切にする」という一貫した思いだ。

教員紹介

Profile

キャンパス内を笑顔で歩く友永美帆先生

友永 美帆助教

Miho Tomonaga

桜美林大学健康福祉学群卒業(社会福祉士養成コース第一期生)。卒業後、特別養護老人ホームで支援業務に従事しながら、社会福祉士、介護福祉士の資格を取得。2006年より桜美林大学実習支援センターで実習指導に携わる。現在も週1回訪問介護ヘルパーとして継続。
専門は高齢者支援、地域福祉、実習教育。野村知子教授との共同研究により食事サービス研究に取り組み、近年は社会的孤立防止、多世代支援の研究に取り組む。桜美林ガーデンヒルズとの連携による「聞き書き」教育実践など、理論と実践を循環させる教育手法で学生の対人援助スキル向上に貢献している。

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