• ビジネスマネジメント学群

    ビジネスプログラム国際ビジネス領域

韓 暁宏 准教授

Xiaohong Han

韓暁宏先生がインタビューに応じている様子
  • グローバル企業の国際戦略を多角的に分析
  • 「農業の6次産業化」の実現に向け地域と連携
  • 知的財産を活用した新たな価値創出に挑む
韓暁宏先生がインタビューに応じている様子

グローバル経営戦略と国際経営の知見を活かし、地域に密着して課題解決に貢献する

グローバル展開における“勝ち組”と“負け組”の存在に興味を持った

急速にグローバル化が進む近年、多国籍企業が直面する課題はますます複雑化している。ビジネスマネジメント学群の韓暁宏准教授は、グローバル経営戦略および国際経営を専門とし、貿易会社での実務経験も踏まえながら研究を積み上げてきた。市場参入戦略や現地化戦略、国際競争優位の構築から、多国籍企業の組織マネジメントや技術移転まで。企業が国境を越えて展開する際の論理を多角的かつ実践的に研究している。

「私が大学院生だった2000年代には、多くの日本企業がグローバル展開を進めていました。しかし、成功する企業と行き詰まる企業が明確に分かれており、その差はグローバル経営における戦略にあると感じていました。大学院を修了した後、私は貿易会社に勤めることになるのですが、そこでも“勝ち組”と“負け組”が明確に分かれていることを実感。海外のマーケットを開拓するために、どのような戦略が求められるのか。その根本的なメカニズムについて研究に取り組みたいと考えたことが、大学教員の道を選んだきっかけでした」

海外を生産拠点ではなくマーケットだと捉え直すことが日本企業の課題

韓准教授が特に着目したのは、グローバル企業の現地化戦略だった。日本企業の慣習に基づく経営は、あくまで国内においてのみ通用するものにすぎない。ビジネス成功の鍵は、文化の異なる現地の状況に合わせたマネジメントにある。韓准教授はそう考え、人事制度や組織運営なども含めた幅広い経営戦略について研究を進めてきたのだという。

「日本企業のグローバル展開は、主に海外に生産拠点を置くことを意味していました。国内にある本社から意思決定層を派遣し、海外で従業員を採用するというスタイルですね。しかし、その両者には当然ながら文化や商習慣の違いがあるため、人材の管理が非常に難しかったのです」

日本企業のビジネスモデルはこうした問題を抱えていたものの、1980〜90年代までは成功事例が多く見られた。ところがそれ以降になると、海外を生産拠点とみなすだけの戦略が通用しなくなったのだという。

「日本企業の抱える大きな問題は、労働集約型の海外進出による成功体験に固執していることだと考えています。グローバル化の進んだ現在の世界では、海外を単なる生産拠点ではなく、マーケットとして捉える必要があるからです。進出先においていかにマーケットを拡大していくのか。今後は生産面のみならず、そうした目線が求められると考えています」

「農業の6次産業化」に向け実践的な調査と分析に取り組む

農業の6次産業化に向けた実践的な調査と分析について語る韓暁宏先生

企業のグローバル展開に関する研究を経て、現在注力しているのが、地域に密着しながら経営的課題の解決策を考える取り組みだ。山梨県の山梨英和大学、長野県の公立諏訪東京理科大学など、これまでのキャリアで赴任した各地において、実践的な調査と分析を実施してきた。

「拠点としている地域に貢献することは、地方大学の教員に課せられた使命だと考えています。私は2008年から2019年の約11年間にわたり、山梨英和大学に勤務していました。山梨県は農産業が盛んな一方で、若い人の農業離れが深刻化しています。しかし、あらゆる国や地域は、農業がなければ発展することはできません。そうした課題を解決するため、現場にも足を運びながら『農業の6次産業化』について研究を進めました」

「6次産業化」とは、一次産業としての農林漁業と、二次産業としての製造業、三次産業としての小売業をはじめとする事業との総合的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出すことを指す。農林水産省の推進によって6次産業化の流れが浸透しつつあるものの、各地域においては課題が残されていると韓准教授は分析する。

「6次産業化の重要性は農家の方々も理解していて、それに向けた取り組みも行われています。しかし、現状では各農家が個別に生産から販売までを行っている例がほとんどです。イメージしやすいのは、生産した農作物を道の駅などで販売するケースでしょう。販売価格に対して利益が少ない農作物については、小規模に6次産業化を進めたとしても、成功につながりづらいという問題があります。大きな設備投資をすることが困難ですし、販売ルートを広げるのにも限界があるからです」

農家間の連携を行政が支援する仕組みづくりが求められる

農作物の生産においてはプロフェッショナルの農家だが、事業を展開するノウハウは不足していることが多い。そうした状況で、個別の農家が6次産業化を成功させることは難しいだろう。そのため、流通のプラットフォームを提供できる農業法人や行政との連携を図ることが、今後の地域農業の発展には欠かせないのだという。

「複合体を形成して農業に取り組むメリットは、商品の流通を広げることだけにとどまりません。農業の効率を高めるためには膨大な設備投資が必要ですが、個別で実施すれば負担が大きくなってしまいます。しかし、複数の農家が連携し、ひとつの機械を共同で購入すれば、その負担を抑えることができます。行政の支援によって農家間のネットワークを結びつけることには、こうした設備面の費用を削減する効果も期待できるのです」

農業の6次産業化は、地域農業のシステムを根本から変えるパラダイムシフトを引き起こす。地域全体の成長に関わる施策だからこそ、個別の取り組みのみならず、行政や農業団体、農家間が一丸となった取り組みが求められるのだという。そこに経営学的な視点から根拠を示すことが韓准教授の役割なのだと語る。企業の海外進出について研究を重ねてきた韓准教授は、農産物のグローバル展開にひとつの可能性を見出している。

「地域農業に関わる研究の次のステップとして、海外展開にも目を向けなくてはならないと思っています。例えば、日本では数百円のリンゴが、台湾や中国では千円以上で売られていることがあります。日本で簡単に入手できるリンゴであっても、海外では珍しいギフトやブランド品としての価値が付加され、大幅に値上がりするのです。もちろん安定して供給できることが前提ですが、この大きなマーケットは見過ごすことができません。企業のグローバル展開において成否を分ける要因はどこにあるのか。そこに着目してきた研究成果を活かし、地域農業のさらなる飛躍に貢献したいと考えています」

経営分野に進んだきっかけは日本での語学研修

キャンパス内で佇む韓暁宏先生

中国で生まれ育った韓准教授は、師範大学の日本語学科に進学した。当時は中国が経済成長を遂げる前であり、急速に発展する日本との大きな差を感じていたのだという。大学を卒業後、日本語教員として大学に勤務することに。その際、日本での語学研修に参加する機会を得る。日本の急成長は知識としては学んでいたものの、現地で実際に目の当たりにしたことで、日本企業の経営を勉強しなくてはならないと実感した。

「本来であれば中国に戻るべきなのですが、日本で経営について学びたいという気持ちが強くなりました。そこで、桜美林大学の大学院に入学することを決意。当時から日本企業の海外進出に関心を持っていました。特に、日本企業の東アジアにおけるビジネスは、欧米地域と比較して明らかに異なる点が多いと感じていた。こうした違いを踏まえ、同一企業であっても国・地域によって戦略が異なるのかを研究したいと思いました」

幅広い貿易実務の経験が現在の研究のルーツにある

大学院を修了すると、そのまま日本に残って貿易会社に勤め始めた韓准教授。東南アジア・東アジアを中心に、海外との食品・日用品の輸出入、取引先の調査・契約、物流の手配、外国為替のリスク管理など、幅広い貿易実務に携わっていたという。現在の研究における現場を重視したスタイルも、当時の経験によって培われたものだ。

「国際貿易では多種多様な国や地域と取引しなくてはなりません。そして当然のことですが、それぞれの文化や商習慣はまったく異なっています。ビジネスを成功させるためには現地に合わせた工夫が求められるということも、実務経験があったからこそ気づけたことでした。貿易において何より重要なのは、相手との信頼関係です。自社の利益を確保しながらも、どこまで相手に歩み寄ることができるのか。現実に即した経営的な目線は、具体的に仕事をしてみないとわからなかったことだと感じています」

企業の持つ知的財産を付加価値に転換する方法を探りたい

実務経験で身に付けた経営学の目線を広く伝えたい。もともと中国で大学教員をしていた韓准教授にとって、教育の道に進むことは自然な流れだったという。以降、勤務先の地域における課題を経営学の知見で解決することを目指して研究に取り組んできた。公立諏訪東京理科大学では、地域の優良企業であるセイコーエプソン株式会社と連携し、製造業の海外進出について考察を深めた。今後はこの研究を軸に、日本企業の知的財産(特許)を付加価値に転換する方法を探りたいと考えている。

「日本はものづくりに強みを持つ国として知られてきましたが、時代の流れの中でその優位性も揺らぎつつあります。各企業がコア・コンピタンスとなる独自性を有しているものの、特許によって守ることだけが重視されており、その価値を十分に発揮できていない側面がある。もちろん知的財産を守ることは重要ですが、グローバル化の進む近年、その価値を活用する“攻める立場”への転換が求められると考えています。これまでの経験で培った地域や企業とのネットワークを活かしつつ、今後は日本企業と中国企業の知的財産をテーマに研究を進めたいと思っています」

教員紹介

Profile

キャンパス内で佇む韓暁宏先生

韓 暁宏准教授

Xiaohong Han

1968年中国生まれ。中国にて東北師範大学の日本語学科を卒業後、東北電力大学にて専任講師を務める。2000年桜美林大学大学院国際学研究科国際関係専攻博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。貿易実務に携わった後、山梨英和大学准教授、公立諏訪東京理科大学教授を経て、現職に至る。専門は国際経営、経営学。最近は、グローバル企業における無形資産を活用した付加価値創出に関心を寄せている。

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