2023年度の本学教員著作寄贈図書 | 桜美林大学図書館

2023年度の本学教員著作寄贈図書

混沌時代の新・テレビ論 : ここまで明かすか!テレビ業界の真実

著者名:田淵 俊彦
出版:ポプラ社
請求記号:699.21/Ta12

 本書は、37年間ドキュメンタリーやドラマの番組制作現場でつぶさにテレビを見続けてきた著者が、「忖度」「人材流出」「カネ」「総務省の圧力」「配信との攻防」などのテーマに沿ってその実態を伝え、数多くのデータや実際にあった事例をもとにテレビを解体し徹底的に分析することで、テレビ業界の「真の姿」をあぶり出すものである。
 テレビは2019年に広告収入においてインターネットに逆転され、いまや「オワコン」と揶揄されている。なぜ、テレビの権威は失墜してしまったのか。そして、本当にテレビは腐敗してしまったのか。それらの疑問を徹底的に解き明かしながら、「テレビの腐敗」「テレビの終焉」というデメリットや悪い面から見えてくる「メリット」や「よい面」にまで言及している。そして最終的にはテレビの未来を照射することで復活への提言をおこない、閉塞感のあるこの社会全体へのエールとしている。
 「テレビ論」「メディア論」「放送概論」の学びにもつながるため是非、桜美林大学の学生の皆さんにも読んでいただき、「逆転の発想」や「ものごとを両面から観る」「見えていない部分を想像する」ことの大切さを感じてほしい。

「海洋強国」中国と日・米・ASEAN : 東シナ海・南シナ海をめぐる攻防

著者名:佐藤 考一
出版:勁草書房
請求記号:319.22/Sa85

 本書は、2012年11月に「海洋強国」を目指すことを公表した中国政府の海洋政策と、それに対する東シナ海、南シナ海の周辺諸国の2021年までの対応の比較を中心にまとめた研究業績である。東シナ海、南シナ海の海洋紛争は、かなり厳しいところに来ている。本書の特徴は3点ある。第一に、中国の海洋政策を扱った文献は少なくないが、東シナ海と南シナ海の双方を比較して論じた研究書はあまりない。南シナ海で起きている衝突事件が、現在は比較的穏やかな東シナ海でも、いずれは起きるであろうことを考えれば、前者での事例を研究して対策を立てることは重要である。第二に、中国の海上法執行機関の抱えてきた問題と、その発展を体系的に追った書籍が少ない。本書では、5竜と呼ばれた中国の5つの海上法執行機関のうち、交通部海巡を除く4つが統合され、中国海警局が出来上がった過程を明らかにした。第三に、南シナ海でのアメリカの航行の自由作戦と、米中の主張の違いを追った論考が少ない。本書では、知り得る限りの事例を取り上げた。最後に著者は、日米とASEAN諸国が南シナ海において、荒ぶる中国を抑止するため、海洋状況の監視・管理・統制のための安全保障アーキテクチャーの建設が必要だと考え、海洋安全保障情報共有センターの開設を提案した。多くの日本国民にとって、海洋安全保障問題は身近な問題とはとらえられていないが、それは誤りである。桜美林大学の学生の皆さんにも、是非問題の重要性を認識して頂きたい。

中國周邊外交

著者名:蔡東杰, 韓碩熙, 青山瑠妙主編 ; 角崎信也,佐藤考一[ほか] 合著
出版:台北 五南圖書出版
請求記号:319.22/Sa17

 本書は、2020年9月18日に、台湾の国立中興大学人文社会科学前瞻研究中心(蔡東杰教授・主任)が主催し、日本の早稲田大学現代中国研究所(青山瑠妙教授・所長)と、韓国の延世大学国際学大学院(韓碩煕教授・常務副院長)が共催した、英語のオンライン・ワークショップの成果を取りまとめ、繁体字の中国語に翻訳して、台湾で出版したものである。報告者(執筆者)は11名で、筆者は青山所長の御厚意で、日本側の一員に加えて頂いた。  
 執筆テーマを見ると、中国周辺外交の新動向を扱ったPART1と、中国周辺外交のホットスポットとその状況を扱ったPART2に分かれている。前者では、習近平の外交政策に影響する認知領域の問題についての仮説、中国の空母政策と軍備競争の動向、中国海軍兵力の投射能力の発展と制約、中国の軍事と法執行のグレーゾーン領域での活動の分析、ポスト・コロナ期の世界の指導者を目指す中国とその問題点、が扱われる。後者では、中国の南シナ海政策:その目標と戦略、米国と中国の南シナ海紛争のきっかけ、中国の台湾への威嚇と侵攻の可能性の分析、習近平の台湾政策、バイデン主義の特徴とその対中政策の分析、等が扱われている。中国語を学んだ学生の皆さんに、一読をお薦めしたい。

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