2021年度の本学教員著作寄贈図書 | 桜美林大学図書館

2021年度の本学教員著作寄贈図書

こころに寄り添う災害支援

著者名:奥村茉莉子編集
出版:金剛出版
請求記号:369.3/O55

 本書は、職能団体である一社)日本臨床心理士会が東日本大震災から5年経過した2016年春に企画された。本書の執筆者は、災害を体験した人々や地域にとって、何が「こころに寄り添う」支援になりうるのかを模索しながら、さまざまな立場で東日本大震災、および熊本地震で実際の支援を行ってきた。
 災害時の心理的支援における基本的な理念、支援の仕組み、そして支援の実際について、実例をもとに学ぶことのできる書である。本書の構成は、以下の通りである。

・第I部 東日本大震災-発災の時に
・第II部 支援の組織化
・第III部 こころに寄り添う災害支援-心理職に求められるもの
・第IV部 さまざまな支援の考え方と技術
・第V部 想定される日本の災害に向けて

今後も起こりうる災害への支援を考える際の一助として手にしていただきたい。
池田美樹(リベラルアーツ学群)

中國新外交 : 台日韓三方比較視野

著者名:青山瑠妙, 韓碩熙, 蔡東杰主編 ; 游智偉 [ほか] 合著
出版:五南圖書出版
請求記号:319.22/A58

本書は、2020年9月18日に台湾の中興大学日韓総合研究センターと日本の早稲田大学現代中国研究所、韓国の延世大学中国研究院が共催した、中国外交の新展開に関するオンラインの国際ワークショップの結果を取りまとめたものである。内容は、第1部が中国外交研究の新視野、第2部が米中関係の変化、第3部が中国の周辺外交のホットスポットの分析の、三部構成となっている。筆者(佐藤考一・桜美林大学教授)は、早稲田大学の青山瑠妙・現代中国研究所所長の御厚意で、本ワークショップへの参加を許され、第3部で尖閣諸島問題を取り上げた。ワークショップは英語で行われ、論文草稿も英語で提出されたものを、繁体字の中国語に翻訳して、2021年10月に台湾の五南圖書出版公司から出版された。翻訳に若干、台湾側の政治的意図が見えるところがあるが(例えば、筆者が尖閣諸島と書いたものを釣魚台群島と訳す等)、台湾・日本・韓国の研究者が中国と自らの関係をどう見ているかがわかり、興味深い内容になっている。中国語を学ぶ学生諸君に一読を薦めたい。
佐藤考一(リベラルアーツ学群)

京劇名優・梅蘭芳と日本

著者名:袁英明
出版:桜美林大学出版会
請求記号:772.22/B14/E

20世紀初頭、日本は大戦景気の下で大量消費と大正ロマンを謳歌し、中国は辛亥革命後、各地に軍閥が割拠する動乱のなか、中日両国間は対華二十一か条を巡り軋轢が増大しつつありました。その中国から梅蘭芳という魅力的な人物が二度の日本公演で、天賦の美貌と努力に培われた演技力で京劇の舞台芸術を披露し、観客を魅了し、まさに一世を風靡しました。同時に演劇界関係者との文化交流は双方が大きな収穫を得ました。
本書では、私の梅蘭芳訪日公演に関する研究成果を次の構成で著しました。
序章で、梅蘭芳の日本公演に関する中日の研究の状況を紹介しました。
第一章で、実現に至るまでの背景を歴史・文化・演劇の視点で探りました。
第二章で、海外で最初の公演先に日本を選んだ経緯を分析し、二度の訪日公演のスケジュールを述べました。
第三章で、公演に対する評価と研究者の変化を論じました。
第四章で、成功要因を、外的側面、内的側面、伝統演劇の視点から考察しました。
終章で、梅蘭芳の日本公演の意味を検討しました。
全般を通じて、具体的史料、写真や絵画イラストにより理解しやすくしました。
本書が少しでも中日交流、文化交流に役立てば幸いです。
袁 英明(芸術文化学群)

観光・レジャーによるアジアの地域振興

著者名:山口有次, 戸崎肇編著
出版:芦書房
請求記号:689.22/Y24

2020年以降の高等教育政策を考える : グランドデザイン答申を受けて

著者名:大槻達也, 小林雅之, 小松親次郎編著
出版:東京 : 桜美林大学出版会
請求記号:377.21/O89

本書は、中教審グランドデザイン答申を受けた桜美林大学シンポジウムを踏まえ、登壇者や幅広い論者が、今後の高等教育政策について執筆したものです(肩書は当時)。
序章では、設置審会長や中教審委員等として高等教育政策を主導された佐藤東洋士本学園理事長・本学総長、私大協会長が、本書の主題等について記述。
第1部では、登壇の小林雅之本学教授(日本高等教育学会会長、東大名誉教授)、小松親次郎同(元文科審、現駐コスタリカ大使)、中教審大学分科会長の永田恭介筑波大学長・国大協会長、奥野武俊元大阪府立大学長・元公大協会長、清家篤私学事業団理事長(前慶應義塾長、元私大連会長)、北山禎介三井住友銀行名誉顧問(前中教審会長)に加え、畑山浩昭本学学長、大槻達也本学教授(元国立教育政策研究所長)が高等教育政策をめぐり論考。
第2部では、佐藤禎一元文部次官(元ユネスコ代表部大使、本学特別招聘教授)、日比谷潤子聖心女子学院常務理事(前国際基督教大学長)、丸山利昭名大准教授、石橋晶文化庁文化遺産国際協力室長(前文科省高等教育政策室長)が広範な視点から寄稿。
第3部資料編に続く後記では、田中義郎本学園常務理事・副学長(総合研究機構長)が大学の責務等について論究。
理事長、学長を始め桜美林大学関係者多数による本書が、今後の高等教育を考える一助になればと考えます。
大槻 達也(大学院)

舞曲扇林 : 日本舞踊基本と本質

著者名:丸茂祐佳編著
出版:東京 : 丸茂美惠子
請求記号:769.1/Ma55

『舞曲扇林』という歌舞伎最古の理論書があります。著者は河原崎権之助で、江戸・河原崎座を創設した人としても有名です。その権之助が実際に見聞したであろう知識を盛り込んでいる点で、野郎歌舞伎並びに元禄歌舞伎の研究に欠くことのできない重要な資料として高く評価されています。しかし、次の4点が解明されていませんでした。① 『舞曲扇林』の成立及び刊行年、②河原崎権之助の出自と経歴、③『舞曲扇林』に記された佐渡島歌舞伎系伝承の真意、④十六番小舞を含む文章化された身体表現の解読。それまでは歌舞伎研究の視点から『舞曲扇林』にアプローチしてきたのですが、『舞曲扇林』の内容のほとんどは舞踊のことです。そこで、舞踊の視点からアプローチして①~④ を解明したのが私の修士論文です。本書の大部分は『舞曲扇林』の精緻な【翻刻】【注釈】【考察】ですが、【解題】に修士論文の骨子をまとめてあります。ぜひ、学生の皆さんにも本書を紐解いていただき、今様芸(かぶき)が成立した当時の様子と、①~④の解答を楽しんでみてください。実は、③は今も研究を継続中で、本学の紀要等で発表しています。それが完結したら、また1冊の本にするのが私の夢です。
丸茂 美惠子(芸術文化学群)

本気で観光ボランティアガイド : 旅行者を必ず満足させるテクニック

著者名 渡辺康洋著
出版:東京 : 桜美林大学出版会
請求記号:689.6/W46

観光業はサービス業であり、接客業です。きれいな景色や雰囲気のある神社仏閣を見て楽しむことが観光の目的ですが、それをさらに楽しく、思い出に残る体験に変えるのは、人間である観光業の従業員です。とりわけ、観光ガイドや添乗員などです。ガイドは旅の出来を天候以上に左右すると言って良いほど重要です。そのようなガイドの仕事には何が求められるのでしょうか。良い旅だった!と旅行者を満足させる観光ガイドはどんなサービスを提供しているのでしょうか。
この本は、いわば「ハウツー」本です。仕事の仕方が書いてあります。ガイドや添乗員の仕事に関する本はこれまでもありましたが、どれも、例えば、浅草を紹介するときはどんな内容を説明すれば良いのかなど、話す内容について解説されたものが中心でした。しかし、私は自分の添乗員の経験から、お客様はガイドのよい話を聞いた時に満足するわけではなく、むしろ、面白さ、おもてなし、気遣い、配慮などに感動することを見てきました。
決してAIにはできないガイドの仕事。その具体的な方法をこの本は教えます。国内のガイドも、インバウンドのガイドもこの本で、感動する旅行者を増やしてほしいと願っています。
渡邉 康洋(ビジネスマネジメント学群)

評伝 藤枝静男: 或る私小説家の流儀

著者名:勝呂奏
出版:東京 : 桜美林大学出版会
請求記号:910.268/F56/S

『評伝藤枝静男—或る私小説家の流儀』は、そのタイトルに明らかな、私小説家である藤枝静男の詳細な評伝である。「或る」と冠したように、藤枝の私小説は従前のものとは劃然と異なっている。その大胆な挑戦に満ちた私小説を、断然と護り抜いたのが、藤枝の文学への「流儀」であった。本書の特色の一つは、藤枝のノートや日記、書簡などの多数の貴重な新資料に基づいて、その人生を描き出したことにある。また、その個性的な作品について、同時代評を踏まえて論究するのも特色に挙げられる。その他、同世代や後輩世代の文学者との豊かな交流にも触れ、藤枝という作家のあり方を浮かび上がらせる。
構成は「序章 作家の姿勢」「第一章 出生・幼少年期」に始まり、医師を兼業しての作家活動「第七章 『近代文學』派」「第八章 芥川龍之介賞候補・『犬の血』」、独自の私小説観を打ち立てる「第十章 芸術選奨文部大臣賞『空気頭』」、老年の達成を見せる「第十三章『藤枝静男著作集』・谷崎潤一郎賞『田紳有楽』」「第十四章 野間文芸賞『悲しいだけ』」、そして「第十六章 その晩年と終焉」によって結ばれる。藤枝静男の類い稀な魅力を語った、本格的な初の評伝である。
勝呂奏(リベラルアーツ学群)

アメリカ高等教育における学習成果アセスメントの展開 : 生成期から模索期へ

著者:山岸直司
出版:東京 : 桜美林大学出版会
請求記号:377.253/Y23

本研究は、高等教育での学びの成果を具体的に把握するための手段である学習成果アセスメントについて、その現象上の混沌の背後にある構造の解明を試みた。学習成果アセスメントの中でも、特に汎用的能力(ジェネリック・スキルズ)に関する標準化テストに着目し、世界の高等教育をリードするアメリカ合衆国での状況を考察した。検討した資料は、高等教育のみならず初・中等教育を含めて、関連する連邦政府の政策文書や声明、連邦法規、各種委員会議事録や報告文書、そして大規模調査の結果であり、それら資料の内容分析を行った。
検討の結果、学習成果アセスメントは、高等教育界のギルド的伝統に基づく内部専門家の論理と、消費者主義および説明責任要求を基盤とした社会・政策的論理の間で形成される対立構造に、アセスメントの測定技術が影響を与える政治プロセスであることが明らかとなった。高等教育界は、学習成果アセスメントに関する技術的知見を内部質保証を強めるベクトルとして活用する一方で、政府・産業界は同じ技術的知見を外部質保証の影響拡大を目指すベクトルとして活用していた。これら2つの相反するベクトルの相対的な強弱が学習成果アセスメントの実践に影響を与える動因として作用しており、真逆のベクトルが形成する緊張と対立の政治的なコンテクストの中に学習成果アセスメントは位置づけられた。
山岸直司(グローバル・コミュニケーション学群)

スウェーデン宣教師が写した失われたモンゴル

著者:都馬バイカル
出版:東京 : 桜美林大学出版会
請求記号:222.6/To13

本書は、1913年から1938 年まで四半世紀をモンゴル草原南部の地域で暮らし、医師として治療行為に従事しながら宣教活動をしていたスウェーデン宣教師エリクソン(Erik Joel Eriksson / 1890–1987)が、自ら撮影した写真およそ1300枚の中から、500枚あまりを選んで、それを整理し、分析し、かつ解説した写真集である。当時、交流のあった人々による記録と照合するという、考証作業が加えられたことが本書の特徴の一つである。
なお、20世紀前半のモンゴル社会、遊牧民の生活および風俗習慣などの研究において、貴重な参考資料となることは間違いない。
本書の構成は以下のとおりである。
はじめに
第1部 今は無きモンゴル一端
第2部 遊牧生活・家畜
第3部 男女の服装と女性の頭飾り
第4部 徳王と草原の人々
第5部 仏教信仰の実相
第6部 宣教したちの足跡
参考文献/おわりに
都馬バイカル(リベラルアーツ学群)

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