2019年度の本学教員著作寄贈図書 | 桜美林大学図書館

2019年度の本学教員著作寄贈図書

未完の独立宣言

著者名:在日本韓国YMCA編
出版:新教出版社
ISBN:9784400227120
請求記号:221.06/Z1

在日本韓国YMCA編『未完の独立宣言 2・8独立宣言から100年』(新教出版社、2019年)が刊行された。2・8独立宣言は、朝鮮の3・1独立宣言に先立つもの。この著作の「オビ」には、「1919年2月8日、帝都・東京で、朝鮮人留学生たちによって道破された『2・8朝鮮独立宣言』。その100周年を記念して東京と大阪で開催されたシンポジウムの記録と、事前におこなわれた連続講座の内容を完全収録。宣言を主導した留学生たちのネットワーク、当時の植民地統治のありよう、ジェンダーへの視点などを考究し、いまも尽きせぬ宣言の力と今後の課題を浮き彫りにする。」とある。
巻末には、2・8独立宣言書、3・1独立宣言書の朝鮮語原文と日本語訳文とが掲載されており、東京・千代田区にある「2・8独立宣言記念資料室」の案内もある。
太田哲男(本学名誉教授)は、上記の「連続講座」の一回分を担当した関係で、本書に「朝鮮独立運動と日本の知識人」という論文を寄せている。
太田哲男(桜美林大学名誉教授)

マーティン・ワイトの国際理論 : 英国学派における国際法史の伝統 (21世紀国際史学術叢書:4)

著者名:大中真著
出版:国際書院
ISBN:9784877913021
請求記号:329.02/O65

本書は、20世紀イギリスを代表する国際関係論学者であるマーティン・ワイトに焦点をあて、彼が展開した独特の「国際理論」を国際法史の観点から分析したものである。ワイトは今では、国際関係理論の1つである「英国学派」を代表する研究者とみなされている。また英国学派については、2000年前後から世界的に多くの研究が出されているが、国際法史と英国学派の関係を論じたものはまだ国内はもとより海外においても出されていない。筆者は、両者の関係性に注目し、LSE(ロンドン大学)に残されている膨大なワイト文書を一次資料として解読し、ワイトの国際関係理解に、国際法思想史がかなり程度の影響を与えていたのではないかと仮説を立て、その検証を本書の中で試みている。同時に、ワイトに至るまでのイギリスにおける国際関係論の系譜を第1部で、さらにイギリス、アメリカ、日本の国際法史研究を第2部で探究した上で、第3部でワイトの人生と思想を、さらに彼の国際法理解を現実主義、合理主義、理想主義の分類に従い、考察した。
本書の目的の1つは、国際関係論と国際法学とが遠く分離し過ぎていることに対する筆者の問題提起があり、どこまで筆者の意図が実現しているかどうかは、読者の判断に待ちたい。
大中真(リベラルアーツ学群)

学校体育事故への備え : 裁判所は何をどう見るのか

著者名:山口裕貴編著
出版:共同文化社
ISBN:9784877393366
請求記号:374.9/Y24

本書は「判例集」のような形式をとるテキストノート(判決と自分の予測との異同を考えるための書き込み型資料)になっています。中身には、器械運動や球技、多種目の運動部活動中の事故に係る裁判例(判決文)が、下線付き(重要と思われる箇所に私が付しました)で数多く掲載してあります。
読者は、原告(被害者)が何を求め、被告(義務違反者)は「そこで」「そのとき」「何を」すべきであったのかをぜひ熟考してみてください。学校に勤務する先生方も、日々の体育的活動における「事故発生可能性」(ヒヤリハット事象)に今一度、被告側の視点から注意を向けてみてください。ここで得られた法的知見を活かせば、事故の未然防止につながりますし、それが生徒のためになり、ひいては自分のためにもなります。事故が発生しないことが最も大事なことはいうまでもありませんが、体育的活動において事故はいわば「つきもの」です。けっして避けては通れない出来事です。
本書の内容が、教員になろうとする学生、そして現職の先生方が万全の体制で指導するための行動指針を構築する一助になってくれれば大変うれしく思います。
山口裕貴(健康福祉学群)

中国華北農民の生活誌

著者名:李恩民著
出版:御茶の水書房 2019/11
ISBN:9784275021151
請求記号:611.922/R32

中国の「華北」(英語ではNorth Chinaと表記する)とは、万里の長城以南から淮河・秦嶺以北の黄河中・下流域と、その支流一帯の地域を示す名称である。この地域は、現在約3億5000万の人口を擁するが、乾燥した気候と乏しい降雨量のため、しばしば旱魃に見舞われてきただけでなく、黄砂の浸蝕にも悩まされている。本書は1940年代に満鉄等が調査した村々への追跡調査(1990年代~2000年代初頭にかけて農民のライフヒストリーを中心に聞き取り調査)から得た証言をもとに農民の通婚圏と社交圏、一人っ子政策への対応、医療、移住(水不足と旱魃対策)、さらに農民の日本観等重要な問題について総合的に分析したものである。分析の際、日中戦争から土地改革、人民公社、大躍進、文化大革命、日中・日米の歴史和解、生産請負制、改革開放、経済の高度成長へと続く一連の重大な歴史過程において、村民が身をもって経験したことを政府の対農村政策の変革の文脈に置きながら検討し、そこで生活を営んできた農民の生活の実相を忠実に描く。
李恩民(グローバル・コミュニケーション学群)

AI時代を切りひらく算数 : 「理解」と「応用」を大切にする6年間の学び

タイトル:AI時代を切りひらく算数 : 「理解」と「応用」を大切にする6年間の学び
著者名:芳沢光雄著
出版:日本評論社
ISBN:9784535788763
請求記号:375.412/Y94

本書は子どもたちに算数をどのように教えるかを、以下のコンセプトをもって書いたものです。
・現行の学習指導要領との対応表を設ける一方で、指導要領が変わっても使用できるように範囲外の内容も扱う算数指導書です。
・算数に対する子ども達の興味・関心を高めるために、生きた題材の応用例をたくさん紹介しています。
・数学を学ぶ上で大切な基本的考え方を、「算数・数学に苦手意識を植え付けてはならない」~「AI時代に必要な算数・数学の学び」までの18項目に分けて1章で述べています。
・1対1の発想から自然数を導入し、小数、分数へと数の範囲が拡張していく流れを一歩ずつ述べています。
・四則計算の導入では、「ゆとり教育」の失敗を反省して述べています。
・AI時代に必須の素数や2進数なども扱っています。
・図形の諸概念が順に分かるように、長さ、面積、体積の順に述べています。
・図形の学習では多様な図が効果的であることを踏まえて、多くの図を積極的に用いています。
・量の概念では「速さ」と「割合」がとくに重要であり、「やり方」暗記教育ではなく、「理解」重視の立場に立っています。
・統計教育が重視されてきた流れを踏まえて、関連する用語の説明を詳しく述べています。
芳沢光雄(リベラルアーツ学群)

超高齢社会のリアル : 健康長寿の本質を探る

タイトル:超高齢社会のリアル : 健康長寿の本質を探る
著者名:鈴木隆雄著
出版:大修館書店
ISBN:9784469268676
請求記号:493.18/Su96

超高齢社会を迎えたわが国では、「健康寿命の延伸」が盛んに謳われている。しかしその裏に張り付いている「不健康寿命」の実態についてはほとんど語られることがない。本書では、「不健康寿命」のリアルや、その短縮化の困難な現実を紹介するとともに、疾病予防や介護予防という「予防」について、一体「いつまで」「何を」予防するのかという本質的な問題についても科学的データや根拠を基盤に詳しく述べている。 私たちはどんなに予防対策を万全に実行したとしても、誰もが経験する、「予防の限界」・「予防の先にある現実」、人として避けられない「生老病死」が存在する。実際、「予防の先にある現実」について、日本人には関心が薄く、超高齢社会において誰でもが覚悟しておかなければならないさまざまな、「不都合な真実」や「考えたくも無い現実」の出現に戸惑っている。本書は超高齢社会の高齢期の生き方に関するより本質的な問いかけの書でもある。誰もが長寿を楽しむことのできるようになった一方で、いかに満足した一生を終えることができるのか、すなわち「いかによく生き(QOL)、いかによく死ぬか(QOD)」という「死生学」も含め、超高齢社会の高齢期の生き方に関する本質的な問いかけをした書である。
鈴木隆雄(老年学研究科)

勇気ある義人 : 古在由重セレクション

タイトル:勇気ある義人 : 古在由重セレクション
著者名:古在由重著, 太田哲男編
出版:同時代社
ISBN:9784886838612
請求記号:121.6/Ko98

この本は、哲学者・古在由重(1901〜90)のエッセイなどを集めて、古在の思想と行動をうかがおうとしたものである。題名の「勇気ある義人」というのは、古在とも親交があった評論家の加藤周一(1919〜2008)が古在を評したことばである。
「勇気ある」というのは、古在が、1931年の満州事変以後の時代に、反戦の立場から言論活動をし、治安維持法違反で逮捕されたけれども、そのこころざしを曲げなかったことを意味し、また、1960年代から70年代前半にはヴェトナム反戦運動に尽力し、70年代後半から1984年まで、市民運動としての反核運動のリーダー的存在であったことをも意味する。
こうした運動の過程で、古在は、吉野源三郎(『君たちはどう生きるか』の著者)や中野好夫などととりわけ強く連携しながら「市民運動」に依拠しつつ活動した。本書には、吉野や中野についての古在の追悼文を収めたが、それによって、戦後の「市民運動」のあり方をうかがうことができる。編者は、この面について、巻末に「解説」を付けた。
また、そういう運動の話から離れても、古在のエッセイには軽妙洒脱な性格があり、興味深いエッセイ集になっている。
太田哲男(桜美林大学名誉教授)

「罪と罰」の受容と「立憲主義」の危機 : 北村透谷から島崎藤村へ

タイトル:「罪と罰」の受容と「立憲主義」の危機 : 北村透谷から島崎藤村へ
著者名:高橋誠一郎著
出版:成文社
ISBN:9784865200317
請求記号:983/D88/T

若きドストエフスキーは帝政ロシアの政治体制に抗して、農奴解放や言論の自由、裁判制度の改革を訴えて逮捕され、一度は死刑の判決を受けていた。大逆事件の後でこのことに言及した夏目漱石をはじめ、内田魯庵や北村透谷、そして島崎藤村はその重みをよく理解していた。
本書では「教育勅語」渙発後の北村透谷や『文学界』の同人たちと徳富蘇峰の『国民之友』との激しい論争などをとおして、権力と自由の問題に肉薄していた『罪と罰』を読み解き、この長編小説の人物体系などを深く研究して権威主義的な価値観や差別の問題を描いた『破戒』の現代的な意義に迫った。
その一方で、「天皇機関説」事件で日本の「立憲主義」が崩壊する前年の1934年に著した『罪と罰』論で「罪の意識も罰の意識も遂に彼には現れぬ」と主人公について解釈した小林秀雄の文学論の問題点を、彼の『破戒』論や『夜明け前』論を分析することで明らかにした。
さらに、徳富蘇峰の歴史観や英雄観との類似性に注目しながら小林秀雄の『我が闘争』の書評を分析することで、今も「評論の神様」と称賛されている彼の歴史認識の危険性も示唆した。
本書が文学の意義を再認識するきっかけとなれば幸いである。
高橋誠一郎(リベラルアーツ学群)

従業員—組織の関係性とウェルビーイング—「健康組織」形成の視点から—

タイトル:従業員--組織の関係性とウェルビーイング : 「健康組織」形成の視点から
著者名:松田与理子著
出版:晃洋書房
ISBN:9784771031074
請求記号:336.4/Ma74

「不機嫌な職場」と称される今日の日本の職場では、うつ病等のメンタルヘルス不調が深刻な社会問題となっている。従来の職業性ストレス研究では,量的・質的労働負荷や役割葛藤など個人の職務に関連するストレッサーが研究の中心であったが,近年は,従業員と組織の関係性や組織風土などのマクロ概念と従業員のウェルビーイングとの関連を調べる研究が求められている。また,従業員の健康や満足感と職場の業績や生産性は両立が可能なだけでなく,両者は相互に作用し,強化しあう関係であると考える「健康組織」が注目されている。本書は,組織と従業員の社会的交換関係が従業員のウェルビーイングに影響をもたらすと仮定し,これらの関連を説明する概念として,組織文脈に特有のポジティブな自己概念である組織内自尊感情,組織に対する否定的な態度である組織シニシズムに着目し,そのメカニズムを実証的に明らかにしたものである。さらに、「健康組織」の形成を視野に入れた介入案を検討しており,本邦で「健康組織」を推進していく際の資料を提供するものである。
松田チャップマン与理子(健康福祉学群)

方丈の猫

タイトル:方丈の猫
著者名:能祖將夫著
出版:七月堂
ISBN:9784879443519
請求記号:911.56/N97

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