シラバス詳細情報

開講年度 2012年度
開講学期 2012年度 秋学期
授業コード 35020
科目 社会言語学
教員氏名 宮副ウォン 裕子
授業種別 週間授業
授業概要 本科目では、言語教師として現場の教育実践に生かせる社会言語的知見や理論を学ぶ。
言語と社会のかかわり、社会的文脈における言語の実際使用データを分析・考察を行う。
到達目標 【授業の概要と到達目標】
本科目の受講生は、受講終了時に次のことができることが期待されている。

1)マクロ社会言語学とミクロ社会言語学における主な理論を学び、ことばと社会のかかわりをクリティカルに観察・記述・分析・考察できる。

講義で扱うテーマには、言語接触、言語管理、言語変種、言語の実際使用、接触場面の言語行動、二言語・多言語使用者の実態やアイデンティティ、バイリンガリズム、マルチリンガリズム、複言語・複文化主義、
二(多)言語併用、インターアクションの社会言語学などが挙げられる。

2)言語教師として、現場の教育実践に社会言語学的理論や考察をどのように生かすか、他の受講生とともに協働的かつクリティカルに討論できる。

3)言語教師として、メディア・リテラシーの理論と実践を学び、現場の教育実践に生かすことができる。
学習者が一市民として期待されている<クリティカルなメディアの読み取り>と、文脈に即したことばの学び
を身につけることができるような、効果的な課題や活動を設計することができる。

4)受講生は個人やグループで、文献講読の発表や討論を、双方向的かつ協働的に行う。

5)最終課題としてミニプロジェクトを計画・実行し、レポートにまとめる。他の受講生に向けミニプロジェクトの考察 結果を発表し、協働的に討論活動を執り行う。
ミニプロジェクト推進の具体的な方法は、受講者が興味を持つ社会言語学関連のテーマを選択し、研究課題を設定し、データを収集し、実証的かつ論理的に課題を解明する。
 
【長期的目標】
本科目受講後、受講生は下記のようなことを自律的かつ継続的に学び、言語教師として教育実践に生かすことが、長期目標として期待されている。

1)自分が興味を持つ社会言語学の領域について、継続して 最新の研究動向や情報を得るよう努める。

2)社会言語学に関する知見や理論、またメディアリテラシーの理論と実践方法を、言語教師として担当科目の「シラバス設計」 「教室内・教師外の活動設計」「教材開発」「言語運用能力の評価法」などに適切に応用し、教育実践の改善に役立てる。

3)受講者は「教師/研究者(teacher-researcher)」 および 「内省的実践者(reflective practitioner)」としての視点を持ち続ける。具体的には、次のようなことに取り組む。
  
(a) 教室内と教室外におよぶ学習者の「言語の学習および実際使用状況」を、その社会文化的な文脈に即して観察する。データの収集・分析・考察を行い、実証的な研究を計画し、遂行する。学習者のニーズや(言語の学習および実際使用にかかわるもの)を調査分析・考察し、その成果を教育実践に生かす。
  
(b) 上記のような実証的研究の成果を研究会や学会等で口頭発表する。あるいは、報告書や論文にまとめ、各種紀要や学会誌に投稿する。それにより、言語教育学の理論的構築または実践的研究の知見を、他の言語教育専門家と共有する。
  
 
授業計画 授業計画
第1回   9月25日(火)
   講義内容の紹介、課題について(文献講読、ミニプロジェクト)、
       本科目に期待することにかかわるアンケート(受講前学習契約アンケート)の実施、 
       属性とことば、変種
第2回  10月2日(火)
       言語行動、インターアクションの社会言語学、言語生活、言語接触、など
第3回  10月9日(火)
       メディア・リテラシーの理論と実践(1)
       【実践編】メディア利用の課題・活動設計 (Youtube利用の大衆文化クラスの課題設計)
第4回  10月16日(火)
       バイリンガリズム、マルチリンガリズム、二(多)言語併用、複言語・複文化主義
第5回  10月23日(火)
       二(多)言語話者の言語使用とアイデンティティ、コードスイッチ
第6回  10月30日(火)
       言語意識(attitudes, awareness, ideology...) 、言語計画、言語管理、言語政策、など
第7回  11月6日(火)
       メディア・リテラシーの理論と実践(2)(Youtube利用の大衆文化クラスの課題設計)
第8回  11月13日(火)
       メディア・リテラシーの理論と実践(3)(雑誌、映像リソース利用の大衆文化クラスの課題設計)
      
       【中間レビュー(15分: Mid-term review)】
        1−7週までの授業内容・進度について受講者全員と教員が意見交換および討論をする。
        その結果を後半(8−15週)の授業の改善のために役立てる。

第9回  11月20日(火)
       文献講読と討論(1)接触場面のインターアクション分析(会話上の交渉)
                   言語接触とスピーチコミュニティー
第10回  11月27日(火)
       文献講読と討論(2)言語と文化、属性とことば、変種
第11回  12月4日(火)
       文献講読と討論(3)言語学習、言語使用、アイデンティティ
第12回  12月11日(火)
       ミニプロジェクト発表(1)接触場面に関連するプロジェクト
第13回  12月18日(火)
       ミニプロジェクト発表(2)二(多)言語話者に関するプロジェクト
第14回  2013年1月8日(火)
       ミニプロジェクト発表(3)接触場面のインターアクションに関するプロジェクト
第15回  2013年1月15日(火)
       まとめ、学びの振り返りアンケート(受講後学習契約アンケート)の実施
       全学授業アンケートの実施
授業時間外学習 授業への積極的参加(討論など)のための準備(予習・復習など)  <授業時間外学習: 15時間>
先行文献の講読およびレジュメの作成                  <授業時間外学習:  20時間>
ミニプロジェクトの計画・遂行および研究レポートの執筆        <授業時間外学習: 30時間>
   合計:  65時間
テキスト 真田信治(編)(2006)『社会言語学の展望』くろしお出版
宮崎里司/ヘレン・マリオット(編)(2003)『接触場面と日本語教育−ネウストプニーのインパクト−』明治書院
Li Wei (ed) (2000) The Bilingualism Reader (2nd edition). Oxford: Routledge. 
参考書 田中春美・田中幸子(1996)『社会言語学への招待−社会・文化・コミュニケーション−』ミネルヴァ書房
中尾俊夫・日比谷潤子・服部範子(1997)『社会言語学概論−日本語と英語の例で学ぶ社会言語学』くろしお出版
ロング、D.・中井精一・宮治弘明(編)(2001)『応用社会言語学を学ぶ人のために』世界思想社
『講座 社会言語科学』全六巻 ひつじ書房
Gumperz, J. (1982)Discourse Strategies. Cambridge: Cambridge University Press. [井上逸兵他訳(2004)『認知と相  互行為の社会言語学』松柏社]
 
評価基準 1)授業時間の積極的な参加と貢献(第1〜15週)             20%
2)メディア利用の大衆文化クラスの課題設計               30%
2)論文講読の口頭発表(第8〜11週に発表)                20%
3)ミニプロジェクト口頭発表とレポート(第12〜14週に発表、提出)   30%
 
【評価基準】
課題設計、論文講読、ミニプロジェクトがきわめて優秀で、授業への参加・貢献が積極的=A
課題設計、論文講読、ミニプロジェクトが優秀で、授業への参加・貢献が積極的=B
課題設計、論文講読、ミニプロジェクトは優秀だが、授業への参加が消極的=C
課題設計、論文講読、ミニプロジェクトは要求を満たすものだが、授業への参加が消極的=D
上記いずれもが要求を満たさない場合=F

【注意事項】
1)欠席が授業回数の3分の1を超えた者は、評価の対象としない。
2)課題(ミニプロジェクトなど)の提出が指定された締め切りに遅れた場合、原則として、評価の対象としない。

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最終更新日 2012/08/29