シラバス詳細情報

開講年度 2012年度
開講学期 2012年度 秋学期
授業コード 34211
科目 言語習得研究
教員氏名 宮副ウォン 裕子
授業種別 週間授業
授業概要 本講義科目の学習項目および活動は、受講生が「言語教育に携わる教師・研究者」として、言語学習・習得・社会化にかかわる理論を理解し、教育実践への応用に生かすことができるよう、設計されている。
到達目標 【到達目標】受講生は、この科目の受講終了時に、次のようなことができることが期待されている。

1)第一言語(母語)習得の理論が理解できる。
2)第二言語、外国語、継承語などの習得理論が理解でき、それに基づき、効果的な言語学習法・教授法について考察・討論できる。
3)第一言語、第二言語、外国語、継承語などの具体的な習得事例について考察・分析できる。
4)第一言語、第二言語、外国語、継承語などの維持、喪失にかかわる具体的な事例について、考察・分析できる。
5)海外の大学院生とともに「ヴァーチャル映画討論会活動」に参加し、メールとスカイプ会議を通して、「第一言語、第二言語、外国語としての」日本語を実際場面で使用する。収集した「実際使用データ」を分析・考察し、レポートが作成できる。
6)第2言語習得(SLA)研究の方法論を理解し、その理論的枠組みを適切に援用し、データの分析・考察ができる。
7)上記1)-4)のテーマについて、ミニプロジェクトを計画し、実証的なデータを収集し、6)で学んだ理論的枠組みレポートが作成できる。

【長期的目標】
本科目受講後、受講生は下記のようなことを自律的かつ継続的に学び、言語教師として教育実践に生かすことが、長期目標として期待されている。

1)自分が興味を持つ言語習得研究の領域について、継続して 最新の研究動向や情報を得るよう努める。

2)言語習得研究に関する知見や理論を、言語教師として担当科目の「シラバス設計」 「教室内・教師外の活動設計」「教材開発」「言語運用能力の評価法」などに適切に応用し、教育実践の改善に役立てる。

3)受講者は「教師/研究者(teacher-researcher)」 および 「内省的実践者(reflective practioner)」の視点を持ち続ける。具体的には、次のようなことに継続して取り組む。
  
(a) 教室内と教室外におよぶ学習者の「言語の学習および実際使用の状況」で、特に興味を持った点に着目し、社会文化的な文脈に即して観察や予備調査を試みる。さらに、研究課題の設定、先行研究のまとめ、調査などを経て、適切な理論的枠組みを用いて分析・考察を行い、研究課題の解明を行う。その成果が、学習者の言語学習・習得にかかわるニーズや問題点の解明に役立つように、教育実践の現場に生かすよう努める。
  
(b) 上記のような実証的研究の成果を研究会や学会等で口頭発表する。あるいは、報告書や論文にまとめ、各種紀要や学会誌に投稿する。このような方法で、言語教育学の理論的構築または実践的研究の知見などを、他の言語教育専門家と共有する。
授業計画 【具体的な学習項目】
第1回 2012年9月20日(木)  
      講義課目の紹介、課題(ヴァーチャル映画討論会、ミニプロジェクト)について説明
      この科目に期待することについてアンケート(学習契約アンケート)の実施
      全受講生は第1週から第12週まで、ヴァーチャル映画討論会に参加する。
      【実践編】メディア利用のことばの学習(1) 短編アニメ『つみきのいえ』
第2回 9月27日(木) 
      第一言語(母語)習得(FLA)、第二言語、外国語、継承語の習得(SLA) 
      言語の習得と喪失、言語交替など
      【実践編】メディア利用のことばの学習(2) 映画『バブルでGo』
第3回 10月4日(木)
      言語を通した社会化(Language Socialization)、接触場面の研究
      メディアを利用した言語学習、ITを利用した遠隔接触場面の言語コミュニケーションなど
      【実践編】メディア利用のことばの学習(3) 映画『おくりびと』
第4回 10月11日(木)
      第二言語習得(SLA)理論、第二言語の発達過程、
      ヴィデオ視聴(横浜市立盲学校の試み)
第5回 10月18日(木)
       言語習得の諸要因
       環境要因(社会文化的背景、社会のニーズ、言語の地位・・・)
       学習者要因(年齢、知性、適性、認知スタイル、学習ストラテジー、動機付け・・)
言語学習に関する自分史(LLH: language learning history) によるデータ収集と考察
       社会文化的要因、社会経済的要因など
第6回 10月25日(木)
       SLA研究の方法論(1)言語学習ヒストリー(データ収集法、分析と考察)
       文献講読発表(1)
第7回 11月8日(木)
       SLA研究の方法論(2)学習継続の動機(データ収集法、分析と考察)
       文献講読発表(2)
第8回 11月15日(木)
       SLA研究の方法論(3)多言語職場における会話上の交渉
       文献講読発表(3)  

    【中間レビュー(15分: Mid-term review)】
    1−7週までの授業内容・進度について受講者全員と教員が意見交換および討論をする。
    その結果を後半(8−15週)の授業の改善のために役立てる。

第9回 11月22日(木)
       SLA研究の方法論(4)接触場面の言語管理
       文献講読発表(4)
第10回 11月29日(木)
       ミニプロジェクトの口頭発表(1)
第11回 12月6日(木)
       ミニプロジェクトの口頭発表(2)
第12回 12月13日(木)
       ミニプロジェクトの口頭発表(3)
第13回 12月20日(木)
       ミニプロジェクト乃口頭発表(4)
第14回 2013年1月10日(木)
       教育実践への応用 教室内のSLA、教室外のSLA
       教師の役割、学習者の責任など  
第15回 2013年1月17日(木)
       学習のまとめと振り返りアンケート(受講後学習契約アンケート)の実施、
       今後の課題(教育面、研究面)について討論、
       全学授業アンケートの実施
授業時間外学習 ヴァーチャル映画討論会への積極的参加と内省記録の執筆      <授業時間外学習:40時間>
先行文献の講読とレジュメの作成                       <授業時間外学習:10時間>
ミニプロジェクトの計画と遂行、研究レポートの執筆            <授業時間外学習:20時間>
                                                     合計: 70時間
テキスト 小柳かおる『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワーク、2005
迫田久美子『日本語教育に生かす第二言語習得研究』アルク、2002.
宮副ウォン裕子・吉村弓子(2005)「ヴァーチャル教室の「日本の社会・文化」にかかわる意見の調整」高橋リタ他(編) 『日本研究と日本語教育におけるグローバルネットワーク』第2巻、281−292.

・ワークシートおよび資料
・受講生は各自、新聞、雑誌、インターネット、テレビなどからデータ収集を行う。
 
参考書 岡崎眸・岡崎敏夫『日本語教育における学習の分析とデザイン−言語習得過程の視点から見た日本語教育−』
  凡人社、2001
鈴木みどり(2001)『メディア・リテラシーの現在と未来』世界思想社
白井恭弘(2004)『外国語学習に成功する人、しない人−第二言語習得論への招待』岩波科学ライブラリー
本橋哲也(2006)『映画で入門 カルチュラル・スタディーズ』大修館書店
第二言語習得研究会 『第二言語としての日本語の習得研究』創刊号〜最新号
評価基準 【評価対象の課題】
【課題1】 ヴァーチャル映画討論会への参加と内省記録レポート              (60%)
      (1a) ヴァーチャル映画討論会への参加(40%、第1週から13週まで参加)
          映画を鑑賞し、映画批評を国内外の大学生・院生と、メール、テレビ会議を通して討論する
          第1週〜第13週まで積極的な参加が期待されている
      (1b) 内省記録レポート(20%、2000字程度、第15週に提出)
          ヴァーチャル映画討論会に参加した内省記録をまとめる。
          たとえば、遠隔接触場面の言語コミュニケーションに参加した際の意識、心理面の変化、
          言語面の特徴(配慮表現、メタ言語表現)、話題、言語教育への示唆などに着目した記録。

【課題2】 論文講読とミニプロジェクト・レポート                        (40%)
       ミニプロジェクトに関連した先行文献を講読し、口頭発表(20%、第6〜9週に発表)
       ミニプロジェクトのレポートを執筆する (20%、2500字程度+添付資料、第10〜12週に提出)。
       <テーマ>
        1)言語の習得・学習・社会化に関するテーマ 
        2)「言語学習にかかわる自分史」によるデータ収集とその考察など
        
【評価基準】
二つの課題がともに きわめて優秀=A
一つの課題はきわめて優秀だが、もう一つの課題は優秀=B
二つの課題がともに 優秀=C
一つの課題は優秀だが、もう一つの課題が要求を満たしていない=D
二つの課題とも、要求を満たしていない=F

【注意事項】
1)欠席が授業回数の3分の1を超えた者は、評価の対象としない。
2)課題の提出が、指定された締め切りに遅れた場合、原則として、成績評価の対象としない。
URL
最終更新日 2012/08/29