開講年度 | 2012年度 |
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開講学期 | 2012年度 秋学期 |
授業コード | 29475 |
科目 | アメリカの経済 |
教員氏名 | 塙 武郎 |
授業種別 | 週間授業 |
授業概要 | 本講義では、まず前半(1~15回)では、アメリカ経済社会のダイナミックで華やかな側面と、都市部における貧困や劣悪な側面とをそれぞれ検討し、ヨーロッパ社会にも見られない、アメリカ社会特有の個人の「自立」、「自助」、「小さな政府」を重視する自由主義の経済思想も視野に入れながら概説する。 また後半(16~30回)では、21世紀初頭グローバル化する世界経済のなかでアメリカ経済の現状を整理し、その中で、アメリカ経済の発展の牽引役を担てきた自動車産業(GM)、1990年代以後に急成長したIT産業(インテル)、軍需産業などの各分野を扱いながら、その特徴と課題を検討する。 講義の最大の特徴は、米PBS等のニュース番組やディスカッション等を教材として扱いながら、21世紀アメリカ経済の現状と課題を、包括的かつリアルに検討することにある。 |
到達目標 | 本講義の目標は、アメリカ経済を貫徹する普遍的理念としての自由と自立というものが、現実の経済活動や政府の政策にどのように反映され、またどのような課題を内包しているのかを理解し、それらの実態について自分の考え方を構築できることを目標とする。 そのためには、共和、民主の両党の経済政策の基本的枠組みを理解したうえで、連邦制(分権システム)や「小さな政府」の制約の中で、個人または民間部門が主体となって経済活動を展開することがアメリカでは最優先されていることを理解することが重要である。 |
授業計画 | 1.9月20日 「超大国アメリカ」の位置 ○最も豊かな国、最も貧しい国アメリカの基本構造 2.9月20日 「アメリカ・モデル」と市場論理と民主主義 ○市場経済の透明性の担保 ○「政府の役割」再考の枠組み 3.9月27日 自由、自立、自助努力と市場経済 ○「小さな政府」の現代的本質 ○レーガン演説の事例 4.9月27日 グローバリゼーションと自由経済(その1) ○「ブレトン・ウッズ体制」 ○IMF・GATTからWTOへの移行 5.10月4日 グローバリゼーションと自由経済(その2) ○ウォール街の苦悩、財務長官の役割の特殊性 ○サブプライムローン問題 6.10月4日 グローバリゼーションと自由経済(その3) ○デトロイト自動車産業の崩壊 ○オバマ政権による救済とUAW 7.10月11日 グローバリゼーションと自由経済(その4) ○IT経済の成長と「ウィンテル体制」 ○「クリエイティブ・インダストリー」とは 8.10月11日 アメリカ産業構造と労働政策(その1) ○学歴と所得 ○就業構造変化と労働編成 9.10月18日 アメリカの産業構造変化と労働政策(その2) ○製造業の衰退 ○サービス産業の「細分化」 10.10月18日 アメリカの産業構造変化と労働政策(その3) ○1997年以後の福祉政策の変容 ○「内なるグローバル化」への対応 11.10月月25日 アメリカの産業構造変化と労働政策(その4) ○ワーキング・プア問題 ○ノースカロライナ州の事例 12.10月25日 都市問題と貧困(1) ○シカゴの事例 13.11月8日 都市問題と貧困(その2) ○ニューヨークの事例 14.11月8日 都市問題と貧困(その3) ○デトロイトの事例 15.11月15日 アメリカ経済の基本構造と20世紀を通じた諸課題 ○前半15回の総括 16.11月15日 21世紀グローバル化の発信と受容 ○「内なるグローバル化」という視座 ○超大国アメリカの苦悩 17.11月22日 3億人「移民国家」の出現(1) ○「アメリカン・ドリーム」の現状 ○連邦政府と移民政策 18.11月22日 3億人「移民国家」の出現(2) ○アリゾナ州の移民規制法 ○共和党保守と州政治 19.11月29日 アメリカ産業構造変化と移民労働者(1) ○製造業の衰退 ○低賃金・単価労働者の急増 20.11月29日 アメリカ産業構造変化と移民労働者(2) ○IT産業の成長と移民労働者の変化 ○バージニア州フェアファックスの事例 21.12月6日 アメリカ産業構造変化と移民労働者(3) ○金融危機(サブプライムローン問題)の総括 ○オバマ政権の金融規制強化 22.12月6日 アメリカ産業構造変化と移民労働者(4) ○連邦政府と研究開発への財政支出 ○冷戦下の軍産複合体・軍需産業の構造 23.12月13日 軍需産業と研究開発(1) ○戦時経済における「価格統制」 ○ボーイングの事例 24.12月13日 軍需産業と研究開発(2) ○大学と研究開発(MITの事例) ○冷戦と軍産複合体 25.12月20日 軍需産業と研究開発(3) ○軍需から民需への技術移転 ○カリフォルニア州エルセグンド郡の事例 26.12月20日 オバマ改革と内政政策(1) ○景気刺激策としての公共事業 ○セントルイスの事例 27.1月10日 オバマ改革と内政政策(2) ○ニューヨークの交通政策 ○就労促進と通勤手段 28.1月10日 オバマ改革と内政政策(3) ○シカゴの交通政策 ○政府部門における自治と自立と規律 29.1月17日 「2012年大統領選」と経済政策 ○2012年大統領選と大統領就任演説の解説 30.1月17日 講義全体の総括 アメリカ経済を学ぶ視点・意義の再認識、グローバル化と格差社会の問題 |
授業時間外学習 | ・アメリカ社会や経済システムに興味があることを前提として講義を進めるが、新聞・ニュース等でアメリカ経済に関する時事的な事柄を常に自分の視点と問題意識でフォローすること。 |
テキスト | 地主敏樹・加藤一誠・村山裕三編(2012) 『現代アメリカ経済論』 ミネルヴァ書房。 |
参考書 | 塙武郎(2012) 『アメリカの教育財政』 日本経済評論社。 |
評価基準 | 期末試験(70%)、出席点(20%)、授業への貢献・姿勢(10%)の総合的評価による。 ※上記「出席点」に関して、ランダムに5回出席をとり、このうち3回以上出席しない場合は期末試験を受験することはできない。 A:特に優秀な成績 B:すぐれた成績 C:一般的・標準的な成績 D:なんとか合格水準に達する成績 F:不合格 |
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最終更新日 | 2012/08/24 |