開講年度 | 2012年度 |
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開講学期 | 2012年度 秋学期 |
授業コード | 28303 |
科目 | 中国文字学研究 |
教員氏名 | 寺井 泰明 |
授業種別 | 週間授業 |
授業概要 | ◎漢字について、しっかりした知識と考え方を身につけてもらう講義です。 【授業の目標】 1.文字、特に漢字の歴史をたどりつつ、字形の構造や字音・字義との関係などについての理解を深める。 2.漢字の本質的な理解に基づいて、現代の漢字政策や漢字の将来に対する視点を獲得する。 3.漢字の背景にある文化・文明(主に中国の古代文化)について理解を深める。 【授業の進め方】 1.多くの視覚教材を利用して、講義形式を中心にすすめる。 2.レベル300に配当された科目であるが、ほとんどの人にとって新しい学習分野になると思われるので、特別の知識を事前に必要とはしないように授業を進める。 3.途中で数回、辞書を調べてくるなどの課題を出す。 4.毎回授業を振り返り、「出席カード」に代えて「出席ノート」を提出してもらう。また、講義のテーマの区切りにおいて、「小テスト」(全部で4回)を行う。 5.講義内容に関連した自由な調査・研究を奨励する。 |
到達目標 | 1.文字一般について、定義や分類などができる。 2.漢字の歴史(甲骨文・金文から篆書、隷書、行書、楷書などに至るまで)について、大きな流れを説明することができる。 3.個々の漢字について、その字形の成り立ちや本来の意味などを、辞書類を利用して調べ、発表することができる。 4.漢字の字形からの分類(象形、指事、会意、形声など)について、説明し教えることができる。 5.漢字の形と音と意味の関係について、特に会意字の誤った解釈や形声字の成り立ちについて説明することができる。 6.中国古代の文物(甲骨、青銅器、玉器、石碑、簡冊、印章など)について、より深く理解し鑑賞することができる。 7.日本での漢字の受容(漢音・呉音・唐宋音と、万葉仮名から平仮名・片仮名へ)について、説明し教えることができる。 8.現代の日本で使われている漢字の字形・字体について、また、あるべき姿について、意見を述べることができる。 |
授業計画 | ◎各回の主題、話題の主なものは以下のとおり。但し、受講生の関心や理解度を確認しながら、適宜変更することがある。 第1回 授業全般についての説明 ・講義内容、授業の進め方、成績評価などについて。 ・課題、レポート、考査、質問などについて。 ・地図、年表、参考資料などについて。 ・「文字学」とは。 第2回 文字の定義 ・文字とは何か? 「〃」「々」「〒」「♪」「♂」「(^o^)」は文字か? ・世界の言語と文字 (ヒエログリフ、楔形文字、マヤ文字、トンパ文字、女書、梵字、アラビア文字、・・)。 第3・4回 文字の分類 ・表意文字・表語文字、表音文字。 ・漢字の字数とローマ字の字数。 ・漢字の暗記は過重負担か? ・漢字廃止論と漢字検定、クイズ番組。 ・中国の文字遊び。 第5回 表語文字から表音文字へ ・ローマ字も象形文字だった! ・ヒエログリフ解読の鍵。 ・漢字の表音化 第6~9回 六書(象形、指事、会意、形声、転注、仮借) ・義務教育教科書の六書(復習)と問題点。 ・象形字・会意字の面白さと俗説。 「来」は麦(ムギ)、「万」はサソリ。 「即」と「既」、「従」と「背」。 「人」「食」「髪」「忘・忙」「幸」「武」「米」「薬」「絆」「聴」・・。 ・第1回~第9回の振り返り、「小テスト」(1回目)。 第10・11回 文字の発生、漢字の発生 ・文字は神が作ったものか? ・神意を表す文字。 ・中国の王朝史(復習)。 第12~15回 甲骨文字・金文 ・字形から見える三千年前の文化。 ・「象」と「為」、 「貝」と「宝」と貯貝器。 ・十干十二支と数字、 「廿」は20、「世」は30。 ・「王」も「父」も斧(おの)の一種。 ・「正」と「止」、 「首」と「道」「縣」、 「國」と「成」「戉」、・・。 ・酒による陶酔(神がかり)と亀甲での占い。 ・青銅器作成と文字への執念。 第16~18回 形声字の役割 ・文字一般の表音化傾向と形声字。 ・「止」と「歯」、 「華」と「花」。 ・「自」と「鼻」、 「其」と「箕」。 ・「青」と「晴」「睛」「清」「精」・・。 ・「凡」と「帆」「汎」「風」「鳳」・・。 ・第10回~第18回の振り返り、「小テスト」(2回目)。 第19・20回 石碑と篆書、木簡・竹簡と隷書 ・中国の王朝史(復習)。 ・春秋戦国の文字。 ・始皇帝・李斯と焚書坑儒。 ・西域や古墓(曾侯乙墓、馬王堆墓)からの出土品。 第21・22回 最古の辞書『爾雅』と『説文解字』 ・字形と字義。 ・漢字辞典の利用と解字。 ・現代日本の漢和辞典。 第23回 紙と行書 ・粘土板、パピルス、羊皮紙、紙の発明。 ・蘭亭序、千字文。 第24・25回 印刷術と楷書 ・封泥、印鑑、拓本、印刷と書体。 ・第19回~第25回の振り返り、「小テスト」(3回目)。 第26・27回 漢字の日本への伝播 ・字音(呉音、漢音、唐宋音)と字訓。 ・「馬」「梅」「菊」「銭」「簡」「文」の訓は? ・未曾有、剽軽、眉間、功徳、乞食/瓦斯、護謨、檸檬、曹達/木槿、銀杏、無花果、豌豆、南瓜、 菠薐草、饂飩、塩梅、煎餅、饅頭。 ・万葉仮名「孤悲」と「不尽」。 ・「掻く」から「書く」へ。 ・「井」と「丼」(天井と天丼)。 ・国字と国訓。 ・「椿」はツバキにあらず? 「蓬」はヨモギとは限らない? 第28・29回 中国の簡体字と繁体字、日本の常用漢字体、異体字 ・「醫」と「医」、「從」と「従」と「从」、「鹽」と「塩」と「盐」。 ・「辺」「邊」「邉」、 「崎」「嵜」「埼」「碕」、 「島」「嶋」「嶌」。 ・「しんにょう」の点の数。 ・第26回~第29回の振り返り、「小テスト」(4回目)。 第30回 総括 ・全体の振り返りと評価方法の説明。 ・「自由研究」に関する個別指導。 |
授業時間外学習 | 1.毎回の授業に出席し、復習を怠りなく行うこと。(多くの資料を配付するが、自らのノートとともに十分に整理しておくこと。) 2.授業内容に限らず、漢字・漢語について不審な点、疑問を感じたことは自ら調べたり質問したりして、知識を整理しておくこと。 3.上記2.も含めて、漢字・漢語について調べたことは「自由研究」の成果としてレポートすること。 |
テキスト | ・配布するプリント資料を中心とする。 ・その他、パワーポイント、ビデオ、DVD、図録などの映像・画像を適宜利用する。 |
参考書 | 阿辻哲次『図説漢字の歴史』大修館書店 藤枝晃『文字の文化史』岩波書店 加藤道理『字源物語』明治書院 水上静夫『甲骨金文辞典』雄山閣出版 藤堂明保『漢字語源辞典』学灯社 白川静『字統』平凡社 段玉裁『説文解字注』上海古籍出版 尾崎雄二郎編『訓読説文解字注』東海大学出版会 ・その他、多数あり。必要に応じて随時紹介する。 ・三到図書館(指定図書など)、寺井オフィス、公立図書館、博物館などを積極的に利用すること。 |
評価基準 | ・以下の3件について、授業の目標に従って採点する。 ①毎回の「出席ノート」、②4回の「小テスト」、③授業内容にかかわる「自由研究」 ・①に30点、②に60点、③に10点を配点し、合計の満点を100点として合算し、各自の得点とする。 ・評価基準: A=特に優れた成果(上記得点が80点以上)をあげた場合。 B=優れた成果(上記得点が70~79点)をあげた場合。 C=一定程度の要求を満たす成果(上記得点が60~69点)をあげた場合。 D=合格と認められる最低の成果(上記得点が50~59点)しかあげられなかった場合。 F=合格と認められる最低の成果すらあげられなかった場合(上記得点が49点以下)。および、3分の1以上を欠席した場合。 |
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最終更新日 | 2012/08/08 |