シラバス詳細情報

開講年度 2011年度
開講学期 2011年度 秋学期
授業コード 34004
科目 通信・遠隔教育論
教員氏名 鈴木 克夫
授業種別 隔週奇数
授業概要  通信教育および遠隔教育について制度的、歴史的な視点から検証し、高等教育の中でそれが果たしている役割を考察する。通信教育および遠隔教育の制度的および歴史的な位置づけを正確に理解するとともに、その在り方について自分自身の明確な考え方や問題意識を持てるようになることを到達目標とする。
 そのため、明治の講義録から昭和の通信添削ビジネス、さらに現代のeラーニングに至る通信教育について、教育社会学やメディア史、あるいは宗教学やジェンダーといった様々な立場から描出した挑戦の書である『ラーニング・アロン—通信教育のメディア学』(佐藤卓己・井上義和編、新曜社:2008年)をテキストとして取り上げ、その講読と討議を行う。
 履修者は、毎回、テキストの該当個所を熟読して参加することが求められる。
授業計画  第1回(9月27日(火)6限)
 授業の進め方に関するガイダンスを行った後、「はじめに—通信教育のメディア幻想を超えて」を講読する。テキストの意図と問題設定について考察する。
 第2回(10月11日(火)6・7限)
 「第1章 蛍雪メディアの誕生—勉強立身熱と講義録ブーム」を講読する。明治・大正期の職業資格(試験)と教育資格(学歴)の関係史を軸に、「講義録」という独学メディアの成立から展開に至る歴史的、社会的条件を考察する。
 第3回(10月25日(火)6・7限)
 「第4章 福祉としての通信教育—勤労青年から引きこもりへ」を講読する。国会議事録の分析を通して、戦後日本の教育政策における通信教育の位置づけを明らかにする。
 第4回(11月8日(火)6・7限)
 「第5章 日本宗教と通信教育—佛教大学と創価大学の躍進」を講読する。日本の各宗各派の通信教育への関わり方を宗教家・信者養成、宗教知識教育、一般通信教育の三形態から考察する。
 第5回(11月22日(火)6・7限)
 「第6章 社会通信教育の変容と「改善の知」の系譜—「地方改良」から「ビジネス・キャリア」へ」を講読する。職業実務に関する社会通信教育の戦後史について考察する。
 第6回(12月6日(火)6・7限)
 「第7章 蛍雪時代からベネッセの時代へ—受験生的公共性の構造転換」を講読する。1920年代以降の受験産業興亡史を軸に、勉強のインデックス・メディア(受験雑誌・ラジオ講座・通信添削)からラーニング・アロンの形態変化を考察する。
 第7回(12月20日(火)6・7限)
 「第11章 テクノロジーは孤独な学習を可能とするか—『eラーニング』の登場とその展開」を講読する。通信教育の最新系であるeラーニングについて、「情報化社会」をめぐる問題との共通性も踏まえて考察する。
 第8回(1月17日(火)6・7限)
 履修者は、テキストの講読を通じて得た通信教育および遠隔教育に関する知見をそれぞれ独自の着眼点からまとめて発表し、その後、総括討論を行う。
テキスト 佐藤卓己・井上義和編『ラーニング・アロン—通信教育のメディア学』新曜社、2008年.
参考書  ①ロバート・D・パットナム、柴内康文訳『孤独なボウリング—米国コミュニティの崩壊と再生—』柏書房、2006年.
 ②ロバート・D・パットナム、坂本治也・山内富美訳「ひとりでボウリングをする—アメリカにおけるソーシャル・キャピタルの減退」宮川公男・大守隆編『ソーシャル・キャピタル—現代経済社会のガバナンスの基礎—』(第2章)東洋経済新報社、2004年.
 ③竹内洋「苦学と講義録の世界」『立志・苦学・出世—受験生の社会史—』(第5章)講談社現代新書、1991年.
評価基準  毎回の事前準備、授業における議論・討論への参加状況、最終回での口頭発表、および以下の2点の達成度を総合的に判定して評価する。
 ①通信教育および遠隔教育の制度的および歴史的な位置づけを正確に理解できたか。
 ②通信教育および遠隔教育の在り方について、自分自身の明確な考え方や問題意識を持てるようになったか。
 A: 90%(特に優秀な成績)、 B: 80%(優れた成績) 、 C: 70%(一応その科目の要求を満たす成績)、D: 60%(合格と認められる最低の成績)、 F: 59%以下(不合格)
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備考
最終更新日 2011/08/05