シラバス詳細情報

開講年度 2011年度
開講学期 2011年度 秋学期
授業コード 30526
科目 大学職員論
教員氏名 篠田 道夫
授業種別 集中講義
授業概要 「大学職員論」は、職員の大学における位置と役割、機能とその育成についての基本的あり方を学習します。今日の厳しい環境の中で、大学は、特色ある教育・研究、その社会的存在価値が問われており、自ら掲げるミッションや戦略、政策目標の実現が強く求められています。そして、この推進、実現を担うことこそが、今日の新たな職員の役割であり、それにふさわしい力量が求められていると言えます。
職員が大学において如何なる役割を果たすべきかは、これまでもいろんな角度から論じられてきました。「大学行政管理学会」を始め、桜美林大学、名城大学、筑波大学、広島大学、東京大学、立命館大学等々の大学院や研究センターで、組織的な教育や研究もなされています。また、近年の危機的な大学状況を改革する切り札のひとつとして職員の役割や力量形成が注目され、大学関係紙誌で数多くの貴重な提言がなされてきました。こうした到達に学びながらも、むしろ、時々の情勢と直面する大学改革課題に応じて、職員の役割や求められる力量、その育成システムなどを皆さん方の大学の実状を踏まえ具体的に究明することが極めて大切だと思います。その中から「職員」の本質的役割、「業務」の果たす固有の役割、「プロフェッショナル」が求める水準、「アドミニストレーター」のめざすものが共有できれば、と思っています。

◆大学をめぐる情勢と課題、戦略経営の構築
そのような前提の下に、この科目では、まず、今日の大学をめぐる情勢や高等教育政策の特徴を分析・整理しながら、こうした情勢と課題との関係で、なぜいま職員の役割が注目され、またその機能の高度化が求められているのかの背景と求められる課題を明らかにしたいと思います。すなわち、こうした情勢の中で今日の大学はどのような改革が求められているのか、直面する中心的な改革課題を自らの大学を念頭に各自が設定し、それを達成するためにはどうしたら良いか(戦略目標の設定、その実現のための政策、中長期計画の策定=戦略マネジメントの構築)、そのために職員は何をすべきか、具体的に考察してみたいと思います。
職員の究極の役割は、この大学の目標の実現そのものにあり、そのために、教学を含む大学運営全体をマネジメントし、コーディネイトすることにあるからです。

◆職員の位置と役割
続いて、ここ数年ほどの間に出された大学職員論、SD、アドミニストレーター論、職員のキャリア形成や管理運営改革に関する論文を読み、学習しながら、ここで提起されている職員の新たな役割、特に、戦略の遂行、目標の達成に果たすべき職員の役割とは何かを整理し、まとめてみます。
そして、そうした役割をなぜ職員が担いうるのか、職員の持っている本来的な機能、組織や業務の特性、学内での位置や役割などを考えてみます。
こうした役割を念頭に、具体的な業務分野(各自の担当業務や関心のある仕事)を例にとって、今までの職員の担当範囲や仕事のやり方と、これから新たに担うべき職員の仕事の領域や仕事の仕方を比較、検討してみます。その中で、今後我々はどんな分野、どんな業務で、どんなレベルの仕事に挑戦していくべきか、これから大学が直面する事態や今後拡大していく業務領域なども想定しながら考えてみます。そうした仕事を遂行するために、これからの職員には主にどのような能力、力量が求められるのか、どういう水準の仕事が必要か、業務改革のあり方も含めて検討してみます。すなわち、プロフェッショナルとしての、大学アドミニストレーターとしての職員業務の有り様を、教務、研究、図書館、総務、財務、人事、学募、就職、社会連携・・・それぞれの領域ごとに自大学の現状と課題にそって明らかにすることが重要です。

◆職員の育成
そして、そうした能力の形成、育成・研修のためにはどういう人事の仕組み、育成のための制度や方法が必要か、配付資料にある先進大学の育成・考課、研修制度などを学習しながら、あるべき育成制度についてまとめてみます。また、職員の力量形成は、育成制度だけで果たせるものではありません。力量を高め職場を活性化するために必要な人事制度、人事上の施策として考えられるものも全てあげてみます。採用、配置、異動、昇格、管理者改革・・・など様々な側面で改善が求められています。
特に今日求められている開発力、企画・提案力の育成についてそのあり方や方法を考えてみます。

◆職員の運営参加
さらに、そうした力量を持った職員は学内の、組織、運営にどのように位置付けられ、いかなる権限を持つべきか、経営体制のあり方や大学の管理運営組織の整備の方向と関連させて考えてみます。特に改革推進に相応しい管理体制の構築やその中での教員との協働のあり方も考察します。

授業計画 第1講 大学を巡る情勢と課題、戦略の構築と職員
—中長期計画の策定とその推進を担う職員の役割や課題を探る
第2講 職員の位置、戦略を担う新たな役割と専門性
—求められるプロフェッショナル、アドミニストレーターとしての力量とは何か
第3講 職員の育成、開発と統治の力量強化
—大学アドミニストレーターをめざす育成システムの構築
第4講 経営体制・管理運営の改革と事務局組織
—職員の運営参画と改革型事務組織編成

【スクーリングの授業スケジュール】
文献学習の到達点を前提に、講師による総括的な講義を行い、また、提出レポートも参考に直面する課題、職員のあり方とそれを妨げている要因、今後の改革の方向性を受講生による事例発表と討論によって深めることによって、それぞれの「職員論」の確立に役立てていただきます。

1コマ目:①講師執筆の『大学戦略経営論』『大学アドミニストレーター論』や諸論文を参考に総括的な講義を行います。直近の大学をめぐる動向を踏まえ、戦略的マネジメントの確立に向けた各大学の実践的な取り組みや経営改革のあり方、職員論の到達と課題、並びに受講生からの新たな問題提起など深めるべき点を解説します。

2コマ目:②レポート等で出された問題提起や注目される実践経験などを受講生から発表頂きます。受講人数により、指名した方のみの発表となる場合があります。指名された方は、レポートをもとに、簡単なレジュメや資料を準備いただきます。
③発表用のレジュメは、2つのレポートを合体させたものでも、そのポイントの抜粋、要約、骨子でも結構ですが、自大学の現状分析や改善の取組みを中心に報告いただきたいと思います。添付資料は、自大学の中長期計画や教学改革方針、人事考課制度や研修制度、事務組織図や経営・管理運営機構図など必要なものを選定、配付してください。
④提示した論点についての出席者全員による自由な質問と討議。職員のあり方に関わる自分の見解や自大学での取り組み事例について発表いただきます。
⑤講師によるまとめを行います。
テキスト 【配付教材】
(1)『大学戦略経営論−中長期計画の実質化によるマネジメント改革』篠田道夫著、東信堂、2010年11月
(2)『大学アドミニストレーター論−戦略遂行を担う職員』(学法新書) 篠田道夫著、学法文化センター、2007年3月
(3)『大学とガバナビリティー・評価に堪えうる大学づくり』(学法新書)篠田道夫共著、学法文化センター、2006年3月
(4)『実務者のための私学経営入門』(改訂版)石渡朝男著、私学経営研究会編、法友社、2010年3月

参考書 【参考文献】
(1) 『大学職員論』 篠田道夫編著、 地域科学研究会・高等教育情報センター、 2004年9月(絶版のため、桜美林大学四谷キャンパス図書館でご覧ください)
(2)『大学職員は変わる—東大SDトータルプランの実践—』上杉道世著、学校経理研究会、2009年1月
(3)『私立大学マネジメント』日本私立大学連盟編、東信堂、2009年4月
(4)『私立大学のクライシスマネジメント』小日向允著、論創社、2003年6月
(5) 高等教育研究叢書74『大学職員研究序論』(広島大学高等教育研究開発センター)2003年3月
評価基準 【配付教材つづき】
(5)『大学と学生』(文部科学省)第465号特集「大学と教員−FD・SDへの取組、教員および職員の資質向上」平成15年7月号p.7〜p.42
(6)『IDE・現代の高等教育』No・439特集「大学のSD」2002年5-6月号 p.5〜p.60
(7)『Between』(進研アド)No・184特集「大学職員のキャリアアップ」2002年5月号 p.6〜p.21
(8)『大学時報』(日本私立大学連盟)No・288特集「変化する職員の役割と人材育成」2003年1月号 p.32〜p.75
(9)『IDE・現代の高等教育』No. 469 「SD−大学職員の能力開発」2005年4月号、p.5-p.64
(10)『IDE・現代の高等教育』No. 499 「これからの大学職員」2008年4月号
(11) 『IDE・現代の高等教育』No. 523 「プロとしての大学職員」2010年8-9月号

【参考文献のつづき】
(6) 福留留理子「大学職員の役割と能力形成−私立大学職員調査を手がかりとして−」『高等教育研究』(日本高等教育学会)第7集.2004年
(7) 『新時代の大学経営人材−アドミニストレーター養成を考える』山本眞一他編著、ジアース教育新社、2005年
(8) 『SDが変える大学の未来−大学事務職員から経営人材へ』山本眞一編、文葉社、2004年2月、同『SDが育てる大学経営人材』(2004年10月)、『SDが支える強い大学づくり』(2006年9月)
(9)『大学行政論(Ⅰ)』川本八郎他編、東信堂、2006年1月、同『大学行政論(Ⅱ)』
(2006年4月)
※履修者には配付教材に加えて、第1講から第4講で示す参考文献の中で、学習に必要となる箇所のページの複写を送付します。

【試験】
試験は実施しません。2つの提出レポートの内容、およびスクーリング時の議論などで総合的に評価します。

【評価基準】
大学を巡る情勢と戦略経営の確立、その中で果たすべき職員の役割、求められる力量、それを形成するための事務局改革の諸方策の今日の到達点について基本的理解が身についていること。
それらを応用して、それぞれの大学の実状と課題に見合った自分なりの大学改革の課題設定と職員育成政策、管理運営改革方策、事務局改革方針などの「職員論」を提起できること。


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備考
最終更新日 2011/08/20