開講年度 | 2011年度 |
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開講学期 | 2011年度 秋学期 |
授業コード | 26208 |
科目 | 言語人類学 |
教員氏名 | 吉田 匡興 |
授業種別 | 週間授業 |
授業概要 | 大学の授業のなかで皆さんが受講を希望される第一の科目は、語学、とりわけ英語なのではないかと思います。外国語(とりわけ英語)への憧れや需要は、たいへん大きなものがあるようです。そうした語学の学習に関連して、本当に外国語を習得するためには、「その国の文化をも学ぶことが必要だ」とか「文法の学習では不充分」とか、「教場だけでなく、実地に使ってみなければ身につかない」といったことが言われるのを、誰でも耳にしたことがあるだろうと思います。言語は、単に言語に止まらない、より大きな「広がり」の中に位置しているようです。あるいは、言語とはそもそもそうした「広がり」を持った人間的現象なのかもしれません。 この授業は、言語の「広がり」がどのようなものであるのか、またそれがどの様に理解できるのかを、文化人類学という人間の活動をトータルに捉えようという「野望」を持った学問を通じて、眺めてみる講義です。英語がマスターできるという効用はありませんが、ことばを通じてより深い人間理解のきっかけを提供できるのではないかと思います。 なお、この講義を聴講する前に、言語を理解する際の言語学的な視座のあらましを知っておくために、例えば黒田龍之介著「はじめての言語学」講談社現代新書を、文化と言語との関係についての論じ方を知るために、鈴木孝夫著「ことばと文化」岩波新書を読んおかれるといいでしょう。 |
授業計画 | 導入 第1回(9月23日) 講義の進め方など §0 文化人類学とは何か:フィールドワークで出会った謎を考える 第2回(9月27日)ニューギニアのフィールドワークで出会った問題 〜歌とこころとモノの奇妙な関係〜 第3回(9月30日) 問題の考え方:文化人類学の方法の例示として §1 言語学における言語の「切り取り方」とそれへの接近方法 第4回(10月 4日) 多様な言語との出会い〜大航海時代・啓蒙主義・サンスクリット 第5回(10月 7日) 比較言語学の誕生〜インド=ヨーロッパ祖語を求めて 第6回(10月11日) ソシュールの言語学 その1 共時態と記号の体系としての言語 第7回(10月14日) ソシュールの言語学 その2 ラングとパロール 第8回(10月18日) 言語学における領域区分 その1 音韻論・形態論・統語論 第9回(10月21日) 言語学における領域区分 その2 意味論から語用論へ §2 言語と「認識」の相関関係 第10回(10月25日)言語相対論と言語決定論:ことばが違うと世界も違う? その1 〜サピアとウォーフの仮説から 第11回(11月 1日) 言語相対論と言語決定論:ことばが違うと世界も違う? その2 〜サピアとウォーフの仮説から 第12回(11月 4日) 色彩語彙の普遍性:「強い」言語決定論の否定 第13回(11月 8日) 生活世界に位置付けられる色彩語彙 その1 〜アフリカ牧畜民の色彩体験 第14回(11月11日) 生活世界に位置付けられる色彩語彙 その2 〜アフリカ牧畜民の色彩体験と言語 §3 「広がり」の中の言語 第15回(11月15日) 言語とコミュニケーション:ハイムズとヤコブソン 第16回(11月18日) 社会の関数としてのコミュニケーション手段〜ピジン語を考える非言語とコミュニケーション 第17回(11月22日) 非言語のコミュニケーションと人間関係のあり方〜「泣くこと」「笑うこと」の働きと社会のあり方 第18回(11月25日) 記号学と記号論:あらゆるものが何かを伝える 第19回(11月29日) 文化人類学と記号論:動物とひわい語・罵倒語〜バニーガールは、なぜうさぎなのか? §4 革新される記号/言語 第20回(12月 2日)ことば・記号が「新しくなる」条件〜「統辞」における創発性 第21回(12月 6日) 革新の条件としてのコミュニケーションへの志向 §5 コミュニケーション行為としての言語 第22回(12月 9日) 会話の場で起こっていること その1〜 コンテクストの創造 第23回(12月13日) 会話の場で起こっていること その2〜身体と発語 §6「為す」こととしての言語 第24回(12月16日) 言語行為論〜オースティン、サール 第25回(12月20日) パプアニューギニア、アンガティーヤの人々の呪文 第26回(12月23日) 「いま、ここ」を超える世界の創造「かたり」と「はなし」 第27回( 1月10日) 「いま、ここ」と「詩的世界」をつなぐ人称の働き 第28回( 1月13日) 隠喩の力 §7 社会と言語 第29回(1月17日) 言語とアイデンティティ 第30回(1月20日) 文法の誕生 期末試験(1月24日) |
テキスト | 特になし。 |
参考書 | 宮岡伯人編 「言語人類学を学ぶ人のために」 世界思想社 風間喜代三著 「言語学の誕生——比較言語学小史——」 岩波新書 E.サピア著 「言語・文化・パーソナリティ—サピア言語文化論集」 北星堂書店 B.L.ウォーフ著 「言語・思考・現実」 講談社学術文庫 D.ハイムズ著「ことばの民族誌—社会言語学の基礎」 紀伊国屋書店 野家啓一著 「言語行為の現象学」 勁草書房 坂部恵著 「かたり」 弘文堂 菅原和孝著 「ことばと身体—『言語の手前』の人類学」 講談社選書メチエ そのほか、講義中に紹介します。 |
評価基準 | 試験の得点に基づき、評価を行います。 A:特に優れた成績であり、講義全体の流れを的確に把握していると判断できる。 B:優れた成績であり、講義全体の流れを把握している。 C:いちおうその科目の要求を満たす成績。個々の項目の知識について若干不正確なところはあるものの、講義全体の 流れを一応は把握している。 D:合格と認められる最低の成績。講義全体の流れを把握しているとは言い難いが、講義中に扱った一定数以上の重 要な項目について知識を獲得したと認められるもの。 F:不合格 なお、試験の受験資格は、20回以上講義に出席し、かつ、学期を通じて4,5回程度課するレポートを全て指定期限内の提出した者に限ります。なお、レポートは、講義内容を踏まえた質問に対して、受講者が答える形をとります。レポートの内容が優れている場合は、それを評価に反映することもあります。 |
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最終更新日 | 2011/08/05 |