2016年度の本学教員著作寄贈図書

近代日本の人類学史 : 帝国と植民地の記憶

タイトル: 近代日本の人類学史 : 帝国と植民地の記憶
著者: 中生勝美著
出版者: 風響社
ISBN: 9784894892279
請求記号: 389/N41

 欧米と同様に、日本でも近代国家建設と植民地拡張の必要性から、人類学が発展してきた。本書は、「他者理解」を標榜する文化人類学が、いかに学問の研究対象を旧植民地、占領地、そして戦略展開地までも研究対象地域を広げたかを、具体的な調査活動、研究機関、研究者から分析した。
 非西洋社会である日本がアジア・太平洋戦争以前に持っていた植民地と占領地を包含した帝国像の記述で、西洋植民地主義とは異なる視点から議論できる。本書は、日本の人類学が残した民族誌を歴史の文脈におくことで、歴史学とは異なる帝国日本像を浮かび上がらせた。本書は、比較と記述を得意とする人類学的方法論を用いてフィールドワークと文献学と結びつけて分析した論文構成は前篇に植民地、後篇に戦時中の人類学関係の研究所の活動を中心にまとめた。
 前篇:植民地の拡張と人類学は、台湾:旧慣調査と台北帝国大学、朝鮮慣習調査と京城帝国大学、南洋群島:信託統治と民族調査、満洲:満鉄調査部と満洲国の民族学。後篇:戦時中の民族学は、民族研究所:戦時中の日本民族学、内陸アジア研究と京都学派:西北研究所の組織と活動、イスラーム研究とムスリム工作。本の人類学史は、過去の大日本帝国と向き合うことである。過去と対峙することは、歴史を直視することであると結論づけた。
(リベラルアーツ学群 中生勝美)

戦時下のキリスト教主義学校

タイトル: 戦時下のキリスト教主義学校
著者: 榑松かほる [ほか] 著
出版者: 教文館
ISBN: 9784764274112
請求記号: 372.1/Ku59

 先日の国会で「教育勅語」を教材として学ぶことはやぶさかでないとの文科省の見解が示された、との報道が話題となった。「歴史は繰り返される」というが、繰り返されてはならない歴史がある。「教育勅語」体制下の公教育もその一つである。天皇を現神として神格化した「大日本帝国憲法」下において、国民の倫理、道徳のあり様を天皇の絶対的な命令の形で示した「教育勅語」は、平和の時には格別脅威とはならないが、戦争という時代においては統制の基準として機能した。国家は、キリスト教主義学校に対して容赦のない抑圧をした一方、国家に役に立つと見た場合は惜しみない援助をしてきた。本書において、個々のキリスト教主義学校が戦時下の国家の教育統制に対して、どのような抵抗、対応、追従をしていたのかを実証的に明らかにした。筆者が担当した第6章においては、本学の前身である崇貞学園を取り上げた。中国大陸を侵略して新秩序体制の樹立を図っていた国策にとって崇貞学園はまたとない日中文化融合政策の拠点となった。戦時中の国家援助によって発展した崇貞学園が存在しなかったら、桜美林学園は誕生しなかったかもしれない。本学が戦争と関係した事実を知ってほしい。
(教職センター 榑松かほる)

フランス語名詞・動詞連語辞典

タイトル: フランス語名詞・動詞連語辞典
著者: 石川三千夫著
出版者: 春風社
ISBN: 9784861105364
請求記号: 853/I76

従来の仏和辞典は名詞、動詞、形容詞、副詞などがそれぞれ見出しになっていて、意味を調べるのには適していても、文を作ったり、理解したりする時には個別の単語をそれぞれ調べる必要があり、非常に不便である。
本来、文を理解し、文を作りだし、発話する際に中核になるのは「名詞」である。その名詞に繋げて「~がどうする」「~をどうする」などの表現が生まれてくる。母語話者の場合、この名詞に繋がる動詞は自然に思い浮かんでくるのだが、外国語となると、非母語話者として学んで蓄えてあるものの中からしか思い浮かんでこないので、的確な表現ができない場合が多い。
例えば日本語で言うと、「記憶が」に関連して「薄れる」「途切れる」「ぼやける」「無くなる」「消える」「飛ぶ」「重なる」「戻る」「蘇る」「ある」など、あるいは「記憶を」に関連して「無くす」「失う」「打ち消す」「呼び戻す」「たどる」「探る」「確かめる」などの表現がすぐ頭に浮かんでくるが、これらの表現をフランス語でしようとして、従来の辞典にあたっても、それぞれの単語が関わりなくばらばらに配列されているので、その都度それぞれの動詞を参照しなくてはならない。
それに対して、この辞典では見出し語として名詞だけが掲げられ、その見出し語の下に動詞との連語が集められ配列されている。この辞典の使用者はその名詞ラベルの付いた「引き出し」を引き出し、その中に収められている関連する多種の動詞の中から、自分の必要とする表現を見つければいい仕組みになっている。いわば母語話者が脳に蓄積したものをアウトプットする仕組みを、この辞典で行えるようにしているのである。
そういった意味で、この辞典はフランス語学習者のみならずフランス語で仕事をしている人たちにとっても、表現したり文を理解したりするための有用な道具となり得るものである。
なおこの辞典は2016年度桜美林大学学術出版助成を受けての出版である。
(リベラルアーツ学群 石川三千夫)

戦略経営111大学事例集

タイトル: 戦略経営111大学事例集
著者: 篠田道夫著
出版者: 東信堂
ISBN: 9784798913810
請求記号: 377.1 / Sh66

直面する大学改革の方向を指し示す基本原理は何処から来るのか?高等教育の理論か、企業経営論の応用か、アメリカの改革手法か。もちろんそれもある。しかし、厳しい現実と格闘し作り上げられた改革方策、苦労の末到達した成果、この事例に勝るものはない。この中にこそ改革の共通原理があり、厳しい現実を乗り越えるカギが隠されている。
振り返ってみると、この10年で111の大学を訪問・調査し、理事長、学長、理事、事務局長、部課長などトップや幹部からお話を伺い、報告書や記事にまとめ、雑誌や新聞に発表してきた。これだけの数のインタビュー、報告書の執筆は例が少ないとのことで、これが本書のタイトルとなった。
ひとつひとつの大学事例の中には、いくつものテーマで改革に活用できる情報が詰まっている。その何処が役立つかは読み手にしかわからない。読者の所属する大学の直面する課題や問題意識によって、事例から引き出せるノウハウは無限だとも言える。
関心のあるテーマがどこに記載されているかわかるように、テーマごとに大学名と掲載ページを付した「テーマ別索引」を付けた。111大学の事例のエッセンスから、改革の原理・手法を掴みとって頂ければ幸いである。
(大学アドミニストレーション研究科 篠田道夫)

大学戦略経営の核心

タイトル: 大学戦略経営の核心
著者: 篠田道夫著
出版者: 東信堂
ISBN: 9784798913803
請求記号: 377.1 / Sh66

再び18歳人口が急減を始める2018年問題・・。全ての大学が直面する危機の時代に、如何に経営体制を整え、教育の質向上を実現し、評価向上を勝ち取るか、この答えが求められている。今までの延長線上で大学が存続し発展できると考えるのは、楽観的過ぎる。この答え、改革の共通原理こそ戦略経営の核心だ。
学校教育法の改訂で学長の権限が強化された。しかし、それだけで迅速な意思決定や全学一体の運営が実現できるものではない。そうした組織・権限を生かし、如何にその大学に相応しい有効なマネジメントが出来るかが問われているが、その答えは一つではない。しかし、努力の方向には一定の共通原理があり、それが本書のテーマ「戦略経営の核心」である。それは大きく3つに集約できる。
1、実効性ある中長期計画の策定・実行・評価、政策の浸透や課題の共有。
2、目標と計画を推進するガバナンスとマネジメントの一体改革。
3、この実現を実行面で担う大学職員の力量向上と運営参画。
正確な現状分析、斬新な政策、これを推進する強力なマネジメントが必要だ。大学の未来を決定づけるこれらの改革を如何に実行するか、大学戦略経営の核心部分の早急な強化が求められている。
(大学アドミニストレーション研究科 篠田道夫)

ゴジラの哀しみ : 映画《ゴジラ》から映画《永遠の0》へ

タイトル: ゴジラの哀しみ : 映画《ゴジラ》から映画《永遠の0》へ
著者: 高橋誠一郎著
出版者: のべる出版企画/かりばね書房 (発売)
ISBN: 9784904390177
請求記号: 778.04 / Ta33

 復員兵として中国から帰還した際に広島の惨劇を目撃していた本多猪四郎監督は、原爆の千倍もの威力のある水爆実験によって「第五福竜丸」が被爆したことを知って映画《ゴジラ》を製作し、チェルノブイリ原発事故の後では黒澤明監督の映画《夢》に監督補佐として深く関わった。
 本書では3つの視点からポピュラー文化を分析することで、日本人の核意識と戦争観の変化を考察し、核の時代の戦争を克服する道を探った。
 最初に映画《ゴジラ》から《シン・ゴジラ》にいたる水爆怪獣「ゴジラ」の変貌を、《モスラ》や《宇宙戦艦ヤマト》、《インデペンデンス・デイ》なども視野に入れて分析した。
 宮崎駿監督が「神話の捏造」と批判した映画《永遠の0(ゼロ)》については、原作の構造と登場人物の言動を詳しく分析することによって、この小説が神話的な歴史観で「大東亜戦争」を正当化している「日本会議」のプロパガンダの役割を担っていることを明らかにした。
 最後に、《七人の侍》から《生きものの記録》を経て《夢》に至る黒澤映画と、《風の谷のナウシカ》から《紅の豚》や《もののけ姫》を経て、《風立ちぬ》に至る宮崎映画の文明観の深まりを自然観に注目しながら考察した。
(リベラルアーツ学群 高橋 誠一郎)

植物の和名・漢名と伝統文化

タイトル: 植物の和名・漢名と伝統文化
著者: 寺井泰明著
出版者: 日本評論社
ISBN: 9784535587014
請求記号: 812 / Te45

 植物の和名と漢名を、その歴史・文化をたどりつつ比較・検討し、俗説を批判した論文集である。例えば、漢名「蓬」には「よもぎ」の和名があてられるが、ヨモギに限らず、乾燥地で根本が切れて風に吹かれ転がるアカザ科の植物も、実は「蓬」である。それが漢詩に歌われたが日本には無い植物であるため誤解された。また、中国古代の「交譲木」は「楠」(これもクスノキではない)の珍木で、ユズリハとは全く関係がない。ユズリハの語源は「譲る」ではなく「弓弦(ゆづる)」と見るのが妥当で、日本では古来、神への供物を載せるのに用いられた。このように、植物の漢名と和名の指す実体を、伝統文化との関係を明らかにしつつ論究したものである。
 採り上げられた植物は、漢名では、桂、楓、紫荊、蓬・艾、柏、杜・社、楊・柳、椿、樗、萩・芽、楸・梓、榎、茱萸、朴、樟・楠、交譲、槐、柊、楝、蘭などで、全23章、A5版600ページにわたる。2016年度桜美林大学学術出版助成を受けての出版である。
(リベラルアーツ学群 寺井泰明)

チュニジア革命と民主化 : 人類学的プロセス・ドキュメンテーションの試み

タイトル: チュニジア革命と民主化 : 人類学的プロセス・ドキュメンテーションの試み
著者: 鷹木恵子著
出版者: 明石書店
ISBN: 9784750344010
請求記号: 312.432 / Ta36

 本書は、「アラブの春」の起点、中東現代史の転換点ともなったチュニジア革命とその後の民主化移行過程に焦点をあて、文化人類学的現地調査を踏まえて、ほぼ5年にわたるその経過をプロセス・ドキュメンテーションの手法を用いて描いたモノグラフである。
 2011年のアラブ革命は、エジプトとリビア、イエメンでは長期独裁政権を終焉させたが、その後は一部の国々では武力闘争や悲惨な内戦、「イスラーム国」の台頭などを招き、混乱や混迷を極める事態となっている。そうしたなかでチュニジアは紆余曲折を経つつも、2014年初頭には新憲法制定、議会選挙と大統領選挙を経て、2015年には新内閣を発足させ、革命の第一義的目標であった政治的民主化を何とか平和裏に達成した。さらに同年には、民主化移行に多大な貢献をした「国民対話カルテット」が、ノーベル平和賞を受賞した。本書は、そのチュニジア革命と民主化がいかなる経過をたどって達成されたのか、その過程を文献研究とともに現地調査による多くの人々からの聞き取りを踏まえて跡付けたものである。混迷を深める現代中東において、市民の力で民主化移行を果たしたこの事例が一つの希望の光ともなるその意義について明らかにした。
(リベラルアーツ学群/人文学系 鷹木恵子)

扶桑论评 : 在日华人学者的观察与思考

タイトル: 扶桑论评 : 在日华人学者的观察与思考
著者: 任云, 刘敬文, 孙久富等著
出版者: 中国社会科学出版社
ISBN: 9787516175446
請求記号: 304 / N76

 目下、日中関係がギクシャクしている。日中両国の民衆が如何に冷静に、客観的に相手を認識し、理解するのか。これは大変重要な課題である。本書は、日中両国の相互理解、とりわけ中国の知識人層の対日認識を改善するために、中国で出版された本格的な日本研究の著作である。本全体は日本の経済と社会保障、日中関係と交流、日本の文化と言語という三つのパートで計9章に分けられている。
 執筆者は、桜美林大学に在職する華人教員6名及び学外の華人研究者3名であり、全員日中両国で長年学び、日本地域研究の各分野でそれぞれ一定の研究成果を上げている。本書の最大の特徴は、日本の経済や社会、そして文化や言語等を内部からの目で見つめると同時に、中国人的思考様式をも生かして、日中比較の視点から日本を研究・紹介していることである。
(リベラルアーツ学群 任 雲)

テキスト現代経営入門

タイトル: テキスト現代経営入門
著者: 桑名義晴, 宮下幸一編著/桜美林大学ビジネスマネジメント学群著
出版者: 中央経済者
ISBN: 9784502188817
請求記号: 335.1 / Ku97

 経営学の研究は、21世紀に入って大きくその内容を変えてきている。その背景にあるのは20世紀から21世紀への移行期におとずれた企業を取り巻く環境の激変である。その典型はグローバル化とサービス化である。これによる変化はICTをはじめとした技術革新と相まって、企業経営のあり方を揺さぶっている。
 とりわけ日本の企業は1990年以降のバブル経済の崩壊と景気の低迷を受けて激動した。旧来のスタイルで蓄積してきた日本企業の生命力はむしばまれ、息絶えた企業や社会から批判を浴びる企業は計り知れない。この根源はどこに見出せるのだろうか。その一方で、激動を乗り越えて好業績を継続してきた企業がある。その要因はどのように説明できるのであろうか。本書の大きなテーマである。
 本書は大学に入って経営学を専門に学ぶ学生の入門テキストとして編集・執筆されている。あらゆる学問がそうであるように、人類の知識資産は先学の努力に基礎づけられている。本書もまたそうした先学の知識や理論を体系的にまとめて、企業変革の本質を理解し、新しい時代に向けた変革の構想を議論できるように編集している。
 この難題に挑戦した本書は、本学ビジネスマネジメント学群の教員によって執筆されている。本学で学ぶ学生のテキストとして読まれ、また社会に巣立つ多くの学生の勉強に役立てられることを希望している。
(ビジネスマネジメント学群 宮下 幸一)

「80歳代高齢者の生きがいの持続的促進とその社会的対応」調査報告書

タイトル: 「80歳代高齢者の生きがいの持続的促進とその社会的対応」調査報告書
出版者: 福祉デザイン研究所
請求記号: 369.26 / H11

超高齢社会の進展のなか、人生90年時代を迎えようとしております。しかしながら、80歳代の高齢者に於けるこれらの調査研究となると、国内はもとより海外でも皆無の状態です。80歳代になっても様々な社会活動に参加し、生きがいのある老後を送っている人たちも少なくありません。今後、高齢者は80歳代になってもどのような老後を送るべきか、また、私たち次世代はこの国や地域の有り様をどのように展望すべきか、学生や院生のゼミ論・卒論、修論等に活かして貰えればたいへん嬉しく思います。
(健康福祉学群 島津 淳)

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