桜美林大学 国際協力専攻ホームページ



2008年度秋学期

 和田理美

<T.インターン先概要>

  1. 団体名
    財団法人 ジョイセフ(家族計画国際協力財団)
  2. 活動内容
    リプロダクティブ・ヘルスを尊重し、世界中の妊産婦や子どもが健康に生きられるようになることを目標とする。開発途上国での人口とリプロダクティブ・ヘルス分野の国際協力を実施。とりわけ、女性の健康と地位の向上を目指す国際協力を実施している。
    活動内容は大きく4つに分けられる。
    1. 社会への働きかけ
      学校での講演・ワークショップや政府へ向けた政策提言活動など
    2. 社会からの支援・援助
      収集ボランティア、募金、フェアトレード商品などの販売
    3. 教育・人材育成
      発展途上国の問題解決のために、各地域のリーダーを育てる
    4. 開発途上国での活動
      リプロダクティブ・ヘルス推進活動、HIV/エイズへの取り組みなど
  3. 設立、運営体制
    会長:明石 康  1968年設立
    運営体制:理事18名 監事:2名 評議員:17名 常勤37 
    非常勤(含インターン)20名 ボランティア25名
  4. 予算
    平成20年度予算 収入 841,610,000円
    (内訳)
    事業収入 (596,640,000円)
    寄付金収入 (39,000,000円)
    事業協賛金収入 (150,000,000円)
    その他 (55,970,000円)

<U.インターン実習期間>
2009年1月23日〜3月9日(内15日間)

<V.インターン実習内容>
主な実習内容は、人材育成グループ担当の以下2つの研修の運営の手伝いである。

  1. 「より安全な妊娠と出産戦略アジア地域ワークショップ〜妊産婦をとりまくコミュニティーにおける環境作りに向けて〜」2009年1月25日〜2月14日
  2. ベトナム国「リプロダクティブ・ヘルスケア広域展開アプローチ」2009年2月17日〜3月14日
    仕事の多くは雑用であり、実習は聴講が主であった。具体的な仕事内容は、以下。
    • 聴講
    • 研修生へ配布する資料のアップデートやコピー
    • セッションの記録写真撮影、開始時刻と終了時刻の記録
    • 講師がパワーポイントを投影するときなど、部屋の電気の消灯
    • 研修生へ筆記用具や資料の配布
    • 講師への御礼状の作成 

<W.研修について>
ジョイセフの研修は、JICAからの依頼による。研修員の旅費や食費、日当などはODAで費用が賄われている。
日本は、地域に密着した質の高いケア、全国的に均質な保健医療サービスの提供、妊娠初期から子育てまでの一貫した母子保健制度、積極的な住民参加による公衆衛生の改善などにより、戦後妊産婦死亡率を劇的に減少させた国である。この経験は他国にて、応用可能であり、開発途上国の問題解決の参考になり得る。

1.「より安産な妊娠と出産戦略アジア地域ワークショップ」
参加国は、バングラデシュ、ネパール、ブータン、カンボジア、ラオス、ミャンマー、モンゴルの8カ国。いずれも妊産婦死亡率が依然として高く、また改善が困難とされている国である。
対象人材は政府機関及び非政府機関にて、母子健康(リプロダクティブ・ヘルス)分野の企画・実施・管理・評価等に関わるプログラム担当官で、3年以上の職務経験を有するものである。原則的に各国より2名の参加で、うち1名はNGO、もう1名は政府の人材である。
このワークショップの目標は、研修員が各国において「妊産婦をとりまくより安全な妊娠と出産に向けた地域における実践」のための環境作りをし、状況改善に寄与する活動を実施することである。またMDGsの達成も視野にいれる。講義、ディスカッション、プレゼンテーションなど全て英語で行われた。
研修の内容は、日本の妊産婦死亡削減に向けた取り組み、看護師や医師がどのような訓練を受けているかなどの講義や、助産院の見学。自国の現状や問題、取り組みについての発表。また、アドボカシー戦略や、NGOと政府の連携への課題などについてのディスカッション。群馬県での、母子保健政策や地域医療、妊産婦ケアについての講義(実際に群馬県に赴く)。そして、最後にはAction Planという研修員の帰国後のプログラム計画を作成、発表する。5か月後に、研修員がAction Planを達成できたかなどの事後報告レポートを書いて、終了となる。
群馬県で講義を受けるのは、東京などに比べ地方の方が、医療技術などの状況が開発途上国に近いためである。
本当に熱心な研修員ばかりで、彼らの取り組みによって各国のリプロダクティブ・ヘルスケアはもっと促進されるように思えた。各国のNGOと政府からそれぞれ研修員を招いているのも効果的だと思う。NGOと政府、他国異文化同士、お互いの悪い点や良い点を見つけ合い、高めあうことができるだろう。

2.ベトナム国「リプロダクティブ・ヘルスケア広域展開アプローチ」
ベトナムの5省リプロダクティブ・ヘルスケアセンターより2名ずつの研修員を迎える。この研修は、ベトナム国のリプロダクティブ・ヘルスの向上を目指し、ゲアン省で実施された「リプロダクティブ・ヘルスプロジェクト(2005年8月に終了)」の成果を受け、ゲアン省近隣の4省にプロジェクトの経験を移転することを目指したプロジェクトである。4省の関係者の能力強化、指導的な立場にある人材育成と地域におけるRH向上を目的とし、特に村の保健センター(CHC )の能力強化を図ることを目指している。
研修の内容は、日本の母子保健行政について、クライアント・フレンドリー・サービス、更年期ケアサービスについての講義や、東京女子医科大学「女性生涯健康センター」の見学など。また、地方研修は新潟で、学校での性教育授業についての講義などもあった。
ベトナムでは、「より安産な妊娠と出産戦略アジア地域ワークショップ」の参加国に比べて進んでおり、より実践的な講義が多かったという印象がある。
講義やディスカッションなどは、通訳の方を通して、全てベトナム語と日本語で行われた。

<X.研究課題>
1. リプロダクティブ・ライツはいかに、ジェンダー平等に貢献できるか
今回のインターンシップ期間中に行われたワークショップでは、あまりリプロダクティブ・ライツは取り上げられていなかった。それよりもリプロダクティブ・ヘルスが多く取り扱われていた。
リプロダクティブ・ヘルスという言葉が生まれる前には、「Family Planning」という言葉が使われていた。この言葉は人口抑制のためのトップダウンの政策であった。
しかし、1990年の国際会議で、人口抑制だけで女性の健康は守られるのだろうかという疑問があがり、「リプロダクティブ・ヘルス」という言葉が生まれた。
リプロダクティブ・ヘルスの意味はとても広く、「Family Planning」はその一部にあたる。また、Family Planningは既婚女性とリプロダクティブ・エイジが対象であったが、リプロダクティブ・ヘルスの対象は、全年齢対象で、リプロダクティブ・エイジの前の者、以降の者も含まれる。
リプロダクティブ・ライツ/ヘルスを推進するには、国家政策や各地域政策、またコミュニティーや、パートナーの協力を必要とする。その中で、今まで女性の健康に目を向けて来なかった人々が、女性の健康を大切にすることを学ぶ。
相手の立場に立って相手を尊重する、命を大切にするというのがリプロダクティブ・ヘルス/ライツの根本的な意味だということを、ジョイセフのワークショップで学んだ。
女性の立場に立って、女性を尊重するということ。リプロダクティブ・ヘルス/ライツはジェンダー平等に多いに貢献することができる。

2. NGOの活動に、市民はどう関与すべきか
ジョイセフには、ボランティアという形で一般市民も関与している。だが今回、参加したワークショップには市民はまったく関与していなかった。
市民がNGOに関与するには、寄付やボランティアに参加することなどがあげられる。
私は、参加したワークショップで、日本のリプロダクティブ・ヘルスに関する現状や取り組みについて、多く学ぶことができた。今回のワークショップに積極的に市民も参加し、日本のリプロダクティブ・ヘルスについて学ぶべきだと思った。日本でも、人工妊娠中絶や性教育について、また産科の不足など考えなければいけない問題があるからだ。
だが、今回のワークショップの内容はジョイセフでは詳しくは公開されていない。ホームページで公開したり、オフィスにブースを設け、市民が気軽に学べる場所などを作ったりするべきだと思う。

<Y.感想と提言>
今回のインターンシップに参加して、日本のリプロダクティブ・ヘルスについての現状や取り組みについて学ぶことができた。
日本の妊産婦死亡率減少には、国家政策だけではなく、地域の政策などが大きく貢献している。日本が先進国になれたのは、経済成長だけではなく、命に関する戦後の人々の細やかな努力があったからだと思う。
先に述べたように、日本でも人工妊娠中絶や性教育についての問題が山積みである。
研修員も人工妊娠中絶の問題をよく取り上げていた。モンゴルでは、望まない妊娠をしてしまった少女が中国から流れてきた危険なヤミ中絶薬を服用し、死に至るというケースが多発している。
中絶を禁止したり、非道徳性や「不妊症になる」など、マイナスイメージばかりを説いたりなど、中絶について恐怖を与えるのは、女性の権利を無視したものである。
それよりも、男女へのしっかりとした性知識を与え、もし望まない妊娠をしてしまった場合には人工妊娠中絶は女性の権利であるということを教えるべきだ。
いたずらに中絶禁止を訴えても、女性が自殺やヤミ中絶に追いやられるだけだからである。

スタッフの方々は皆親切で、イキイキと仕事に誇りを持っており、温かい雰囲気の職場であった。スタッフの方々と接する中で、ワークショップに関することはもちろん、彼らの仕事に対する姿勢などから、社会人としての在り方や、情熱なども学ぶことができた。
インターンシップは、自分の研究課題以外にも多くを学ぶことができる。スタッフの方々から意見を求めたり、なぜこの職場を選んだのかなど、積極的に関わっていくことで、よりインターンシップが充実したものになるだろう。