桜美林大学 国際協力専攻ホームページ



2005年度 秋学期

3年 堤麻衣子

 私は、8月4日から8月29日までの約1ヶ月間国際学インターンにおいて「開発教育協会」で活動を行った。開発教育協会の紹介をするとともに、開発教育についても触れていきたいと思う。

◇開発教育とは
「開発教育」という言葉はもしかしたら聞いたことのない人もいるかもしれない。私もこの言葉を知ったのはつい最近のことで、授業で紹介されたことがきっかけである。
開発教育は、1960年代にアジア・アフリカなどの開発途上国で国際協力活動をしていた欧州や北米のNGOによって始められた教育活動である。初めは、開発途上国の暮らしや人々について自国に知らせ、困っている人たちへの支援を促すための活動であった。その後、私たちの生活がそれらの国やそこに暮らす人々とのつながりによって成り立っていることや、南北問題や貧困といった様々な問題が、先進国との関係の中で構造的に起こることが明らかとなった。そこで開発教育は、そうした構造を理解し、問題解決にむけひとりひとりが参加し、行動していこうとする教育活動へと変化していった。
このような開発教育が日本で始まったのは1980年代で、最初は開発途上国のこと、または国際協力を扱う「南北問題学習」や「援助教育」の側面に強くあった。しかし90年代に入ると地球環境や平和、そして人権などの問題が、開発をめぐる問題と密接に関係していることが国連会議などで明確にされてきた。そのため、「南」と「北」の人々がともに協力しながら、すべての国・地域で貧困や格差、抑圧のない新しい地球社会を作っていこうとすることを目指すようになった。ここに至り開発教育は、私たちの社会も含めた地域社会全体の「開発のあり方を考える教育」へと発展していった。
開発教育の学びの方法は「参加型」である。ワークショップなどに参加し、様々なことを体験し、参加者同士交流を行う。私もこれまで様々なワークショップに参加したが、毎回「参加型」の大切さを実感する。体験することでその問題が決して遠く離れた場所で起こっている問題ではなく、自分たちに密接した問題であるということに気付く。そして参加者同士の交流によって、視野が広がるのである。自分だけで考えていては思いつかないであろうするどい意見があったりとすごく面白い。

◇開発教育協会について
  次に、私がインターンをさせてもらった開発教育協会を紹介する。 開発教育協会のことをみんなはDEARと呼んでいる。これはDevelopment Education And Resource centerの略称である。
DEARは、開発教育を推進するネットワークである。79年に開発教育をテーマとした「開発教育シンポジウム」が79年に、日本で開催された。これをきっかけとして開発教育の推進に関心をもつ人々が集まり、日本で開発教育を普及・推進するための連絡協議体として82年に「開発教育協議会」が任意団体として発足したのが始まりである。
この翌年には現在も行われている「開発教育全国研究集会」が開催され、研究史やニュースレターの発行を始めた。
92年からは、毎年全国6箇所で「開発教育地域セミナー」を開催した。これがきっかけで、地域でいくつもの開発教育のグループが生まれ、開発教育の「担い手」が育っていったのである。その他「開発教育担い手会議」の開催や、教員セミナー等の事業を展開している。
2000年からは学校で総合的な学習の時間が始まったため、学校教育において開発教育を実践する機会が広がった。そして2002年、設立20周年を迎えた「開発教育協議会」は組織の役割の変化から、名称も「開発教育協会」と変更し、翌年にはNPO法人核を得た。
DEARには幅広い年齢層、また様々な職業の人が関わっている。私が通っていた事務局では、事務局長と、事務局次長がほぼ毎日仕事をしており、そのほかにも嘱託のスタッフが数名、定期的に仕事をしに来ている。ボランティアの方々も、大学生や、他の仕事と両立されている方、仕事をリタイアした方、教員など、毎週色々な人たちが事務所を訪れて活動している。
以前入門講座に参加したとき、DEARの方が自分たちが大切にしていることということでこんなことを話してくださった。「話し合いのときは個々の考えをとても大切にする。そして同時に相手の意見もしっかり聴く」ということであった。ここで「聞く」ではなく「聴く」という漢字を使うのは、「聴く」には「こころで聴く」という意味があるからだそうだ。こういったことにより得た気付きは、ずっと自分の心に残るのだとDEARのスタッフの方は言っていた。

◇開発教育協会の活動
・活動の3本柱 
DEARの活動は大きく3つに分けられる。まずは、開発教育を広げ、支えていくためのムーブメント事業である。国内のネットワーク事業や、広報活動などがある。2つ目が開発教育を考え、深めるためのリサーチ事業である。研究誌の発行や、全国研究集会の開催があげられる。そして3つ目が開発教育をつくり、伝えるためのクリエイティブ事業である。学校などに講師派遣を行ったり、開発教育入門講座を行ったりという活動を行っている。

・開発教育入門講座
ここで3つ目にあげたクリエイティブ活動の中の「開発教育入門講座」を紹介したいと思う。DEARでは毎月1回、入門講座を開いている。毎月テーマが異なり、ワークショップの体験と、開発教育とは?といった説明を受けることが出来る。
私は6、7月の入門講座に参加したのだが、6月は特別編とのことで「新・貿易ゲーム」というワークショップを体験した。「貿易」を中心に、世界経済の動きを擬似体験することによって、そこに存在するさまざまな問題について学び、その解決の道について考えることを目的としたシミュレーションゲームである。班に分かれて協力し合いながらやる班もあれば、ひとりもくもくと作業する人たちもいる。そのときは必死に作業を行っていたけれども、後から話を聞くと世界の貿易の現状にすごく似ていたことに気付かされる。
この入門講座で印象に残ったのは「アイスブレイク」という最初の自己紹介である。私は初対面の人と話すことにそんなに抵抗はなく、すぐに打ち解けられるほうなのだがこの「アイスブレイク」により、より一層みんなと仲良くなれたように思う。アイスブレイクの内容は名前、職業といった基本的な自己紹介にプラスして何か楽しいことを話すというものである。今回私が体験したのは「今週1番笑ったこと」であった。その人の人間性が現れて打ち解けやすくなり、より一層場の雰囲気がよくなったように感じた。
このようなアイスブレイク以外に相手のことを紹介する「自己紹介」ならぬ「他己紹介」といったことを行うこともある。様々な参加者が集まるワークショップでは、参加型形式をスムーズに行うためにもこういったことはとても重要であると思う。

◇インターンシップ活動内容
・プログラム作成
私が今回のインターンシップで主に携わってきた仕事はDEARの活動2つ目であげたリサーチ事業の全国研究集会の開催である。私は「プログラム作成」という仕事を任され、研究集会開催までの約3週間、ひたすらその仕事を行ってきた。スケジュール表や、会場図などプログラム内のほとんどのページを自分で作った。こんなに長時間パソコンの前に座っているのは始めての経験で、肩こりは日常茶飯事だった。そして一生懸命作っていたプログラムの一部が保存しようとした瞬間に消えてしまった時は、疲れがどっときた。こまめに上書き保存をすることの大切さを身を持って感じた瞬間であった。そんな苦労も乗り越え、研究集会の3日前に印刷が終わり、完成形を見たときは達成感を味わうことが出来た。

・第26回開発教育全国研究集会
8月23日、24日の2日間、東京外国語大学において「第26回開発教育全国研究集会」が開催された。このイベントは、開発教育をもっと知りたい、深めたいと思っている人たちのためのDEARが年に一度開催する一大イベントである。2日間、丸一日使って行うイベントであり、ワークショップや研究活動・実践事例の紹介、講演会など様々なプログラムが組まれている。毎回色々なテーマのもと行われるイベントの今年のテーマは『「多文化共生」と教育を考える−スローガンとしての多文化共生を超えて−』である。
机を並べたり、インフォメーションコーナーを設置したりと、色々な仕事をやったのだが、私が2日間任されたのは「要約筆記」という仕事だった。「要約筆記」とは、難聴者に対し正しい情報をリアルタイムに伝えるための筆記補助のことをいう。私たちは今回講師や参加者の話をWordでタイピングし、それをスクリーンに映し出して難聴者の方に伝えるという方法で要約筆記を行った。
はじめは、なかなかタイピングが追いつかず、またうまく話をまとめることが出来ずすごく苦労した。しかし、今回の要約筆記者3人で協力し合い、チームワークの良さもありなんとか2日間やり遂げることが出来た。3人共要約筆記は初めてで、決してよい出来だったとはいえないと思う。しかし全てのプログラムが終了した後に「すごく嬉しかったよ。」と難聴者の方に言っていただいたとき、達成感、そして充実感でいっぱいになった。
スタッフとして参加したため、今回はワークショップなどには参加できなかったけれども、要約筆記者という仕事があるという新しい発見や、研究集会を通してボランティアや参加者の人などたくさんの人に出会えたことは自分にとってすごく実になることだなと今、すごく実感している。

◇まとめ
今回のインターンシップは本当に充実したものであった。特に、ひとつの仕事を任せられるという責任感がすごく自分の中の学びとして残っている。自分の仕事に対する思いが変わったと思う。
そして何より開発教育にさらに興味がわいた。今回はファシリテーターとしての学びはそんなになかったけれども色々な人と出会い、そしていろいろな経験をしたことを活かし、今後の自分の活動へのステップアップにつながればと思う。いつかは自分でワークショップを主催してみたい、という気持ちが強くなった。
私がDEARで活動したのは4週間という短い期間であったが、これからもDEARの活動に携わっていければと思う。DEARの事務所でいつも暖かく迎えてくれたスタッフの方、一緒に研究集会を作り上げたボランティアのみなさん達へ、感謝の気持ちでいっぱいである。