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2008年度春学期

 清綱 春香

 私はNPO法人LIFE地球の友と歩む会(以下LIFE)のインターン生としてインドネシア事業のプロジェクト終了時評価に同行した。LIFEは、インドネシアのタンジュンカラン村で農民の自立支援事業を5年間実施してきた。このプロジェクトが、今年度2008年6月に終わるため、その終了時評価として現地調査を行った。村人の生活がどの程度、どのように変化したのか、指標は達成できたのか、LIFEの事業の効果測定と、今後の関わり方の検討、そして類似の事業を今後実施する際の教訓を見出すための評価である。

【LIFEの概要】
LIFE:Live with friends on the Earth
活動地域はインドネシア、インド、日本の3カ国。海外活動としては、水と緑と人に焦点をあてたプロジェクトに取り組んでいる。人々の生活状況が改善され向上することを目的に、井戸建設・植林活動・職業訓練校等へ支援を行う。2002年度からは、特に「人」の育成に重点を置き、現地で人々が抱える問題に対して、自ら取り組んで対処できるよう、能力向上トレーニングや地域住民・グループ間での連携強化を目的としたプロジェクトに取り組んでいる。(引用:NPO法人地球の友と歩む会HP)

【プロジェクト概要】
事業名:有機農業における農民の自立支援事業
事業地:インドネシア西ジャワ州タクシマラヤ県チンガロンタン郡タンジュンカラン村4集落
事業期間:2003年7月〜2008年6月(5年間)

【プロジェクト活動】
スタッフは、現地人であるプログラムオフィサーと農業指導者の2名を村に駐在、事務所に現地人スタッフ1名、日本人駐在員1名を配属し、LIFE東京事務所とコンタクトをとりつつ、LIFEはタンジュンカラン村に直接支援を行った。
活動は主に以下の5つ。
@ 農民組織の強化
A 経済共同組合の設立・運営
B 給水事業
C 緑化事業
D 女性グループ支援
それぞれに目標と指標があり、これらの活動を通して農村全体を活性化させ、農民の自立を支援するプロジェクトであった。

●実施内容
【評価の準備】
評価
・資料作成(PDM・質問票・資料データリスト)とそのファイリング
・現地スタッフとの連絡
・滞在先の確保
・農民の組織リーダー、村長への連絡

自分
・航空券の手配
・保険加入
・空港に着いてからのルート確認
・ハンドブックを入手する
・現地の物価、文化、地理などを知る
・パスポート、保険証をコピー
・滞在先の確保
・パッキング
・ホームステイ先へのお土産購入

持ち物
・質問票
・PDM
・資料データリスト
・PC
・PCアダプタ
・カメラ
・ボード
・ペン
・模造紙

事業地の村でホームステイしながら、対象地である3集落を調査した。集落間の距離はバイクで約30分。直径20cmを超える石ころだらけの道を2人乗りして走る。

【調査手法】
手法は、@houseインタビュー、A各組織リーダーへの個別インタビュー、Bフォーカスグループディスカッション(FGD)の3つを行なった。質問のニュアンスによっては回答を誘導となったり、評価者によって違う解釈ができるため、とても慎重に行なわなくてはならない。
スタッフ1人が通訳、1人が聞き取り、私は聞き取りと写真係りだった。

@houseインタビュー
訪問家庭を無作為抽出し、この5年間の変化など家庭事情についてインタビューをした。昼間だったので、ほとんど男は仕事へ行くため、家事をしている女性たちが対象であった。
どこへ行っても皆お茶を出して快く迎えてくれた。これはLIFEが今まで村人と良い関係を築いてきたともいえるのではないか。

A各組織リーダーへ個別インタビュー
農民組織、経済協同組合の各リーダーに組織運営状況などをインタビューした。FGDは時間がかかるため、会合の頻度や出席状況など情報収集できる項目はリーダーから聞き取りする。

Bフォーカスグループディスカッション(FGD)
各組織のメンバーに集まってもらい、現状問題点やその解決方法などをブレストしてもらう。同じ集落内でも女性グループの出席率が高く、男性中心の農民組織は出席率が低かった。しかし、女性グループは16:00からリーダーの家で、農民組織は19:00から会合施設で行なったという違いも出欠状況に影響しただろう。FGDを行なう場合は、住民の参加しやすい時間帯や場所を選ぶ必要がある。

【達成度】 外で得た知識
実際に現地調査できたことは、非常に貴重な体験だった。「評価の経験を積む」という目標は、事前の資料作成、現地調査、報告会のプレゼンをしたことからある程度達成できたといえる。達成度としては5割だと感じる。その要因としては時間と勉強が足りなかった。事前準備はもっと早く始められた。そのため2週間前程から仕事が増え、毎晩遅くまで作業をすることになった。
痛感したのは言語力である。特に会議で発言する英語力をつけなくては全てが受身で終わってしまう。さらに現地語での会話が多く、子どもと会話くらいはできても、インタビュー内容は全く分からなかった。遊びで行く分には言葉以外の意思疎通でもコミュニケーションはできる。しかし、仕事をする上では言語の壁は仕事の非効率のみでなく人間関係の溝をもつくり出す。私の課題として言語が第一に残った。
実際私が見たのはプロジェクトのほんの1部であり、紙面では確認しているが、実際に全家庭を見たわけでも、当初からプロジェクトを見ていたわけでもない。それでもプロジェクトの1部から全体を見て評価しなくてはならない。事前準備や調査方法については経験を積むことができたが、評価へ落とすまではまだ納得いく形になっていない。これは今後引き続きレポート作成と関係者間で話し合いをしていきたいと思う。

【感想】
このインターン実習を通して農村開発プロジェクトに半年間携わってきた。しかし、農村開発自体の必要性に、疑問は常に感じていた。「外部からの支援によってそこで暮らす人々の生活が壊れるのではないか。受益者が本当に支援を必要としているのか」という疑問である。農村地域の人々は、経済力が低いかもしれないが、その地域に適した彼らの生活がある。それを素敵だと思うからこそ、その生活を壊したくないと感じる。地域社会の希薄化によって自殺やいじめなどの問題が増加する日本を見て、経済力があっても必ずしも人の幸福には結びつかないと私は考える。多忙な日々の中、私たちが失いかけている人との繋がりやコミュニティがそこにはあり、それこそが人間が生きる上で非常に大切なことだと私は思う。農村開発を学びたいという動機は、素直に彼らと彼らの生活が好きだ、という想いがあるからだ。

インターンを通して、農村開発支援が必要であるか否かは、いかに綿密にプロジェクトをマネジメントするかによって左右されると考えた。プロジェクトとは、計画、実施、評価の一連のサイクルで行われ、目的やその達成度を測る指標を定め、論理的に活動内容や投入が目的に反映することを説明できなくてはならない。開発プロジェクトはそこに暮らす人々の人生そのものがかかっている。だから生半可な気持ちでは取り組めない。且つ一方的ではなく、住民が主役として参加できるプロジェクトを実施していかなくてはならない。
参加型開発とは、住民が一緒にプロジェクトの調査や評価に参加することで、自分らを取り巻く現状問題を理解し、その解決方法を見出す。トップダウンに比べて時間はかかるが、住民をうまくエンパワーメントすることで、持続可能な自立支援を促すことができる。そして支援はいずれ引き上げなくては、住民は支援に頼り続け、自立性を損ねることになる。いつまでも継続する支援はあってはならない。しかし、事業終了後に評価をした上で、相互に話し合って今後の関わり方を決め、フォローアップしていくことが必要である。
このインターン実習で全てを理解できたとは思えない。まだまだ勉強不足で役に立たないと痛感した。だからこそこの経験を活かし、ゼミ論文で開発プロジェクトをテーマに学び続けていこうと思う。それが私にとって、彼らと向き合い、彼らと共に生きるということだ。