桜美林大学 国際協力専攻ホームページ



2008年度秋学期

 譜久原 鈴

私は、約一カ月の期間「多文化まちづくり工房」という大和市に位置する、NPO団体でインターンをさせていただきました。私は、主に日本語教室に参加し、実際に外国人と触れ合いながら日本語を教える活動をしました。
 
(多文化まちづくり工房について)
・組織の目的、経緯
多文化まちづくり工房は、横浜市泉区から大和市にかけて位置する、いちょう団地に住む外国人の生活を支援し、国籍を問わず地域の人々が共生していける地域づくりを目指しています。設立のきっかけとなったのは、1994年、中国帰国者が来日したときに開いた日本語教室です。この教室は大学生によって始められ、日本語教室を軸に外国人が抱える課題の解決や多文化共生していけるまちづくりを目指して様々な事業が拡大されました。そして、2000年、地域と生活に密着したまちづくりがしたいという思いを込めて「多文化まちづくり工房」が設立されました。
 
・組織図、構成員
代表者の早川さんによると、多文化まちづくり工房には組織図というものはなく、代表者の早川秀樹さんとボランティアで成り立っているということです。私が参加した日本語教室に来ていたボランティアの方達は、大学生から社会人、ご年配の方と幅広い年層でした。また、ボランティアといっても日本人だけでなく、日本語を流暢に話せる外国人の方も参加していました。私は、資格や経験など関係なく、自由に誰でもボランティアとして参加できる点がこの団体の良いところだと感じました。
 
・財政
財政に関しては、寄付金や賞金、県からの助成金、大学での講義による収入などにより成り立っています。賞金というのは、団体で行っている活動に対する賞金です。多文化まちづくり工房は、それに応募することで賞金を得てそれを予算の一部としています。
 
(いちょう団地について)
多文化まちづくり工房が位置するいちょう団地には、様々な文化背景を持つ外国人が多く住んでおり、歩いているとベトナム語や中国語が飛び交っているような地域です。見かける人々も外国人が多く、多文化まちづくり工房の真向かいに在る、いちょう小学校の生徒は過半数が外国に関わりのある生徒です。このように多文化が存在するいちょう団地ですが、彼らは日本での生活で様々な問題を抱えているのが現状です。そのため、多文化まちづくり工房では外国人の生活支援活動と共に子供の教育のサポートや居場所づくりを行っています。

(多文化まちづくり工房の事業内容
・日本語教室
日本語を学ぶ機会がない人のために水、土の週二回開かれています。
・小・中学生の補習教室
・生活相談
通訳を通して月・水・金の週三回、生活相談を受けています。
・子育てサロン、多文化サッカー
子育てで悩んでいるお母さんや青年たちの居場所づくりをしています。
・協同でのまちづくり
自治会や学校などと協力して祭りや交流会を開くことで異文化理解、地域での多文化交流の場を設けています。
 
(国際協力と関わりのある事業)
これらの事業の中で国際協力に関わりがあると私が思うのは、自治体や学校などと共に地域の多文化共生を目指して多文化交流の機会を設ける事業です。前述したものに加えて、具体的には、異文化理解の講座や二日間に渡って行ういちょう団地まつり、多文化共生交流会などが行われます。多文化共生交流会では、様々な国々の民族衣装を紹介したり、外国人による防災デモが行われます。これらの活動は多文化まちづくり工房だけでなく、自治会、学校、住民の方達、団体、行政機関など多くの人々の協力があって行われています。
私たちの普段の生活を見直してみると、外国人を見掛けるのは時々ありますが、触れ合う機会はあまりないように感じられます。そう考えると、このようないちょう団地で行われる多文化交流は地域レベルであっても、国籍を問わずに人々が同じ空間を過ごすということで国際的なレベルではないのだろうかと考えます。そして、それが多文化共生の一助にもなり、国際協力につながると思います。

(当該事業における課題)
私が早川さんに伺ったところ、早川さんは、様々な活動を行っていく上で課題というのは生じるのが当たり前であり、多くの問題を持っていることと、それらに対してあまり「課題」という意識を持っていないとおっしゃっていました。しかし、特にネックとなるのは、「人」が足りないということです。「人」とは、ここではボランティアのことを指します。これは、私も日本語教室に参加することで実感しました。特に、水曜日はボランティアが少なく学習者数に比べて五分の一程のボランティアしかいませんでした。その時は、代表者の早川さんであっても手が負えない状況でした。その時、私は日本語を学びたいという思いがある学習者のことを考えると、悲しくなり、ボランティアの重要性を強く実感しました。

(課題への対応)
早川さんは、ボランティアの問題に関しては、これからもボランティアの募集を続けていき、活動をしていく上で多くの問題が生じても解決できそうなことからコツコツと努力をすることで解決を目指していくとおっしゃっていました。そのため、私はこれからも日本語教室にボランティアとして参加し、力になりたいと思っています。

(活動内容)
私は、毎週二回、19時〜20時40分まで行われる日本語教室で活動しました。この教室は外国人が約30人から40人、ボランティアが約15人でその日によってボランティアが全然足りない日もありました。少ない時にはボランティア一人で2,3人の生徒を、多い時には5人の生徒を担当する日もありました。参加者は、国籍によって色の異なる名札をつけ、主にベトナム、中国、カンボジアの人々が参加していました。私は、主に中国人とベトナム人を担当しました。教え方は、誰の指示もなくボランティアそれぞれのスタイルで教えることができ、私は教えることに慣れていなかったため最初は戸惑いました。しかし、自由でにぎやかな環境で、生徒が勉強に疲れたときにはおしゃべりをして楽しみ、とても教えやすい環境でした。

(研究内容)
私がこのインターンで特に興味を持って調べたことは、いちょう団地に住む外国人の国籍や来日の理由、日本での生活で抱えている問題についてです。先ず、国籍は多い順からベトナム、中国、カンボジアでした。来日した理由については、昔、難民としてやってきた家族の呼び寄せで来日した人々が多いということを知りました。昔のいちょう団地には難民センターができるほど難民が多くやって来たことから現在のような現象が起きているようです。
そして、日本での生活での問題の中で、私が最も関心を持ったのが子供の教育の問題です。これは、日本生まれの子の方が途中から日本に来た子より日本語能力が低いというのが一つです。日本生まれだからといって日本語が完ぺきだと思われがちですが、そのためにきちんとしたサポートがされず、重視されない状況になってしまうのです。また、日本生まれの子は根っことなる言語能力がないために日本語も母国語も身につかなくなってしまう子が実際に存在するようです。そのような子は、表面的な日本語は話せても読解力がないため、中学に入ってからの勉強が大変だということを知りました。実際に、私が知り合ったカンボジアの女の子は日本語を流暢に話していて生活する上で全く支障がないように思いました。しかし、生活に必要な日本語は話せても高校受験に必要な日本語能力には欠けて苦労していることも知り、小学校からきちんとした日本語能力の基礎教育をするべきだと感じました。小学校では日本語で考える能力を身につけ、それを中学校で応用につなげ、日本人と同様に教育をする必要があると私は考えます。
また、深刻な問題なのが母国語を話す親と日本語を話す子供との間で起こるコミュニケーションの問題です。これは、親子のコミュニケーションの手段である言語が異なることで会話ができなくなり、親子の間に壁を作ってしまう問題です。この問題は以前から知っていましたが、実際にいちょう団地にもそのような人々がいるということを知り衝撃を受けました。これは、人によって状況が様々で解決しようにもすぐに解決できることではないため、とても困難な問題です。しかし、私はこの問題を解決するためには先ず母国語の能力をきちんと身につけることが大事なのではないかと考えます。ある程度の母国語能力を身につけ、それから日本語能力を身につける方が日本語を学ぶ上でも、母国語に置き換えて考えることもできるからです。実際に、日本生まれの子よりも途中から来日した外国人の子の方が日本語能力が高いということをインターン期間中に知りました。したがって、先ずは母国語の教育をすることがこれらの問題の解決策になると考えられます。

(感想)
このインターンを終え、直に外国人と関わることで彼らが抱える問題の困難さを再認識しました。中でも、日本語教室に来る外国人の中には失業者も含まれているということも知り衝撃を受けました。日本語教室に来る方達は皆楽しそうでそのようには全く見えなかったからです。子供の教育や失業、言葉の問題など、これから解決すべき問題が山積みだと感じました。
また、私は、そのような環境で過ごすことで、いちょう団地のように外国人と日本人が交流できるような場所を他地域にも作っていく必要があると考えるようになりました。私たち日本人の多くは、どうしても外国人に偏見をもってしまいがちだと思います。それは、直接彼らと関わる機会がないためにそう思ってしまい、外国人に対して敬遠したり違うイメージを持ったりするように考えられます。私はこのインターンで直接外国人と話しましたが、異なる国籍の人と触れ合うことは自分との違いを楽しめることだと感じました。そのような楽しさを他の日本人にも感じてもらえるように、このような多文化交流の場がさらに設けられることが多文化共生の実現になっていくと考えます。

(反省点、今後のインターンでの提言)
反省点は、日本語を教える際、難しく考えすぎて日本語が十分に教えられなかったことです。日本語は意外と教えるのがとても難しく、教えるのに戸惑ったりと生徒に不快を与えたと思います。そのため、より分かりやすく教えるにはどうしたらいいのか、と事前に考えておくべきだったと思います。この反省点を踏まえて、今後のインターンでは自分が関わる事業について詳しく調べることが最も大事だと考えます。情報を得ている方が自分の自信にもつながり、充実したインターンにすることができると感じました。