桜美林大学 国際協力専攻ホームページ



2007年度前期

 国際学部3年 野田奈々

〈概要〉
  人口と家族計画・母子保健・HIV感染予防を含む「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)〜とりわけ、女性や妊産婦の健康と権利を守るための活動」分野の国際協力を推進する日本のNGO

〈実習期間〉
5月9日から8月31日  学期中は毎週水曜日/夏休み中は週2日

〈実習内容〉
・ 資料の作成/修正、コピー、ファイリング
・ パネル作成
・ 東京都若者向けエイズ予防啓発拠点「ふぉーてぃー」の見学
・ 保健会館の見学

〈テーマ〉
1. 政府の示す「性教育」/ JOICFPの示す性教育(思春期保健)
2. アフガニスタン、ニカラグア、日本の思春期保健指導についての比較

1:政府の示す「性教育」といっても、文部科学省と厚生労働省とでは、見解が異なっている。文部科学省は、「学校における望ましい「性教育」とは、教科書の範囲に止まる指導であって、過激な教育は望ましくない」と言う。しかし、「過激な教育」がどのようなものかは述べていない。最も印象に残っている表現は、「性教育を通して、生徒にfemale /maleとしてのアイデンティティを育ませる」である。これは、トランスジェンダー、ゲイ、レズビアンといったセクシュアル・マイノリティの人々を無理やりfemale/maleの枠に押し込もうとする文部科学省の意図を如実に表したものだと私は感じた。一方、厚生労働省は、「性経験の若年化が進んでいるなか、そのような現状を受けとめながら、学生に情報提供する必要がある」と述べ、情報提供する場所の設置、AIDSやSTDに関する理解など具体的な対策を示していた。
  JOICFPは、若者の性をタブー視することが望まない妊娠、HIV,AIDS,STDをもたらす原因だと考える。JOICFPは、思春期の若者が性とリプロダクティブ・ヘルスに関する情報やサービスにアクセスできる環境を整え、彼らが十分な知識を身につけ、責任ある選択や行動をとることができるようにする必要があると考える。また、JOICFPのスタッフを含め、教師、保健師などの思春期保健教育に携わる人は、若者に対して上からものを言うのではなく、若者の悩みを共有してサポートすること、そして、同じ悩みをもつ若者同士が互いに支え合う「ピア」という姿勢をJOICFPは大切にしている。

2:アフガニスタンでは、タリバン政権の際、女性が教育を受けることや外出することは認められていなかった。2001年、タリバン政権は崩壊したが、長い年月をかけて培った風習はすぐにはなくならない。アフガニスタンは思春期保健教育の以前に、女性が教育を受けられる状態を作らなければならない。そのために、教師はまず女性が教育を受けることの大切さを両親に理解してもらう。女性が結婚後、夫とパートナーシップを築くためには、女性自身が少なくとも最低限の教育を受けることが必要だからである。両親の理解と信頼を得て、はじめて女性は教育を受けることができる。
  アフガニスタンの代表は女性の教師であったため、女性に対する思春期保健教育の話であった。授業では、IUD(子宮内避妊具)やペッサリーを紹介する。IUDとは、ポリエチレンなどでできた小さな器具を子宮内に入れることで、精子と卵子の受精や着床を防ぐことができる。ペッサリーとは、女性用のコンドームのことである。女生徒が両者の存在を知ることは、自身の健康のためにリプロダクティブ・ライツを得ることにつながる。
  ニカラグアのカリブ海沿いにあるプエルト・キャバザスは、最も貧しい地域である。そこでの若者の健康に関わる問題は、早期妊娠、STD、HIV/AIDS、売春である。2006年には14歳から19歳の間で母親になった17人の女性が亡くなっている。また、STD、HIV/AIDSである若者も少なくない。保健局の代表はこのような現状の1つの理由として、若者の家族計画に関する情報へのアクセス不足を挙げている。学校で教師は生徒の性に対する関心を芽生えさせないために保健の授業において詳細に触れようとしない。また、若者の中にはSTDは売春婦だけが持つものだと思っている人もいる。
保健局ではこういった若者たちに若者たちが集って、ダンスや歌を歌うなどレクリエーションで親交を深め、自分たちが巻き込まれうる問題に関して話し合う機会を提供している。また、そこでは早期妊娠、STD、HIV/AIDSを防ぐ1つの方法として、ペニスの模型を使用した正しいコンドームの着用の仕方を指導している。
私が受けてきた日本の思春期保健教育とアフガニスタン、ニカラグアのものとを比較して、アフガニスタン、ニカラグアの教育はそれぞれの国の若者がおかれている状況に対応したものであった。IUD、ペッサリーやペニスの模型を使用したコンドームの着用方法の紹介は、それぞれの国の若者に性に関する情報を提供し、環境を改善するための方法である。私の知る思春期保健教育では、男女別々の授業で、主に生理に関することを教師が話し、具体的内容に触れようとしなかった。検討する余地はあると思うが、男女が共に性について学ぶ時間を設ける、IUDやペッサリーを紹介することは、体の成長と共に、自己決定権を向上するための第一歩になりうる。また、セクシュアル・マイノリティの若者に対してサポートする環境を整えることも忘れてはならない。