桜美林大学 国際協力専攻ホームページ



2007年度前期

 国際学部3年 芳賀俊一

1.実習先団体概要
  あしたの会は、1997年に活動を開始したNGO団体であり、本部は、元桜美林大学英語講師をしていたアーミン・モーディ女史によって、1998年にインドのプネに設立された。教育を通して、インドの女性の自立を支援することを目的としており、教育(識字・職業訓練)、Saving Group(女性だけの自助グループである、小規模貯蓄組合)、自転車銀行、奨学金などのプロジェクトを、プネ周辺の村々の女性・子どもを対象に行っている。

2.実習内容
・実習期間:2007年8月2日〜8月22日
・実習内容
@ あしたの会の支援している村を訪問
2005年度インド国際協力プログラムのときに作ったトイレ完成セレモニーに出席、そしてあしたの会・桜美林の寄付で購入した自転車を少女たちにあたえるセレモニーに出席した。二つのセレモニーとも、私は直接関与していないので、代理のような形で出席した。
A ハリガンガという建設現場にある、Mobile Crecheのセンターの訪問、調査
Mobile Crecheという、建設労働者の子どもたちをケアしているNGOのセンターの1つを訪問し、そこにいる先生、子どもたち、彼らの両親、そして彼らの健康診断を定期的に行っている医者に話を聞いたり、インタビューをしたりといったことを行った。
B Mobile Crecheの事務所を訪問
プネ市内にある、Mobile Crecheの事務所で、Hirematさんという代表者の方に、改めてMobile Crecheについての説明を受けた。さらにMobile Crecheに関する質問をいくつか行った。
C Aalochana、ARC訪問
Mobile Crecheが支援している建設労働者たちのようなインド国内を不定期に移動しながら生活している、移住労働者たちの資料を探すため、AalochanaとARCを訪ねた。Aalochanaは、女性と子どもについての資料を多く所有している、図書館のような施設であり、ARCは、子どもの権利のために働いているNGOで、いくつか資料を所有していた。しかし、私が探していた資料は、残念ながら見つけることは出来なかった。
D ISCの事務所、センター、レンガ造りの現場訪問
プネ市内にある、ISC(India Sponsorship Committee)の事務所に行った。ISCは、レンガ運びの子どもたちと女性差別について取り組んでいるNGOである。両親がレンガ造り、レンガ運びをしている子どもたちが、勉強を行っているセンター(塾のようなもの)にも行った。それは、レンガ造りの現場のなかにあり、その現場のオーナーや、親にも話を聞くことができた。

・調査テーマについてのまとめ
調査テーマ:「インドの建設労働者の子どもたちが抱える問題、その解決策について」
  私がこの調査テーマに決めた理由は、インドという国が世界でもっとも児童労働が多い国であり、その状況はかなりひどいものであるということ、そしてその中でも、建設労働者たちのような移民労働者はさらに過酷な状況下で働かされているということを知り、その子どもたちの抱えている問題はどのようなものなのかということを調べてみたいと思ったからである。
  私は、このテーマについての調査を、主にハリガンガという建設現場のなかにあるMobile Crecheのセンターで行った。ここでは、センター内で子どもの世話をしている先生、子どもたち、彼らの親たち、そして彼らの健康診断をしている医者に話を聞いたり、質問をしたりといったことを行った。さらに、Mobile Crecheの事務所での説明、ARCでの資料検索、ISCの事務所での説明、さらにはISCの支援するレンガ造り現場の訪問もかなり参考になった。
  これらの調査によって、子どもたちの抱える問題がいくつか浮かび上がってきた。まずは、貧困という問題だ。建設労働者たちは、お金がない、畑がないからなどの理由からこの現場にやってきている。しかし、収入は、そこまで多くはなく、決してきれいとはいえない家で生活をしている。2つ目は、言語の問題である。建設労働者たちは、移住労働者であるため、その州の中や、時として、州から州へ不定期に移動している。インドでは、州によって、あるいは州の中でさえ、話している言語が異なる。そのために、センターにいる子どもたち同士ですら、意思の疎通が図れないのである。3つ目は、児童労働である。しかし、この問題はNGOが関わっている現場では起こっていないようだ。つまり、NGOが見ていないところで行われているため、隠れされているともいえる。4つ目の問題は、教育の問題である。この問題は、貧困、つまりお金が無いからという問題と大きく絡んでくる。親たちは、お金がないから、子どもに教育を受けさせない。そして、子どもたちが大人になったとき、教育を受けてないから、いい仕事に就けず、貧困から抜け出せない、というサイクルを永遠に繰り返してしまうのである。しかし、教育を受けられない理由は、貧困だけではない。主に女の子の場合、幼い弟、妹の世話をしなければいけないので学校にいくことができないのである。実際、Mobile Crecheのセンターでも、先生たちだけでなく、女の子たちが小さい子の世話をしていた。さらには、親が学校に行かせないという理由も存在している。つまり、子どもが教育を受けることができない原因は、彼らの親である。親たちが教育の重要性を理解してないために、子どもたちは教育を受けることができないのだ。5つ目の問題は健康の問題だ。彼らの家は、建設現場のすぐ近くにあり、決して衛生状態がよいとは言えないし、さらに、彼らのセンターは、建設中のビルの中にあるため、非常に不衛生である。もちろん、水も良くない。そのため、母乳で育っている赤ちゃんを除き、ほかの子どもたちは、いつも熱やせきが出ている状態である。それに加え、栄養も足りていないのが現状である。
  以上が、子どもたちの抱える、主な問題である。しかし、その中でも、大きな問題となっているのが、教育と健康の問題である。私は、それらについての解決策を考えてみた。まず教育の問題についていえば、まず、センターの先生の質の向上、先生の数を増やすことである。それに加えて、子どもたちがどのような教育を受けたかをファイルやノートにまとめておくということが必要だ。この方法は、実際にISCで行われているもので、子どもたちが移動や移住する際に、ISCの先生たちが子供たち一人一人に彼ら・彼女らが何を学んできたのかを書いたカードを渡す。それを子どもたちが移動・移住した先の先生、たとえば村の先生に渡す。これによって、村の先生たちは、彼ら・彼女らがどのような教育をISCで受けてきたか、そしてどのような教育をこれから与えればいいのかがわかる、といったものである。そして、忘れてはならないのが、親に教育の重要性を教えることである。これがなくては、いくら教育施設や設備がよくても意味がないからである。次に、健康の問題についてだが、これは、まず衛生状態を改善する必要がある。先生や医者以外に、家やセンターの衛生面をチェックする人材が必要である。現状のままでは、変化はなく、医者が薬を与えても、一向に治りはしないだろう。もちろん、栄養も十分に与えられるようにしなくてはならない。
  これまで、建設労働者の子どもたちの問題とその解決策について述べてきた。最後に私の感想を述べたい。子どもたちの抱える問題は、改めてすぐに解決できるようなものではない。Mobile Crecheは、このような問題に長い間取り組んでいるのだということがわかった。これから、Mobile Crecheは、どのようにこの問題を解決していくのだろうか。もし、次に機会があれば、より詳しく彼らの活動を見てみたいと思う。

3.コメント
  調査をするにあたって、調査開始時から大きな調査計画の変更が生じた。私は、調査開始当初は、事務所でMobile Crecheの活動を詳しく探るつもりであったが、向こうの都合により、先にハリガンガにあるセンターにいくことになった。そして、あしたの会の手伝いをするというのも、村のセレモニーに出席するぐらいで終わってしまったし、予定というものが、私が考えたものとはまるでちがうインターンシップになってしまった。しかし、いろんなNGOを訪問することができたし、結局のところ、私がほぼ満足できる調査ができた。今回の経験は、決して無駄ではないと感じることとの出来た3週間であった。