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2003年度 秋学期

菅間ゆりえ(2年)

今回タイ、ビルマの国境にあるSVAのメーソット事務所において、3週間インターンとして働き、ウンピアム・メラウ・メラ・ヌポの4つの難民キャンプを訪問し図書館事業を視察した。

その経験は、これまで私が抱いていた難民キャンプ像をくつがえさせられる結果となった。私の難民キャンプに対するイメージは、高い柵で全体が覆われており警備が厳しく、生活は困難で、難民の表情も固く非常に悪い状況を抱いていた。しかし、4つのキャンプを訪問した結果、ビルマの村の暮らしと変わらない生活をしていることが分かった。キャンプを覆っている柵は低く外から入る際の警備もそれほど厳しくない。カレン族の伝統的な家が無数に立ち並び、学校、病院、図書館などの公共施設も揃っている。また、外に出られなくても暮らしていけるくらい、商店が立ち並び十分に物が買える。多くのNGOの支援も行われており、どのキャンプの難民もキャンプの暮らしに満足し安定した生活をしているように見受けられた。

しかし、キャンプを何度も訪問しているうちに、難民の表情やキャンプの雰囲気が少しずつ違うことに気づき始めた。これは、キャンプの設置年数に関係があると思われる。古いキャンプほど生活基盤が成り立っており、キャンプの雰囲気もアットホームで、難民に余裕が見られ表情も穏やかである。一方で新しいキャンプは生活の基盤を作るのに必死で、難民の表情も硬い。わたしは訪問しただけではこのような外側の部分しか見えないと思い、難民自身の考えからキャンプの内側とそれぞれが抱えている思いを確かめるため難民にアンケート調査をおこなった。

多くの大人は、軍事政権による強制労働や強制移住のため、生活することが困難になりキャンプに来たものばかりで、ビルマで受けた心の傷を今も抱え生活している。キャンプでの生活は安全で支援も十分なため、満足している様子である。特に子供たちは、高い教育受けられることと図書館によって多くの知識と楽しい時間を過ごせることに喜びを感じている。その一方で、大人たちはキャンプのルールやタイ政府の監視によって自由がないことに不満を抱き、将来の見えないキャンプの生活に不安を感じている。このように、キャンプの生活に満足している一方でほとんどの者は、ビルマが民主主義になり安全になったら帰還することを望んでいる。大人はキャンプで難民として生きていくのではなく、自分の村でカレン族として生きていくことを望んでいる。カレン族を誇りに思い、愛国心が強い。しかし、キャンプで生まれ育った子供たちは帰還を望むものが少なく、世代によるアイデンティティの違いが見受けられた。

このようにさまざまな思いを抱えている難民に、SVAの図書館事業は何か影響を与え、将来のために役立っているのか、アンケートと図書館員にインタビューをして調査した。ビルマには図書館がなく、お金がないため本を読めなかった人々にとって図書館事業はかなり大きな影響を与えていることがわかった。難民のほとんどの者が図書館を利用し、大人、子供とも多くの知識を理解し、読解力、会話力、理解力、集中力の向上、勉強への意欲の増大、能力の向上(言葉を覚える)、生活習慣(身なり、礼儀、あいさつ)の向上などに変化があった。また、ビルマでの生活で大きな傷を抱えていた者も心を開くようになるなど精神的な面においても変化が見られる。これらの変化は本だけではなく、数々のワークショップや図書館員の活動の仕方などによって得られたと思われる。本は良い見本となり難民の生活を改善させ、図書館は憩いの場所として重要な存在となっている。またこれから必要としているニーズは、大人と子供によって少し違いが見られる。大人は帰還を望んでいるからか、カレン語の本を多く求め、子供はカレン語と限定はせず教育の本を欲しがっている。これからも多くの本の種類を増やし、図書館運営を続けていくことがキャンプで過ごしている難民たちの将来に繋がっていくだろうと思う。

わたしは3週間という短い期間だったため、キャンプに行くだけで精一杯で調査にやり残しが感じられた。キャンプは一日がかり、遠い所では二日かかるし、一つのキャンプではなく多くのキャンプを訪れることによって見えてくるものがある。今度行くインターンの方には、長い期間行くことをおすすめする。また、スタッフの方はほとんど英語ができる方たちなので、英語がある程度できれば問題はないと思うが、日によってはタイ語のみのスタッフとキャンプに行くことがあるのでタイ語の勉強も必要であるだろう。