桜美林大学 国際協力専攻ホームページ



2003年度 秋学期

岩元美穂(3年)

1,今回の研修テーマについて

 今回、研修中に私が研究したいと思っていたことはSVAが図書館活動や学校建設事業を通して伝える「子どもたちが実際に受け取る情報」についてでした。SVAが行なう図書館活動の中で彼らが子どもたちに提供する絵本や、学校建設事業の中で行なう教員研修から教員が何を学び、その学んだものをどのように解釈し子どもたちへ届けるのか、子どもたちはどのような影響を受けるのかということを知りたかったで、このようなテーマにしました。国を改革、発展させていくうえで「教育」はすべての基本をなるものだと私は思っています。だから国際機関やNGOが、ある国の「教育」の分野への支援活動をおこなっていくことは、重大な責任を負っていると感じています。そのように感じている今、SVAが行なっている活動で、子どもたちが与えられた「情報」から受ける影響に注目し、その「情報」について調べようと思いました。具体的には、子どもたちに、読まれる本(絵本を届ける運動の絵本や紙芝居作成の時の作品など)は、どのように選定されるのか、その基準はあるのだろうか、またどのような内容のものが多いのかということ、子どもたちに伝えたいことは何かということを調べようと思いました。そして、それらを知るとともに、NGO組織であるSVAは、ラオスという国でどのような姿勢で支援する地域へ入り、その意義を伝え、そしてそれを現地の人々の間に根づかせようとしているのかということを学びたいと思っていました。

2,実際の研修で

 3月1日から26日間の研修期間でしたが、たくさんのことを知ることができたと思っています。研修前に学習し、SVAの活動イメージをつかんで参加したつもりでしたが、色々なところでそのイメージがどんどん変っていきました。研修中は図書館事業、学校建設事業での活動を多くみてきました。

図書館事業

SVA隣接の図書館運営のほかに、移動図書館やユースボランティア育成、幼稚園教員のための研修などを行なっていることを知りました。スタッフの中には、日本の幼稚園で幼児教育の研修を受けた経験のある方もいて、図書館のところどころに、日本で学んできたのだろうと思われる飾り付けがされていました。そんな彼らは、今までラオスにはなかったような方法をどんどんラオスに紹介し、そしてそれが多くの人に受け入れられているようで、とても大きな影響力があることを知りました。

幼児教育への注目はSVAだけであり、最近では刺激を受けたラオス教育省がそのような注目をし始め、5年くらい前から幼児教育のセクションが設置されたということでした。現在、SVAスタッフが協力して、教育省ではラオスの現状をきちんと考慮した幼稚園教員向けの本を作成しているそうです。少しでも日本で学んだ幼児教育法が生かされているのだろうと思います。

移動図書館は、今まで国立図書館と協力して行なっていましたが、これからはSVA独自の移動図書館を目指して、政府の提案する読書推進運動の一環として、社会全体の本への理解を高めるという目的で市内を回りたいということをスタッフの方は言っていました。またユースボランティア育成活動では、主に大学生・高校生をリーダーに立て、小学校くらいの子どもたちを参加対象にしたキャンプや地方の村でのホームステイを企画し、交流を図るともに、リーダー養成も兼ねていました。このイベントで、子どもたちは他県と首都との地域格差や自分以外の人間の存在を学ぶことができます。私はSVA事務所でユースボランティアの学生に何度か話をしましたが、確かに、学生たちを見るととても生き生きしていて、彼ら自身もその活動を楽しんでいる様子が感じられました。リーダー自身も首都出身ではない学生もいたりして、彼ら自身も小学生と同様、この活動が学びの場になっていることがよくわかりました。

事務所隣接の図書館では、平日の図書貸し出し活動の他に、土曜日には、小さな子どもたち向けに一時間ほどの小さな会を開き、ギターを使って歌を歌ったり、ゲームをしたり、そして紙芝居や絵本を使っておはなしをしています。この会で使われる本や絵本は日本から送られてくる日本の絵本や世界の絵本ばかりですが、子どもたちは本当に一生懸命聞いていました。おはなしをするスタッフも絵本の内容を把握し、たくさんの表情を使って演じます。彼らはおはなしのテンポというものをよく分かっているようで、時に早く、時にゆっくり話します。時々子どもたちに、質問をしたりしていました。ここで使われる紙芝居は日本語のものばかりでしたが、会の日までにスタッフはその日本語を日本人スタッフに訳してもらい、彼らの言葉で物語をおはなしにします。私も一度、紙芝居の内容を英語とラオス語を使ってスタッフに訳しましたが、スタッフ自身も絵のみから得られる内容と、実際訳してもらってから分かる内容の差を楽しんでいました。

実際に図書館においてある本は80%〜90%が日本語やタイ語の外国語の本で、ラオス語の本は本当に少なかったです。子ども向けの本は7000冊ほどあり、ほとんどが絵本で、必ずラオス語の訳が貼られています。これは、子どものときに、きちんとラオス語に触れて欲しいというスタッフの思いがあるからで、スタッフは本の訳からそれを本に貼るという作業をすべて手で行なっています。しかし、図鑑など写真の多く入っている本は、日本語のままで置いてありました。子どもたちの中には、日本語で書いてある解説の内容をラオス人スタッフに尋ねるなど熱心な子どももいて、困ってしまうことがあると言っていました。大人向けの本は5000冊ほどありますが、こちらの方は訳貼りはされておらず、ほとんどがタイ語の本でした。ラオスでは、タイのテレビ番組がいつでも見ることができ、文法もさほど変らないので、ほとんどのラオス人はタイ語を読むことはできます。それなので、大人向けの図書館では、日本の本よりも、タイの本がほとんどでした。カテゴリー分けされており、科学・歴史・哲学・宗教・社会科学・文学と分かれていて、利用者もお坊さんから公務員まで様々でした。図書館スタッフは、とにかく本を読む機会を与えて好きになってほしいということを言っていました。

研修前はSVAの活動のほとんどが日本人スタッフのもとで、運営されていると思っていましたが、図書館セクションでは、ラオス人スタッフがコーディネーターも務めていて、活動のすべてがラオス人スタッフによって行なわれていることを知りました。研修期間中のスタッフへのインタビューやその他の時間での彼らの仕事ぶりを見ながら、各スタッフがそれぞれの特徴を生かして、役割を果たしているのだと感じました。

学校事業

今回の研修では何度か出張に同行させていただいたり、SVAが支援する村でのホームステイをアレンジしていただきました。ホームステイでは、二泊三日のステイ期間の中で、子どもたちと一緒に学校に登校し、授業を見学したり、先生の方に連れられて幼稚園の見学をしたり、村人たちが生きている社会を実際に見ることができたと思います。そのような体験の中では、私が住む日本の社会とは、大きくかけ離れた社会システムを感じました。村の中は、本当に小さく狭い共同社会であるとことを強く感じました。日本の社会では、最近よく、隣の住人の顔すらわからないということをよく耳にしますが、少なくとも私の滞在したポンシー村では、隣近所はもちろんのこと、村の中の人たちみんなが親戚のようでした。外を歩けば必ず声がかかり、家の中にいれば近所の住民がたくさんやって来ます。学校の教員も隣に住んでいるお兄さんでした。そのような社会の中で日本で考えるような教師と生徒の関係や、教員同士の関係、築き上げていくことはなかなか難しいのではないかと思いました。また、教員研修に参加することで、教員や村人の教育に対する姿勢というものも目の当たりにしました。教員研修では、SVAの支援するスクールクラスター内の校長や先生が集まり、クラスター制度のしくみやそれぞれの役割、また、そのクラスター発展のためには何を改善すべきかということを話し合い、指摘し合い、確認、理解していました。この時も、私がイメージしていた教員研修とは違いがありました。SVAが支援する教員研修は、内容をSVAが決定したり、研修自体もSVAが進めていくのだと思っていましたが、実際は主体は村人であると強く感じました。教育局からきたトレーナーによって、スクールクラスターガイドラインにある内容に沿って進められていました。SVAとしては、現在は支援しているがいずれはその支援がなくなり、村と郡教育局の手ですべてのことが成り立つようになってほしいという気持ちがありますが、支援される側の方では、まだそのような意識は明確には持っていないような気がしました。研修中に、同じ郡内にある他のクラスターで、制度化が成功しているという小学校を見学に行きましたが、そこでは、先生たちも本当に生き生きしていて、クラスターを理解している様子を見ることができました。そのクラスターでは、教材作りや学校運営のための資金集めなどについて、当事者である先生方が熱心に考えている様子が伺えました。クラスター長が支援されている現在と支援が終了した将来のことまで考えていると言っていたのがとても印象的でした。しかし、その様子を見て、SVA支援のクラスターの成長の希望が見えた気がしました。研修に参加した教員たちも、見学によってイメージを膨らますことができたのではないかと思いました。教員研修を見学して、教員や村人たちの話し合いを聞いていて思ったことは、支援する側と支援される側との間には少しイメージや考え方の差がまだまだ存在するのだということです。支援される側では、どこまでをNGOが支援してくれるのかということがまだ理解されていないような気がしました。しかし、SVAの方では、あくまでも活動の主体はラオスの人々であるとし、それを急いで変えようとするわけではなく、まずは彼らに考えてもらおう、それから気づくことが大切だという姿勢が見られました。それにはとても共感することができました。

3,テーマは達成されたか

 自分の研究テーマである「子どもたちが実際に受け取る情報」に関しては、それを突き詰めるほどの研究計画を立てられなかったので、情報自体の収集は多く出来ず、考察までに至ることができませんでしたが、スタッフのみなさんからたくさんお話をお聞きすることでSVAが子どもたちへ、どういう目的を持って情報を伝えているのかということを、学ぶことができたのではないかと思っています。

 子どもたちは、たくさんの情報を得ることで、自分が生きていく社会の中で自分を守るにはどうしたら良いのかを考えていく力を身に付けていけると思います。世界にたくさんの人間が住んでいることを本から学ぶことで、将来周りの国々と付き合っていく際に、自国を思い、臆せず意見し解決していく力はこの国だけではなく、国を育てていくうえで、本当に重要な役割を担っていると思います。SVAの活動は、絵本をラオスへ届け、ラオスの子どもたちに本を読むチャンスを与えることで、その力を養ってもらうという目的を持って行なわれていました。研修に参加する前は、ただどのような知識をラオスの子どもたちに伝えたいのか、ということばかりを考えていましたが、与える情報・知識を重視しているというわけではなく、そのさらにうえを行く目的の存在を知りました。このことは、今回の研修に参加することで、現地のオフィスのスタッフにたくさんインタビューをしたりお話をしたりする中で、スタッフの考え・思いを知ることができたと思います。日本で資料を読み、イメージするだけでは決して得ることのできなかったことなので良かったと思います。

4,今後どのように今回の研修を生かしていくか

 今回はSVAという一つのNGOについて、多くのことを学ぶことができました。その活動の中ではUNISEFや世界銀行など、その他の国際協力機関について新たな興味の対象を発見することができました。研修中にUNICEFの主催するNGOドナーミーティングに見学させていただいたことはSVAだけを見てきたそのときの私にとってあまりにも衝撃が大きく、ラオスという一つの国の中に存在する問題の深さを間の当たりにしてしまったと感じました。そしてさらに、その問題に対して、多くの外国機関がこの国に来ているということ、今まではあまり国際協力について、そしてそれに関わる機関や組織について、突き詰めて学ぶということをしてこなかったので、今回の研修に参加することで自分の知識の無さを痛感しました。今後、大学での卒業論文を書くにあたり、まずは国際機関の活動・国との関係を詳しく学ぶところから始めようと思います。そして、研究の最終的な段階としては国際機関・組織とそれに関わる国の関係について自分なりに、考えをまとめていきたいです。今回学んだことをきっかけとして、またその内容を充分に生かせるように、研究を進めていきたいと思います。